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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第三章 更に先へ、騒動は予見不可
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第十六話 正体は


「え、なんだこれ!?」


「第2波だろうよ!」


「うわ、そういう展開かよ!」


 部屋は煙幕に包まれ、視界が悪過ぎる。暗さはゲームシステムで何とかなるが、流石にこの状態はどうしようもない。というか、名付けるなら閃光煙幕手榴弾?そんなもんがあるのか、何か魔法とかじゃなく物理的っぽいからそういうアイテムか。自分で使う分には便利なんだろうが使われるととても面倒だな、この視界の悪さどうしよう?


「『ウインドブラスト』!」


「キャッ!」


 モモの魔法によって煙幕が吹き飛ばされていくが、その最中悲鳴が聞こえた。もしかしてアリシアが攫われたか?近くにいた方が良かったか。


「お嬢!チッ、行かせるか!」


 マモンが攫った人物がいるだろう方向へと走る。ああもう、NPCが生き生きしているな!俺達がいる意味が無ぇ!

 走っていったマモンを追いかけようとするが、第2波は1人じゃなかったのだろう、足止めなのか3人の黒ずくめの男達が目の前を塞いだ。


「あーもうめんどい!」


 ショウと一緒に迎撃していくが、レベルがそれなりに高いのか、時間がかかる。外ではなく、建物の中なので、派手な魔法は使えないのでモモは外からマモンを追いかけていった。剣など、持っている武装からに先程モモ達が倒した者達よりは正面戦闘が得意な連中なんだろう。領主の館なので、それなりに廊下は広いが、流石に戦いにくい。さて、相手がこの程度なら【貫牙剣】を使えばすぐに倒す事自体は可能だろうが、果たしてそれで良いのか。この一件の場合、敵の情報が少ないためモモ達が確保した奴もいるが、情報源は多い方が良いだろう。けど、アリシアを攫った奴も追いかけないといけないんだよなあ……モモ達が追いかけてる時点で、何とかなりそうなんだよなあ。プレイヤーの必要性とは。


「これ、捕らえた方が良いよ、なっ!」


「うーん、まあその方が良いよね。肝心の奴はあの2人が追ってるから大丈夫だろうし」


 やっぱりショウも似た様な事を思っていた様だ。ならば、倒さずに捕らえる方向でいこう。【貫牙剣(アウラ)】を使ってしまえば、簡単に致命傷だからなー、死なせずにかつ、無力化。他のゲームでもそんな状況無かったからな、モンスターの捕獲ならやった事があるが、まだ多少手荒に扱っても問題は無かった。ああ、人間って脆いなあ。


「【空走場(アハルテケ)】!」


 とりあえず、流石に狭くて戦いづらいので、【空走場(アハルテケ)】を使って移動できる場所を増やす。これならアドバンテージがあるし、足場を残しておけば相手が引っかかって体勢を崩してくれると……良いなあ。というかてきとうに思いついたけど、色々使えるな。後で罠も考えよう。


「おっと!?ちょっとコウ、僕も分かんないんだけど!」


 あ、ショウが引っかかった。あ、魔力感知無いよなそりゃ。隙ありとばかりに黒ずくめの男がショウに攻撃するが、そこは伊達にタンクをしていないショウ、盾を上手く使いカウンターのごとく相手を吹き飛ばした。


「こ、殺して無いよな?」


「多分ね!」


「おい」


 3人で俺達2人にかかったのに、1人がやられた事で形勢が悪くなったと判断したのか、相手の勢いが無くなり逃げ出す様な素振りを見せる。まあ、こいつらは時間稼ぎが目的だから、最悪撤退しても良いんだろう。というか背格好で男だと判断しているが、フードをかぶっているせいで顔が見えないから表情が読めず、どういう思考をしているのか分かりづらい。なので今どういう作戦なのか分からないんだよなあ。まあ、とりあえず隙をついて峰で殴ればいいか。

 面倒とばかりに【空走場(アハルテケ)】の足場による立体機動をとりながら刀を振りかぶり、相手の頭を思い切り殴る。相手がこっちの動きに慣れていないうちにてきとうに攻撃すると、数分で鎮圧する事ができた。いや流石エクストラスキル。初見殺しには持ってこいだな。


「じゃあ自害手段をなんとかしないとな」


「口の中かあ……やだな」


「では私がやっておきましょう。お2人はどうぞ先へ」


「おう!?」


 いつの間にかメイドさんがいた。神出鬼没だなこの人。


「あれ、王女様は?」


「ロンド様と一緒に避難しています。私に様子を見てくる様にと」


「そういう事か……じゃあお願いしても?あと部屋にも何人か倒れてるので」


「かしこまりました」


 こういうことに関しては手際は1番良いだろうメイドさんに任せて2人でマモン達が向かった方へと走る。襲撃者の対処が済めば早く王女様の元に戻れるだろうし、適材適所だ。もう終わってるかもしれないが、はてさてどうなってるやら。


「あ、もう終わってるよ」


「まあでしょうね」


 結局、この屋敷の敷地内ギリギリで戦闘になったらしく、結果としては人質を抱えている多少強くとも普通の人間、対するは大悪魔2人……2人?2体?まあとにかく勝てるはずもなく、ボロ雑巾みたいな状態になっていた。一応生きてはいるみたいでピクピクと痙攣していた。煙幕の手際といい、何かできる人みたいなキャラだった気がするのにこの顛末はなんというか、同情する。まあゲームの中だからであって、リアルだったら何にも思わないのだろうが。

 肝心の連れ去られたアリシアは、マモンに抱きついて泣いていた。流石に怖かったのだろう、端から見ると事案な気がするが、まあ一応従者という立ち位置だし、状況的に最初のイメージが邪魔しているだけだろう。


「体にナイフ刺さってるけど大丈夫なのか?」


「あいつはあの程度なら問題無いよ。ガッチガチでは無いけど、能力は正面戦闘も可能なやつだし」


 マモンって確か強欲だよな?強欲……解釈が多すぎて分からないな。いや、モモが色欲な時点で参考にならないわ。本当に色欲っぽい能力なら全年齢対象のゲームとしてアウトだし。

 まあこれで今回の騒動は終わりかな?捕まえた奴らから情報が出ると良いけど。第3波が無いとは言えないので、一応まだ俺達も残る事に、流石にこういうシチュに慣れていないコトネさんはログアウトしたが、まあ俺とショウがいればなんとかなるだろう。まあほとんど役に立ってないけどね。






 数日後、第3王女によると敵の集団の概要が分かったそうだ。


「宗教組織ィ?」


「そうじゃ。と言っても、誰からでもわかる様な邪教での、崇拝対象は悪魔だそうじゃ」


「悪魔?悪魔ねぇ……?」


「こっちを見るんじゃ無いよ。関係あるわけ無いだろう」


「俺もねぇな。てか俺らの誰もそういう趣味の奴いないし」


「そうそう」


 知っている悪魔2人は心当たりは無さそうだった。まあそりゃそうだろうな、てか関係あったら大問題だ。


「まあこちらも2人が関わっているとは思っておらん。知っている情報が情報だしの。そもそも2人にとってアリシアに価値があると思うかの?」


「あれは珍しいとは思うけど……どうせ生贄とかだろ?そういう手段はそも関係無いからねぇ。そういうのは木端共の常套だし」


「だろうの」


「……アリシアって何か特別な能力とかあるのか?」


「……言っておらんのか?」


「いやそっちが言ってるものかと」


 おや、ここで重要な情報伝達にミスが。何かあるんだろうなと思っていたが、機密みたいなもんだと思って聞かずにいたが、ただの行き違いかい。

 そんな訳で伝えられたアリシアの能力というか何というかは端的に言うと超直感的なものだそうだ。マモンを側に置いているのを領主が許しているのもアリシアがその勘により大丈夫だと伝えたらしい。友人という事もあるだろうが、だから王女がわざわざ出てきたのか。まあ少し調べればプレイヤーでも分かるみたいな情報で、後でショウが情報クランに確かめたところ割と安い値段の情報だった。何じゃそら。

 ま、まあとにかく、狙う理由も相手の情報も分かったので拠点が分かり次第叩くとか。内容が内容なので、小規模で叩くらしいので関わっていた俺達にもお呼びがかかった。俺達で足りるのかな?


「あ、あと敵の大体の概要が分かったから姉様も来るぞ」


「騎士団長が?」


「もう後は敵を叩くだけじゃからの」


 なるほどそうなのか。狙われている人物が人物だからかな、まあとにかく心強い。


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