第十九話 最奥にて
「チッ、探索者風情が……」
「そう、言われても、なっ!」
今、待ち構えていた宗教組織の男達と戦闘になっている。あちらは4人でこっちはモモが休んでいるので3人になっているが、今の所問題は無かった。というか、相手の1人は魔術士系統みたいだが、魔法を使おうとするたびモモに片手間で打ち消されているので、ほぼカカシ状態になっている。結果としては状況はイーブンとなっている。
俺が相手をしている男は、襲撃してきた時の奴よりかはレベルが高いみたいだが、それでも対処は余裕が出来る程度だった。今まで会った戦闘系のNPCが、天使やら悪魔やら、騎士団長によく分からんメイドだったりと強すぎて平均が分からないんだよなあ。エンカウントしたのがヤバいだけで流石に、誰も彼もでは無い事は分かっているが、予測しづらくなっているのは微妙に困る。強さ的に相手は4人とも3次職ぐらいだとは思うのだが、若干相手の方がSTRは高いと思うのけどスタイルが違うからなあ、いまいちレベルが分からない。負ける可能性があるほど強くないのは嬉しいが、いまいち基準が分からないので強いのか弱いのか……まあNPCと戦う機会なんて犯罪者ぐらいだから別に良いのか?
「オラァ!」
「ぐはっ……」
あ、マモンが1人倒した。俺も俺さっさと倒さないと。
「そらァ!」
「ぐっ……くそっ!」
速さはこっちが勝っているので、攻撃の速度を上げ相手の余裕を無くしていく。NPCといえどそれなりの経験を積んでいるはずだが、こっちも様々なゲームで対人戦闘はやっているからな、このままならエクストラスキルを使わなくても大丈夫か?
「……っ!なめるなっ!」
「おっと!」
相手もみすみすやられる気は無いようで、先程よりも力強い攻撃をしてくるが、雑な体勢だったので簡単に避けられた。
「そろそろ、倒れろっ!」
多少大振りだったおかげか、大きめの隙が出来たので刀の峰で思い切り頭を殴りつける。結構な量のダメージエフェクトが散ったが……生きてるかな?まぁ、1人2人死んだところでもうここは壊滅させるんだし、別に構わないかな?派手にダメージが入ったせいか、戦っていた男はそのまま倒れて動かなくなった。
「ふぅ、倒せたか」
「おう、終わったか?」
「ああ……ショウの方にも行ってくれたのか、ありがとう」
「それぐらい普通だろ」
ショウは攻撃手段少ないからなあ、相手をするのは簡単だろうけど、攻勢に回るのは少し面倒だろうし。ショウの方は2人がかりだから、上手く気絶させた様で縄で体を縛っていた。それにしてもマモンの能力って凄いな。
「それ、武器までコピー出来るのか」
「あー……強度まではな。武器の特性までは無理だが、詳しくは言わないけど範囲外だ」
「へえ、あ、魔法職の奴は……うわ」
詳しくは言わないって大分言ってる気がするけどな、他にも色々あるのだろうか。そんな事を考えているとモモが対処していた男のことを思い出し、どうなっているか確認しようと振り返ると氷漬けになっていた。
「もう面倒だから氷漬けにしちまったよ。1人ぐらい別に良いだろ?」
「えぇ……まあ別に良いか」
方法はともかくこれで足止めしてきた連中は全員無力化したのでようやく先に進める。敵4人は氷漬けの奴を除いて縛って箸に寄せておき先へと進む。この先は特に別れ道もなく一本道だった。突き当たりにはこれ見よがしにしたへと続く階段があった。
「何か罠っぽいよなあ……」
「同感だけど行くしか無いでしょ」
「まあ、変なトラップが無いのを祈るしか無いねぇ」
何があっても良い様にタンクであるショウを先頭にして降りていく。今までより階段は長く、ラスボスでもいそうな雰囲気だが、実際にいるのは教祖とかだろうし、まだ楽に進むと良いが。下に着いても、まだ直線の通路が続いていた。そのまま先へと進んでいくと、辿り着いたのは体育館ぐらいの広い空間だった。その中心では数人のちょっと豪華なローブを纏った集団が魔法陣を囲みながら何かを唱えていた。うわ、さっさと止めないとヤバいやつだろあれ。
「モモ頼めるか?」
「はいはい、『グレイシアマジェスタ』」
モモの魔法によって魔法陣ごとローブ達の体が凍りついた。その魔法お気に入りなのかな、よく見るけど汎用性高いなー。ローブ達は氷漬けにされるまで俺達に気づいていなかった様で、少しパニックになっていた。これなら捕らえやすいかと近づいていくと、俺達に気づいたのか邪魔をするな的な感じで罵ってきた。元気だなあ。
「……何か言ってるけど、全員バラバラだから全然内容わかんねぇな」
「そうだね、聖徳太子じゃあるまいし、もうちょっと内容揃えてくれると助かるんだけどなあ」
「じゃあ1人残して気絶させるか。せっかく捕まえたんだから勿体無いし」
そう言ってマモンは1人1人殴って気絶させていく。2人ほど女がいたが、容赦無く殴るというか拳骨で気絶させていた。流石に顔面は無いか。残した1人はこの中で1番装飾が派手だったので恐らくトップなんだろう。1人になったお陰で何を言っているのか分かる様になったが、いかんせん悪魔を崇拝しているヤバい集団のトップ、若干言っている事が支離滅裂なので、理解し難い。どうしたものか。
「ショウ、解説〜?」
「えぇー?えっと……僕達が襲撃してきたせいでロクな生贄もないまま儀式をする羽目になった、早く解いて続きをさせろ……意味分かんないね」
まあ、そんな感じの内容だろうなあ。というか、いつまで怒鳴っているのだろうか、体力凄いなあ……特に重要な情報も無さそうだしもう良いかな。
「じゃあ黙らせるか?」
「そうするか、うるせぇし」
マモンがまた気絶させようと近づくが、教祖らしき男は少し萎縮した様だったが、それでも言葉を続ける。
「くそっ、お前らが邪魔をしなければあの娘も攫え、偉大なるアスモデウス様を召喚する事が出来たのに!!」
「アァ!?……あ?」
「おい」
「いやいやいやいや、無関係無関係。流石に違うから。召喚って……ここにいるよ?」
いきなり教祖の口から出てきたのはアスモデウスという名前だった。悪魔を崇拝しているのは分かっていたが、まさか出て来たのごよりにもよってモモの名前だとは……まあ、黒幕というの線が無いのは分かっているが、凄い微妙な空気になったなあ。
「一応聞くけど違うよな?」
「違う違う、趣味じゃない。というかこういうのは物理的に干渉できない奴ができる様にするためのものさ、こうして存在している時点で意味ないね!」
「そもそもこんな事する趣味の奴俺らに1人もいねぇからな。どうせそこらの木端か、こいつらが勝手に妄想してやってるだけだろ」
「ああ、そういう感じか」
流石に俺達が分かっているのは分かっているみたいだが、それでも少しでも誤解されるのは嫌な様で、若干必死に弁明していた。こいつら大罪の悪魔は、元が違うせいだろうけどそこまで残虐非道じゃないんだよな、まあその他大勢はどうでも良いぐらいには思っているのだろうけど。
「さて、人の名を騙った馬鹿は誰だい?あんたらが勝手に祀っているだけなら風評被害なんてもんじゃないんだけどねぇ?」
悪魔だという証明をするためか、モモの目の色が変わり、頭から角がでた。久しぶりに見たなその姿。ガブリエル戦以来か?けど、
教祖(暫定)は信じてないみたいだなあ。
「はん、馬鹿め。お前の様な者がアスモデウス様でいるはずがないだろう冗談も休み休み言え」
いやまあ、そうなるだろうと思ったけどさあ……うわ、モモが青筋立ててる。
「姐さん落ち着いて……」
「いや、イラついてはいるけどキレてはいないさ。よしもう口塞ごうか」
「なっ!むっ、むーーっ!」
聞く事も聞けたし、まあ良いか。これで一通り収めたはずだから、とりあえず騎士団長達待ったほうがいいかな?
「モモ、こいつら魔法で運べるか?」
「うーん……とりあえず待った方が良いんじゃないかねぇ。あっちも色々調べるだろうし」
「それもそうか」




