第二十一話 討伐完了
「あいつ、いつまでかかってるんだろうね。まさか迷子になっているんじゃ無いだろうねぇ?」
「まあ気持ちはわかるけど……どうしようもねぇよなあ」
もう30分ぐらい経ったはずだが、まだマモンは来ない。もうモモは余裕はあってもMPの節約のために魔法は使っていない。俺とショウもスキルを使わずただ攻撃しているだけである。流石に待つだけというのもアレなので1回【貫牙剣】を使ってみたが、今の状況だとお手上げという残念な結果になってしまった。こんだけやっても消耗する気配が無いならコアを破壊しないと倒せないタイプの敵かあ。完全に打つ手が無くなったな。【貫牙剣】を使っても人でいう心臓の辺りや頭は守りが硬く、あの辺りにコアがあるのは間違いないだろうが、それはエクストラスキルを使わなくても察せる事だからな。
「一応攻撃が避けられるだけまだ楽だけどな……」
「パリィすればカスダメで済むしね。魔法やビーム的な攻撃を使うタイプじゃなくて良かったと思うべきかな」
純物理タイプなおかげで派手な攻撃は無く、言ってしまえば殴る蹴るぐらいの方法しかないわけだ。もちろんまともに喰らえばタンクのショウでもそれなりのダメージは受けるぐらいの攻撃力はある。なので避けるのは当然だが動きがそれなりに素早いせいで避けられるとしてもこう長くなると疲れてくる。ショウに爆弾でも持たせて特攻させれば状況が好転したりしねぇかな。まあそんなアイテムあったらもう使ってるけど。
「いっその事崩落覚悟で魔法でもぶっ放そうかい?」
「いやいや、本当に崩落したら洒落にならないから……ちなみ内容は?」
「貫通力のある魔法に残りの魔力集めてぶっ放す。普通なら山削れるねぇ」
「それ確実にここえらいことになるよな?」
「そうだねぇ、崩落で済めばいいけど」
確実に倒せる手段ではあるのだろうが、確実にデスペナになるだろうなあ。それに2次被害が洒落にならん。割とモモは生き残りそうだが他にここにいる騎士達とかにも被害がいきそうだし。まあ却下だよな。いつ来るか分からないマモン達を待った方が余程安全か。てか、いつ来るんだー!?
「わりぃ!遅くなった!」
「遅れてすまない!」
そこから数分、ついに待ち人来たれりだ。
「やっとか!」
「急いだのは分かるけどどれだけかかったんだ……!?」
「い、いや……ちょっと俺も迷っちゃって」
「おい、後でツラ貸せ」
「ひぇっ」
……モモの口調が崩れた。いや迷いそうになるのは分かるけど本当に迷うとは。ま、まあ死にはしないだろうから頑張れマモン。
「そ、それで私はどうすれば?」
「ああ、今ショウが引きつけている悪魔のコアを探してるんだけど魔法耐性が高くてな」
「なるほど物理的手段で範囲の広いダメージを与えればということか。確かに私が1番適任か。良し、引き受けた、遅れてしまった分を取り戻せるとは思わんが、一助になれば幸いだ。確実に引き当ててみせよう」
おお、頼もしい。その勢いでコアごと破壊してくれると更にありがたい。
確実に当てるため、防御などをされない様に俺達で引きつけ騎士団長が当てる隙を作る必要がある。
「よしじゃあやるか」
「頼む。必ず一撃を見舞おう」
さて引きつけないとな。攻撃自体は当たるからなるべくこちらに注意を向けないといけないわけだが、相手はそれなりの自己再生持ち。ヘイトの向け方がいかんせん分かりづらい。
「こっちだデカブツ!」
「グアァ!」
滅多切りにすればこっちに注意が向くがと思ったが、確かにこっちに向いているが、今までと同じなんだよな、何かあれば他の方にすぐにヘイトが移りそうな。
「オラァ!」
あ、ほらマモンの方にヘイトが向いた。交代した今の内にショウと相談するか。
「どうする?」
「ヘイト操作がうまくいかないよね、あの自己再生のせいか余裕があるというか。もうやってもらう?」
「いや、万が一を考えると駄目だろ」
いくら威力が高い攻撃をしようが、防御されるとコアを探せる状態になるかどうか。何か無いかな、あいつの動きを止められる様な……あ、そうだ。
「【空走場】で何とかなるかな、MP全部注ぎ込めば意外と足りるだろ」
「……いける?強度的に」
「試すだけならタダだろ。失敗してもなんかなるわけじゃないし」
「そうだね、じゃよろしく。その間に伝えてくるから」
「おう、【空走場】」
足場を作りマモンが引きつけている悪魔の方へ向かう。背中を斬りつけようとするが今までと同じように防御される。ショウは、今伝えてるところか。
「……って感じらしいよ」
「へぇ、なるほどいけるんじゃない?上手くやらないと残念な感じになりそうだけど」
「まあ、コウに頑張ってもらうから」
何言ってるかは知らんが、気にしない様にしよう。善は急げだ、急いでやっていこう。こっちに攻撃してくるが、こっちは攻撃がしてくるのが目的ではないので絶えず動き回り足場を作っていく。防御されず、数秒動きを止められれば良いのでまだ負担は少ない。足場をちゃんと残しておくためにMPをそれなりに注いでいく事を忘れない。
目論見通り、ちゃんと邪魔になっている様で動きが鈍くなっている。1つ2つ程度だとすぐ破壊されるが、数が多ければその分邪魔になるので何とかなっている。【空走場】が単純な空気操作だったら一回で固められただろうが、これ足場を作るスキルだからな。他のプレイヤーだったら効果違ったりするのかな?あ、MP足りなくなってきた、ポーションポーション。
「お、ちゃんと固まってる」
「グアァ!?」
何回も繰り返したことにより、一時的だが動きを止められている。上手く腕も固定出来たので胴体がガラ空きだ。
「騎士団長!」
「分かっている!【セイバー・カルミネイト】!」
「ギャアアアアアアア!!!」
おお、すごい威力。あれ、俺が切られたやつじゃないか?切られたというより吹っ飛んでんな、アレ。
「見えた!」
威力の高い攻撃のおかげで、倒せはしなかったもののコアが見えるまでダメージを与えることが出来ていた。うわ、もう再生し始めてる。
「コウ!」
あのスキル流石に反動あるのか、じゃあ壊すの俺か。SPはちゃんと残ってるな。
「再生するんじゃないよ!」
再生している肉もモモが魔法で凍らせて邪魔をしてくれている。耐性があるため微々たるものだが、それでも少し遅くなっている。これでこの戦いも終わりだ……!
「【貫牙剣】!」
「グアアアアアア!!!」
コアに向けて刀を一閃、効果を十分に発揮し、コアは真っ二つになった。悪魔の方は断末魔だろうか叫び声を上げ、苦しみ始めた。




