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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第四章 奥へと迷走、探索は着々と
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第八話 中々実際にはお目にかからない


 時間もあるので5階層にいたボスを倒し、6階層へときた訳だが……割と凄い光景が広がっていた。


「はああ……凄いですね」


「いやー、きれいな草原だね。アインシアの草原フィールドとはまた違った感じで」


 6から10階層は草原だとは聞いていたが、こうも雄大な感じだとは思ってもいなかった。脛ぐらいの高さまで生えた青々とした草、起伏は多少あるが、それがまたリアルな草原らしさを際立たせている。空は、ここは迷宮のはずだが澄み渡ったきれいな青空が広がり所々に浮いている雲が空の青さをこれまた際立たせている。いやあ、これはリアルでも中々お目にかかれない、外国とかでも行かないと見られないんじゃないか?行ったとしてもこんなあおぞらとセットで見られるかどうか。何か最近慣れてきたから忘れていたが、久しぶりにこのゲームの話題性を思い出した。すげぇリアリティ……語彙力酷いな。


「本当に凄いですね……迷宮じゃなかったらまた来たいんですけどね、ピクニックとかで」


「そうそう会わなそうだけど、モンスターもいるからなあ。まあ地上でもそうだけど場所が場所だから……」


「いやー、この辺りの階層のマップ情報が無いのも頷けるよ、マッピングしようとしても意味ないからね……」


 ショウの言う通り、この視界一面に広がる草原ではマッピングする意味が無い。ここにどんな形で存在するのかは分からないが、転移できる石碑ぐらいしか情報ないからな。皮肉にも転送位置は毎回ランダムなのですぐ近くにある場合もあり、マッピングしたとして目印がないから進みようが無いか。

 なんでも、看板を立てようとしたプレイヤー達がいたそうだが、そういう物はここにいるモンスター達に目をつけられやすい様で立てては壊され立てては壊されを繰り返した。自棄を起こしたプレイヤーがコスト度外視、超頑丈でしっかりと支柱を固定した看板を用意したところ、日付が変わると同時に消えていったという。奇しくもそれを目にした本人達は心が折れ諦めたとか。


「……凄い可哀想な話ですね」


「運営は僕達にさんざん歩き回って欲しいんでしょ。この迷宮は異物を残さないっていう設定でも用意しているのかな、まあしょうがないね」


「ここを歩いて進むのか、一体どっちへどのぐらい進めば良いんだか」


 とりあえず話していてもしょうがないので進んでいくが、大して風景が変わらないのでどうすれば良いのやら。ちらほらと動く影は見かけるが、モンスターかプレイヤーだし、そもそも素材に興味がない限りそっちに行く事はないからな。


「そういやショウ、マッピングは?」


「一応使ってるよ。だだっ広いとはいえ迷宮なら端はあるはずだし最悪全部マップを埋めれば見つかるからね」


「それは本当に最悪だな、一体何時間かかるんだ」



 1から5階層まではまだ総当たりすれば石碑の位置は普通に見つかるだろうがここはどうなるやら、下手をすると見逃しそうである。


「ここも形は同じなんですか?」


「ああ忘れた……それがさあ、6から10階層は石碑タイプじゃなくて床にある魔法陣的な感じらしいよ」


「うわあ、それこそ見つけづらい。苦労させる気たっぷりだな」


「一応人工物だし、それなりの大きさがあるみたいだから近くまで行けば分かると思うから……それを探す様にしてね。目の良さはどうしようもないけど、高く飛ぶとか出来ればま……だ……?」


「あ、コウさん」


「……そういやそうだな」


 そういえば俺にはアハルテケがあったんだった。空気はもちろんある、高度はどれくらいあるのかは分からないが、少し上がるぐらいなら問題無いだろう。強いて言えば他のプレイヤーだが、それなりに距離はあるはずだし多分大丈夫か?


「一応今度それっぽいローブでも買っとこうか?青いローブならそれなりに擬態できるでしょ……じゃあ早速やってみてよ」


「おう、【空走場(アハルテケ)】」


 【空走場(アハルテケ)】を使用し、空へと上がる。20メートルぐらい上がったところで地上で見るよりも雄大な草原が目に入る。良い景色なのは良いが、まずは人工物を探さなければと辺りを見回してみるがそれらしいものは見えない。というか、広すぎて視力が全然足りないなあ。しばらく見回すが結局見つからなかったので下へと戻る。


「どうだった?」


「近くには無かったよ。遠くはいくらゲームでも視力が足りないし、こればかりはステータスじゃどうにもならんしな。2.0ぐらいだろ?」


「あー広いからねー……双眼鏡が確かあったはず……あれ無い。あ、屋敷に置いてきたんだった」


「おいおい……」


「はあこんな時に必要になるなんて……!もう本当に……」


「しょうがないだろ、次の階層からな。今回はてきとうに間隔空けて見ていけば良いだろ?」


「10分ぐらいですかね?」


「まあそんぐらい……じゃないか?」


「……そうだね、切り替えて行こうか」


 気を取り直して草原を進んでいく。遠くをはっきりと見る手段は無いが、上から見れるなら多少早く進むだろう。まあようやくと言うべきか、進路上にモンスターらしき影が見えてきた。


「どうする、避ける?」


「いやこのままで良いだろ、いきなり俺達じゃ倒せないレベルのモンスターが出たりしないだろ」


「そうですね」


 と言う事でこのまま進むと前方のモンスターの正体はゴブリンだと言う事が分かった。


「5体か、どうする?」


「いやもうてきとうで良いでしょ」


 ゴブリンを見るのは久しぶりだな、というか最初の草原以来か?意外と見かけないもんだな。


「まあ多少頑丈になったぐらいだろ」


 終盤地帯のゴブリンはずる賢くなって洒落にならなかったりするが、ここは迷宮6階層、まあ序盤なので問題あるまい。実際その通りで確かに多少頑丈で動きも速かったが、多少だった。刀の刃は問題なく通り、頭と胴体を別れさせた。ショウも盾で叩き潰しているので大丈夫か。そして1、2分で5体全部倒すことができた。ドロップした素材はまあ……売るので確定かな、二束三文っぽいが。


「そういえば食材が出るって言ってましたけど、もう少し先なんですかね?」


「そうじゃない?」


「ゴブリンは流石に無いか、はずれ枠かな。モンスターなら牛でも出んのか?」


「んー、大当たりみたいだよ、コウ……ほら」


 フラグになったのかどうかは分からないが、前方に少し大きい影が、シルエットは確かに牛だな。近づいていくとそれもはっきりし、逞しい牛のモンスターだった。ホルスタイン……いや意味違うな、闘牛の方が近いか。大分気性は荒い様で、こちらを視認すると物凄い勢いで突進してきた。


「ショウ、受け止めろよ」


「ええ?いやいや……たまにはやってみるかな?」


 てきとうに言ったことだが、意外と乗ってきた。まあショウなら大丈夫だろう。


「ふっ……!!」


「ブモォ!?」


 案の定ショウのステータスなら普通に受けれる様でモンスターの突進を完全に耐えきった。あれこの後どうしようか、全然考えてなかったわ……とりあえず首でも切るか。


「【抜刀】」


 突進を受け止められて隙を晒しまくっている牛に対して、スキルの後押しも受けた俺の刀は一刀両断と牛の頭を断ち切った。いや、即興でも意外となんとかなるもんだな。さて何がドロップしたかな……何じゃこら。


「肉?」


「お肉ですね……」


「……イメージ画像で見るような霜降りだね」


「グラム1000円とかしそうだな」


 ドロップしたのはA5ランクのイメージについてそうな下敷きの上に乗ったきれいな霜降りの肉の塊だった。食材が出るのは分かってるし、牛なら肉が出るのも分かっていたが何か思っていたのと違う。ま、まあこんなこともあるかと気を取り直して進んでいくが、まあ目印も無いので時間がかかる。道中で鶏やら豚やら色々遭遇して食材は豊富に手に入れたが、先の牛肉と同じく、高級嗜好な感じだった。主旨が分かんねぇー。そんな感じで数十分、何とか目的の装置へと着いた。


「いやあ、疲れたね。一旦休憩しようか」


「そうだな、ついでに効率の良い進み方でも調べてみるか」


「そうですね……あ、双眼鏡」


「ああそうだった。取りに行かないと」


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