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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第四章 奥へと迷走、探索は着々と
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第十一話 星の数ほどの狼の群れ(比喩)


 クルト達と別れたが、ショウ達との待ち合わせにはまだ時間があるので移動してそこら辺でモンスターを狩ってみたがまあレベルは上がんないよな。気になったんで調べてみたが、どうも生産職と戦闘職では必要経験値量の差が3次職から如実になってくるらしい。そりゃ差が出るのも当然かあ。まあ生産職の方が育ってないと装備とかがなあ、NPCだけじゃ賄いようもないか。こんな事実を今更知ったが、どうしようもないしそろそろ時間なので迷宮の方へと戻る。待ち合わせ場所にはショウがいて、後はコトネさんを待つだけか。


「おい、ショウ」


「お、来たね。後はコトネさんか」


「そうだな、何してたんだ?」


「情報の仕入れとか、アイテムの補充とか……コウは?」


「クルトとアゲハに差し入れ持ってった。お前とコトネさんの分は屋敷の方にあるから」


「それはありがたいけど、その口ぶりだともう食ったね……?美味かった?」


「そりゃもうな。流石は電子データ、脳の誤認はお手の物だな」


「身も蓋もない……」


 後はてきとうに大した意味のない話をしてコトネさんを待つ。ショウが仕入れた情報についてはコトネさんが来てからの方が二度手間にならないしその方が良いだろう。数分経つとコトネさんがやってきた。うん10分前だ

、普通だな。


「お二人とも来てましたか」


「うん、じゃあ行こうか」


 そして8階層へ。まーた、あの草原か。後これを3回繰り返すのかあ、罠にかかるのとどちらが良いかと言われると悩む。とにかく進んでいくしかないか。迷宮に入り、8階層へと移るともう慣れた綺麗な草原が目に入る。


「綺麗ですよね……長く歩かなければもっと良いんですけど」


「迷わない迷宮……宮?」


「何だそれ……そうだ、情報って何だったんだ?」


 進みながら、ショウが仕入れた情報について聞いていく。モンスターはいれば分かるし、歩いている間のいい暇つぶしになるだろう。そういえばこのパーティで情報を買っているのはショウだが、それはツテがあるからなので料金はちゃんと俺やコトネさんも負担している。生産職に関係あるならものによってはクルト達も負担しているが、たまにもう買っていたりする。迷宮に関しては俺達3人しか関係ないからな。Wikiはそもそも基本的な事しか乗ってないからなあ。調べたところ概要しか迷宮の事は載ってなかったし。


「で、ボスの情報ぐらいはあったんだろ?」


「うん、まあマップに関しては運頼みしかないみたいでボスの情報ぐらいしか無かったんだけどね。それで、ボスは簡単に言うと狼の群れだよ」


「狼ですか、アインシアを思い出しますね。あれは1体でしたけど」


「そうだな、いやあ大変だった」


「え?」


「ああコウは……ぷっ、エクストラモンスターに邪魔されたんだっけね?」


「オイ……」


 口が滑った俺も悪いが、ショウが若干黒歴史になりつつある出来事を掘り起こしてくる。いや、本当にあれは印象的な事件だった。


「いや俺の事は良いんだよ、ボスの話話」


「まあシンプルにボス狼倒せば良いみたいなんだけど、厄介なギミックがある上に取り巻きが無限湧きみたいなんだよね」


「それはまた……面倒な」


「魔法とかの広範囲攻撃があれば良いんですけど、モモさんがいれば……」


「どれだけ頼ってたかが分かるなあ……何か労いでもした方が良いか?」


「いやいきなり渡しても怖いでしょ。渡してるお金でも増やせば?」


「そんなもんか?」


「それがどうも、数で強化されるあげく、丁度よく壁になるみたいでほら、まだ10階層だからダメージはそれほどでもないけど放置すると無理ゲーみたいな」


「厄介すぎね?結構ギミックタイプだなあ」


「でも解決方法はあるんですよね?」


「番がいるらしいからそれを倒せば強化が解除されて無限湧きも無くなるみたいなんだけど……」


 どうにも歯切れが悪いと思ったら、その番の明確な出現条件が分からないらしい。相手が情報を出し惜しみしていたという訳ではなく、検証不足の様で上手く法則性を掴めていないらしい。何度試してみても、気づいたらいたとかそんな感じらしい。


「気づかなかっただけじゃねぇの?」


「ボス狼は黒、取り巻きは灰色、番は白だってさ。あ、10階層は常時夜らしくて薄暗いけどそれでも間違えるほどじゃないってさ」


 番の体毛は結構目立つ感じの白の様で、夜でも灰色と間違える事はないらしい……謎だな。


「灰から白になるとか……?その中の1匹が」


「それも考えて出るたびに取り巻きを倒したらしいんだけど、いつの間にかいたってさ」


「ええ……面倒だなあ」


 その後コトネさんといくつか案を出してみたが、それでも情報クランの名は伊達ではない様で思いついた案は既に試されていた様だった。まあ条件が分からないだけで倒す方法は分かってるし、そもそも倒せなかった事はあんまりないらしいので大丈夫だろう。こうして話しているだけで思いつくなら苦労はしてないだろうし。その後はひたすら歩き、ボス戦の立ち回りを相談しながら8、9階層をクリアした。食材はそこそこの量集まったしそれなりの収穫と言えよう。

 このままボス戦と行きたかったが、クリアするのに時間がかかっているのでボス戦は明日へと持ち越しとなった。ショウが後でボスの情報をリストで送ってたので、見ておくが、聞いた事のみだった。記憶力が良いから余す事なく伝えてくれるんだよな、ありがたい。 






「綺麗な夜空ですね」


「そういえば、この世界の星座がどうなってるか調べてるプレイヤーもいるみたいだよ」


「何か分かったのか?」


「いやそれは聞いてないから何とも。まあ流石にそこまでの設定は無いんじゃない?」


 翌日、10階層に入った俺達だがリアルの時間は朝だがそこは前情報通り夜だった。プラネタリウムみたいな綺麗な夜空、ボスがいなけりゃロマンチックなんだけどなあ。


「ボス戦でもここの広さは変わらないんですね……」


「うん、でもボスは中心にいるみたいだからまだ大丈夫だよ!」


「いや全然大丈夫じゃないだろ」


 結局最初は歩かされるのかと思ったが、目的地が分かりやすい分早く着いた。取り巻き結構いるなあ。


「結構多いですね」


「耐久の後、番探しかあ、大変だね」


 夜目はもちろん効く様で狼の群れはとっくに俺たちを視界に入れている。というか、何体か向かってきているので対処しないと。


「ふっ!」


「それっ!」


 まあ取り巻きは無限湧きの雑魚だからすんなり切れるな。ショウの盾殴りでも十分対処出来てるし。


「思ったりよりも脆いけど、増えるスピード凄くない?」


「1体倒すと、3体増えてる気がします……!」


 コトネさんが言う程ではないだろうが、確かにそれに近いスピードで増えてる気がするわ。


「いやこれ大丈夫なのか?」


「僕達よりもレベルの低いパーティだってクリアしてるんだから大丈夫でしょ。ほら減らして減らして」


 ショウの言う通り減らすしかないが、ボス狼も攻撃に加わってきて少し面倒になった。反撃しようとすると、取り巻きの1匹が盾になり、更にボス狼の反撃が来るので面倒臭い。そうして、3人で数十体以上取り巻きを倒すが、番が現れる気配は無い。


「いつなったら、現れるのかね!?」


「さあてな……うわっ!?」


 取り巻きを斬り払っていると、突然目の前に白い狼が現れた。こ、これが番だよな、なぜ目の前……喰らいに来てるし。


「コウ、倒して!」


「はい、よっと!」


 いきなりだったので驚いたが、【朧流し】で受け流し、刀で番の頭を断ち切る。


「ガアアアア!!」


「おっと!」


 番を殺されたので、怒り心頭のボス狼がこちらへと向かってくる。多少距離があったのでなんとか避けられた。ショウがヘイト操作のスキルを使った様だが、特殊状態なのか、番を殺した俺の方しか狙ってこない。しょうがないので攻撃を避けながら、時間を稼ぐ。


「来ないなら来ないでやりようはあるんだ……よっ!!」


「ガ、ガア!?」


 俺に夢中になっていたボス狼は近付いて来るショウに気づかず、土手っ腹に振り回された盾をもろにくらった。致命的な隙を晒したボス狼に攻撃を叩き込むと、ボス狼はHPが無くなったようで塵となって消えていった。


「ふう、倒せたか。それにしても何だったんだか」


「いきなり目の前とはね……まあ倒せたから良いじゃない」


「そうですね」


「じゃあ次の階層だな」


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