第十四話 行き当たりばったり
翌日、破損の仕方が良かったのか1日でショウの盾も直り、もちろん俺の腕も治っているので迷宮の先へと進む事に。予備の盾もあるらしいが、やっぱり普段使いの方が1番だしな。
「あれ、最初のタイプに戻ったね」
「結局これが進むの速そうだよなあ」
「コウさん、罠のこと忘れてますよ……」
「そうだった……!」
そうだ、そういやこれの場合罠があるんだった。草原と洞窟のせいで忘れてた。多少進める時間が短くなると思っていたがそうもいかないか。
「で、どうする?そろそろちゃんとした罠があると思うんだが」
「まあ別に良いんじゃない?罠の配置は固定みたいだから……覚えれば」
「んじゃ良いか、頑なに罠対策無しになってるけど。そろそろマップの詳細とか欲しいなあ、少し進むの遅らせるか?」
「それだと歩くだけになりません?」
そうか、そうだな。ボスを除けば大体の苦難が省略されるわけで歩くだけの苦行になるな。攻略情報は程々にしておかないと酷い事になるからな、やる気が。確かに気をつけないといけないか。罠対策は……うん、もう気にしない様にしよう。
「まあ気をつけて進もうか」
「敵は同じか?」
「うん、機械系。けど今回は飛び道具らしいよ、もちろん銃もね」
「遂にですか……私達遠距離攻撃手段が無いですけど……?」
「まあそこは何とか、ほら早速来たよ」
お試しと言わんばかりに、俺たちの前にモンスターが現れる。アームに丸い筒が付いているので一目瞭然でどう攻撃してくるのが分かる……形的にガトリングっぽいんだが大丈夫なのかこれ。
「ほら2人とも僕の後ろに」
ショウがそう言うのでコトネさんと後ろに隠れると同時にこちらへと攻撃が始まった。
「おい、大丈夫なのか?」
「うん、ほらHP減ってないでしょ?いくら銃装備でも通常モンスターでしかも盾で受ければね」
「仮に1減っても十分余裕はあるか」
相手の攻撃が何とかなったのはありがたいが、こちらはどう動けば良いのやら。
「それでここからどうするんですか?」
「うん、どうしようか」
「おい……リロードとかしないのか?」
「相手そのものが銃みたいなものだから必要無いんじゃない?冷却は……ファンタジーって事で。というわけでコウ、突撃!」
「お前がすれば良いじゃねぇか」
「いやこの銃撃、割と衝撃あってね、上手く前に進めないし攻撃出来るほどの速度は出ないでしょ」
「はあ……じゃあ行くしかないか」
まあノーダメージで倒せるに越したことはないが、多少被弾するぐらいはしょうがないか。ギリギリ照準が追いつかれない様に走るしかない。
「んじゃ行ってくる」
「お、お気をつけて」
盾の後ろから離れ勢い良く走り出す。相手もこちらに気づいた様で、銃口をこちらへと向けてくる。だがその速度はわりかし遅い様で数発ぐらいくらう程度ですんだ。完全にこちらに向かない間に近づき、刀で攻撃すると発砲が止まった。攻撃が当たると止まる仕組みかな。ここから復帰はまあするだろうから急いで近づいてきたショウと一緒に袋叩きにする。
ドロップしたのは最初の方に見たものより大きく精密そうになったパーツのような物やだった。うん、高く売れそうだ。
「まあ倒し方は分かったね」
「問題点はあるけどな。運が悪けりゃ蜂の巣になるぞ」
「私が回復すれば……?」
いやコトネさん、それは絵面が酷いことに。最終手段とかそういう類だよ、それは。とりあえずその提案をやんわりと却下する。
「何か飛び道具欲しいよな、そういやナイフ当てて止まるのかな」
「次試してみようか。飛び道具……鎖鎌?」
「それ飛び道具か……?俺、装備できるのか?」
「いや無理じゃない?刀だけでしょ」
「なぜ提案した……」
「まあ装備出来なくても補正が入らないだけで攻撃判定はあるんだし」
「侍とは何ぞや」
「そもそもコウは侍の信念何か持ち合わせてないでしょ」
「そうじゃねぇよ、ジョブ的にだよ」
「ははは……ふざけるのはこのくらいにしておいてバックラー的なのでもつけたら?ダメージが少し減るぐらいはするでしょ」
「まあ……そんなんで良いか」
後は飛び道具だが、今使ってるナイフもそもそも補正がついてるわけじゃないので別に良いか。もし攻撃が当たれば少し動きを止めるみたいだし、先制攻撃としてなら十分だろう。
「バックラーかあ……クルトの在庫にあるかな」
「無ければ作って貰えば良いでしょ、金は十分あるんだし」
「装備出来ないちょっとしたことにしか使わん盾をか?金がもったいない以前の問題だろ」
「それなら売ったりとかは……?」
「あー、このゲーム売るとき中古って分かるんだよ。まあちゃんとそんな表示が出るわけじゃないし、データだからそれっぽい感じがするわけでもないんだけどね。なんとなくイメージが」
「へぇ、そうなのか。有名プレイヤーの要らなくなった装備とか高く売れそうだな」
「あー、あったよそういう事件。ゴタゴタしてえらいことになったんだよね」
「意外と変な事件起こってんな、このゲーム」
割と気になるが、今聞くほど暇じゃ無いので後にしよう。仕様の方をよく聞くと、耐久値やら生産関係の表記やらで分かるとか。まあゲームだから買い手はいるみたいだが多少デメリットはあるみたいで新品の方が普通は良いよな。てか、結局作るのか……クルトに確認してからで良いか。
「とりあえず盾の話は置いとくとして、この階層はどうするんだ?」
「あーそうだね、戻る?」
「ええ、今更?てか戻れたっけ?」
「途中脱出とか出来るんですか?」
そういえば途中で戻ろうとしたことはないので気にしてなかったが、石碑以外で脱出とか出来るんだろうか。
「いや死に戻りだけど。進むか死ぬかだけみたいだよ」
「いやそれ選択肢じゃねぇし」
ちょっと豆知識的なことを披露するのかと尊敬しかけた感情を返して欲しい。この状況でわざわざ死ぬのは流石に無いわ。
「じゃあ進もうか。1層ぐらいは何とかなるでしょ」
「フラグっぽいなあ……」
「大丈夫ですよ……多分」
まあフラグ回収と言うべきか、大分苦労した。分かってたけど見通しが悪すぎるんだよな。モンスターもそこそこ強くなってる上に1度の数も多くなってきていた。なので敵に囲まれる回数も多く、3方向から撃ってきた時は大分肝を冷やしたな。それにいつもの罠と時間のかかる道のりのおかげで疲労困憊だった。罠は割と即死系が多くなったりしていて舐めプダメ……デモショウガナイ。
「はあ……着きましたね」
「いや、こんなにきついとは。まあ勝手は知れたし、もう少し対策してから行こうか」
「クルトに色々頼まなきゃいけないしな。一旦出るで良いんだろ?」
「そりゃもちろん。ちょっと装備変えたいし。もう少し速く動けると楽だから」
「へえ」
ずっとその装備だったので代わりがあるとは知らなかった。そりゃ多少は状況別の装備ぐらい用意してるか。補正もちょっとAGI系に寄ったりする物らしいし、色々あるのだろう。
俺はクルトに盾を頼んで、立ち回り考えて……ポーション補充して……結構やる事あるな。




