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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第四章 奥へと迷走、探索は着々と
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第四話 話は長い、先も長い


 翌日、ショウとコトネさんより早くログインした俺は時間があるので昨日機械っぽいモンスターからドロップしたアイテムの詳細を見てもらうためにクルトがいるであろう場所を訪れた。このアイテム、何かは分かるんだが用途が全く分からないんだよなあ。装置というよりはパーツっぽいのだが、フレーバーを見ても皆目見当がつかない。どうせ進んでいけば似た様な物は山程とはいかなくてもそれなりに集まるだろうが、どんな物でどのくらいの価値があるのかは知っておかないとこの先の方針に関わってくるからな。


「……で……は……だと思うんですよ!」


「いや、確かにそっちの方が攻撃力は上がるが……ここが脆くなる。このゲーム、そこら辺もちゃんとしないとすぐ壊れるぞ。だからここは……」


「……なるほど参考になります……!じゃあこっちは……」


 そういうわけで来たのだが、件のクルトはPCAのトップであるレイブンさんと物凄い勢いで話し込んでいた。何やら図面の様な物を広げているので何かの武器だかの設計をしているのだとは思うが、何か前にも見たことあるなこの光景。というかレイブンさんここにいるのか。まあ指揮系統がどうなってるのか知らんがトップにいるのだし、プレイヤーの今の関心はこの迷宮だから色々あるのだろうが……こうやって話しているのを見ると暇なのかと思えてくる。

 あのテンションの2人の話に割って入るのは中々勇気がいるのでどうしようかと悩んでいると、視界の端で俺の方に寄ってくる人影が見えた。それは以前、PCAの鍛治部門で受付をやっていたサツキさんだった。


「やあ、えっと……コウくんだっけ?どうしたの~?」


「サツキさんもいたんですね……いやあの2人……」


「私もこっちの担当になってね……最近はあんな感じだよ。私で良ければ聞くけど」


「ありがとうございます。まあこのアイテムの使い道聞いてみたかっただけなんですけどね。昨日手に入れたんですけど、ショウ……古参のパーティメンバーに聞いても知らなかったんで」


「ああ、新素材だからね〜。ウチでも色々情報何飛び交ってるよ」


 サツキさんによるとこのアイテムは主に銃士系統の装備のパーツになるらしい。主に、という事なのでもちろん他の事にも転用出来るみたいだが、多分運営が用意した目的はその装備用じゃないかとのことだった。銃士系統か……そういやそんなジョブあったなあ、すっかり忘れてたわ。

 忘れていたというのはその不遇さと、それから来るジョブ人口の少なさにある。不遇といっても、ゴミだかカスだかフレーバー要素のみとかそんな訳ではなく、一応ちゃんと戦えるみたいでレベル上げればそれなりに戦えるらしい。だが、同じ中、遠距離の弓士と比べてコストが1発のコストが重く、また整備にも専用の生産職が必要になる。なのでサブジョブでその生産職を持ち、自身で整備しているのがほとんどなのでサブジョブによる補助があまり見込めない。その面倒さからハードルが高く、それならもう弓、魔法で良いじゃないかという話になってしまったらしい。ちなみに俺は弓はまだしも銃は苦手なので不遇じゃなくても選択肢に入らない。弓は当たるのに銃は何故か当たらないんだよなあ。とにかく、そういう訳で今まで俺が見かけなかったほどにはその人口は少ない。だが今回のアイテムなどが発見されたおかげでその不遇さは改善の方向へと向かっているらしく、更には他の系統の武器も新しい可能性がうんたらかんたら。


「もう銃士界隈は狂喜乱舞でね。何かに取り憑かれた様に迷宮に入り浸ってるよ」


「へえ、そんなに改善されたのか……」


「攻撃力の底上げとか、種類とか色々ね。これのおかげで改造の自由度が広がったから整備メインにしているプレイヤーも張り切っててね、PCAの方も小さくてもその部門を作ろうかって」


「そこまでか……これ、結局どのぐらいの価値になります?」


「今はまだ少ないから早めに売った方が良いよ。今はどこもかき集めているから高値でも大丈夫だけどその内落ち着いてくるから」


「じゃあ今の内に売っておいた方が良いか」


 他にも聞いていくと、迷宮の全てのモンスターが機械系ではなく出現するモンスターの種類の1つだそうだ。まあ割合は多いのかはまだ分からないが、トリモチさんが関わっていた食材やら何やらもあるのだろう。あの迷宮で食材ドロップするのかな?迷宮でとれる物は大体は新アイテムらしいので、今は検証段階だがプレイヤーにとってもNPCにとっても有益と言えば有益なものばかりだそうだ。


「有益なのは良いんですけど、イベント終わったらどうなるんでしょうね?」


「さあ……まあこの運営の事だから上手い事やるんじゃない?」


 確かに始めて数ヶ月しか経っていないが、辻褄合わせの上手さは何となく理解している。最低でも銃士用のアイテムぐらいは何とかするだろう。というかあの2人の話が止まらないのは良いとして尋ねる隙もないのはどういう事だ。おかげでサツキさんに話を聞けたせいで用件終わっちゃったよ。レイブンさんって本当に暇なのか?流石に長時間話している暇があるなら次から次へと仕事が来そうなイメージなのだが。


「……クルトはともかく、レイブンさんってこんなに暇なもんなんですか?」


「んー、暇に見えるでしょうけど、本当に今ちょうど暇なだけよ?昨日とか凄かったし。まあ君は凄くタイミングが悪かったわよね、2人の休憩時間が重なった時なんて。あの2人は歳は離れてるけど物凄く気が合ってるし」


「それは良いんだがな」


「ああ、そういえば知ってる?トップはもう15階層まで進んだらしいよ?」


「うわ、15層!?昨日の今日でかー……」


「そうそう。たまたまトップクラスのパーティが揃ったみたいでさ、いやーよくやるわよねえ。あんなに広いのに」


「あれ、入ったんですか?」


「うん、生産職でも気になったからね、冷やかしですぐ帰ったけど」


 まあそういう事もあるか……それにしても15階層か、早いなあ。昨日俺達が1層を探索するのに結構時間がかかったのに。流石はトッププレイヤーと言うべきか。

 噂レベルの信憑性だが、層ごとの広さはあまり変わらないとか。どんどん広くなったりしないのは有難いが、出来れば狭く……それはそれで厄介な事になりそうだな。いやー、これイベント中にどのくらいまで行けるかなあ。


「ていうか、どのくらいまで深さがあるんでしょうね?」


「うーん、100とか?」


「いやいやいや……」


「まあ流石に冗談だけどね?まあどのくらいかはねえ、40かもしれないし無難に50とか?何かしらで60、70とか半端な数とか……無限?いやそれは流石に無いか」


「トップの人達に任せるしかないか。しばらく待てばマップ情報とかも売り出されるだろうし」


「頑張ってねー……あ、素材ならウチでも買い取るよ?ウチじゃなくてPCAがだけど需要があるから。値段もちゃんと今の相場でね。もしかしたら探せばもっと高く買い取る所もあるかもしれないけど」


「あ、それはどうも。じゃあお願いします」


「はい、毎度あり~」


 思っていたより高く売れたな。そういや流れで勝手に売ったけど結局1つだし、そも必要な奴いないしな、大丈夫か。食材や他の素材はそん時で良いだろうし。クルトはもしかしたら必要かもしれないがジョブ違うし、必要だとしても1個じゃ意味ないだろうから後々聞けば良いかな?


「挨拶ぐらいしとこうかと思ったけど隙が無いんで行きますわ」


「あら、そう?じゃあね〜」


 2人の話は終わりそうにないので、2人から目を離し外へと出ようとすると2人の視線がこちらに向いた。


「あれコウさん!どうしたんですか?」


「今かーい……」


 ちなみにクルトはパーツ的なアイテムはいらない様だった。


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