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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第三章 更に先へ、騒動は予見不可
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第二十二話 その後


「ギャァァァァァァ!!!」


「うっわ、うるせぇ」


「そうだけどヤバくねぇか?」


 コアを斬られた事により、悪魔の体は少しずつ塵の様になって消えているが、断末魔なのかやけにうるさい叫び声をあげている。だが、断末魔という割にはやけに長いというか衝撃が……なんか周りがビジビシ言い始めてきたぞ……?


「いやこれ不味いよな?」


「崩れそうだね……」


 ちょっとずつ天井が落ちてきていて危ない、というかあの悪魔消えていっているくせに断末魔が全然衰えないんだが。最後のギミックひでぇな。


「くっ、現場はなるべく残しておきたかったが仕方ない。全員上に退避しよう」


 騎士団長の意見がもっともなので、全員異論は無く上に退避する。偉そうな連中はみんな生贄になって死んだし、魔法陣も戦っている内にめちゃくちゃになったしな、しょうがないか。それでも下っ端でも何人かは捕らえられただろうし、そもそも組織自体は問題無いか?

 俺達が上へ行こうと階段を昇り始めたのがフラグになったのか下はどんどん崩れていった。


「……もう完全に埋まったな」


「崩れ方や場所からいって掘り起こすのは無理そうだねぇ。というかこの地下全体が崩れなくて良かったよ」


「確かにそうだな。組織の規模からいってほぼ壊滅したのは間違いないだろうから、良しとするしかあるまい」


 一網打尽とはいかなかったが、これはこれで良い方だろう。結構資料も手に入れられた様で後でそれを精査すればちゃんと壊滅したかどうか分かるのだろう。それなりにでかい組織だっただろうし、いくら胡散臭い悪魔崇拝の集団だろうと構成員の管理ぐらいはしているだろう。これで今回のクエストもひと段落と言ったところか。


「じゃあ帰ろうぜ。お嬢も心配だしな」


「あ、思い出した。ちゃんと後でツラ貸しな?」


「げ、姐さん覚えてたのか……」


「意気揚々と行ったくせに迷うんじゃないよ。あんたなら道を覚えるぐらい出来るだろうに」


「控えめにな……あ、帰り道ちゃんと覚えている奴いるか?」


「「「「…………」」」」


「……誰も覚えてないのか?いや俺に言える事じゃ無いけどさあ」


 え、マジか。流石に1人ぐらいいるもんだと。またあのほぼ総当たり探索やるのか……?


「い、一応戻るとはいえ通った道だし、まだ時間はかからないはずさ……多分」


「まあ通った覚えのある道もあるだろうし気楽に行こう」


「そうだな……」






「み、皆さん大丈夫ですか?」


「あ、コトネさん……いやほんと疲れた」


 確かに行きほど迷いはしなかったが、それなりに時間がかかった。いやー、マッピング大事だな、いや本当。


「何はともあれ一件落着かな。しばらく休みたいね」


「そうだなあ」


 途中捕まえた奴や資料は、他の騎士団員や領兵の人達が入って回収してくれていたみたいで俺達は出るだけで良かった。道中も帰りは怖いという事も無かったのでただ歩き疲れただけだ。肉体的疲労があるわけではないが精神的にきつい。はあ疲れた、早くログアウトして休もう。






 あれから1週間、滞在先は変わらず領主館だったが、少し王都の屋敷に戻ったりそこらでレベリングをしたりと前までと比べて結構自由な時間が出来たので、そこまで面倒な事は無かった。何故ここにまだいるかというと一応ちゃんとあの組織を潰せたかの確認が終わらなかった様で、大体の結論が出るまで資料の精査などに時間がかかっていたらしい。まあリアルならもっと時間はかかっただろうが、そも俺達のクエストの主題は第3王女の護衛なのとゲーム的処理というか1週間ぐらいが丁度良いという判断なのだろう。


「で、結局結論としてはどんな感じだったんだ?」


「まあ、大団円?と言っても問題無いみたいじゃの。姉様達がまだ調べているが、その辺はここの者達に任せても大丈夫なはずじゃし、妾達はお役御免じゃろ」


「そうなんですか、それは良かったです」


「僕達は結局一緒遊んでいただけですしね」


「いやまあ適材適所じゃないか?それにしても残党とかがいないのは助かるな、再発とか面倒な事この上ないし」


「そうじゃの、奴らが計画していた事もそちらの協力のおかげであらかた解析できた様じゃし」


「あの程度なら覚えられるさ、道は別だけど」


 あの時、最奥は崩れたが、その魔法陣はモモが記憶していた。事細かに記録しておくといつか悪用されそうだがその時はその時だし、不明のままよりは遥かにマシだろう。他にもモモの知識が役に立った様で良かった。護衛対象は傷1つ無く無事だし満点と言っても良いんじゃないだろうか?


「明日あたりには帰ることになるじゃろうが、大丈夫かの?これでやっと依頼も終わりじゃな」


「ああ、大丈夫だ。にしても結構長かったな」


「2週間ぐらい?流石にこの長さのクエストは初めてだよ」


 確かにゲームで2週間は普通は厳しいな。拘束時間が2週間で、実際に動いたのはそれほどまでじゃなかったのでまだやりようはあったからそこら辺は良かったな。


「もちろん報酬はバンと出すぞ。妾が思っていたよりも長くなったしの。それにズィーベルトンの領主殿からも貰ったじゃろう?」


 王女様が言った通り、俺達もがっつり動いていたので、個別に報酬を貰っている。この状況で日本人的な謙遜を発揮したところで一銭にもならないのでありがたく貰っておいた。いや、結構内容は中々だった。今後役に立つ事があるかは分からないが、権力のあるNPCと交友が出来るのはありがたいし、金もいくらあっても消える時はすぐ消えるからなあ。多くて困る事は無いし、使い道は追々考えれば良いし。

 クエストの締めだろう話も大体終わり、第3王女はアリシアの所へと向かって行った。王女という立場的にもまた訪れるのは大分先になるだろうし、今の内に色々とやっておきたいのだろう。


「そういやマモンはこのまま残るのかな?」


「そうみたいだねぇ。居場所が分かるだけ良いんじゃないかい?」


「そうだな、定位置にいるなら一々探さなくて良いしな」


 翌日、帰りは行きと同じく王女様の馬車を警護しながら戻るみたいである。


「今回は上に乗らないのな」


「ふっ、妾も絶えず学んでおるのでな。2度の過ちは犯さないのじゃ」


 そもそも馬車の上には乗るもんじゃ無いけどな。まあ本人が良いなら良いのか。口に出すだけ野暮というか、ややこしい事になるだけだろう。

 騎士団長達はまだやる事が色々とあるそうなのでズィーベルトンに残っている。なのでメンバーは行きと同じだが、こちらも帰りは怖いなんて事は無く無事に着いた。モンスターの遭遇が1回も無かったのは一周回って怖かったが、着いた時点でそういう事もあるだろうと納得した。

 王女様からの報酬もたんまり貰い、屋敷へと帰る。いや、帰ってきたと思える場所があるのはゲームだとしても良いな。手放せないわー。


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