第十三話 ロリコン疑惑
「後は領主の令嬢と顔を合わせれば一先ず、休憩じゃぞ。もう少し付き合っとくれ」
「ああ、まあ依頼だからな」
「あ〜〜」
「ど、どうした?」
「いや原因が分かって。まあすぐ分かるさ」
急に何か、喉に引っかかってた骨が取れた様な表情をしてモモが声を上げた。さっき異様に不機嫌だった事か……?いやすぐに分かるってどういう……不穏だなあ。
第3王女の後ろについてゾロゾロと歩いていると、廊下の向こう側から、走って来る第3王女と同世代ぐらいの女の子が走ってきた。
「シャーロット!久しぶりね!」
「これ、いきなり抱きつくのは止めい。後人目があるのじゃからその時ぐらい敬称をつけんとそなたの父に迷惑がかかるぞ」
「むう、そうね……そちらが話に聞いた探索者さん?」
「そうじゃ。それから何か掘り出し者を見つけたみたいじゃが?」
「あ、そうなのよ!……あれ?いつもそばにいるのに……どこへ行ったのかしら、護衛失格ね……?」
その少女は、さっき会った領主である父親と同じ髪色、面影もある顔つきだったが1つだけ異様に違う点があった。その少女の目は言うなればヘテロクロミア、左右で目の色が違う事だった。どちらの色も父親の色とは違ったが、まあそこは母親の色とか色々あるだろう。キャラ付けにしては珍しくタイプだが、そういう事もあるか。少女はキョロキョロと辺りを見回すが、その護衛らしい姿は見え……いや、あれか?向こう側の曲がり角からなんか見える。
若い男が半分体を出しながらこちらを見ている……何なんだあれ、この子が言っていた奴なのか?
「やっぱりね……」
「うん?」
「あ、そこにいたのねマモン!何をしてるの!?」
「え、いやあのお嬢、ちょっと待って……」
マモンって言ったよな、あの子。マジですかー、ここでそう出て来るかー。というかモモは気づいているなら事前に言うようにしてくれないだろうか。別に俺はネタバレとか平気なタイプだから変なサプライズ要素とか要らないデス。
うーん、これはどう対応すれば良いのか。駆け寄った少女と暫定悪魔のやり取りを見ているとそれなりに仲が良い様に見えるが、悪魔の方がなんとか賞ものの演技が出来るのなら色々と面倒だ……ショウさん、俺を全く笑ってない笑顔て見て来るのは止めてくれません?俺のせいじゃ無いし、ゲームぐらい色々騒動が起こったって良いでしょ別に。バレた場合、他プレイヤーとの摩擦やら関係やらが面倒になる可能性があるのは無視しておこうね。そういやゲームを始めた時は自慢してきてうざかったショウに意趣返しをしようと思っていたけど、こういうのじゃ無いんだよなあ。そんな事を考えているとモモが前に出て、男の頭を鷲掴みにした。
「やあ小僧。どこにいるかと思ったらこんな所にいるとはねぇ。また幼い子どもを追いかけているのかい?」
「ひ、ひぇ……あ、姐さん……何故ここに……」
「こっちは契約者と一緒だよ……!」
「え、本当だ」
こっちに視線を集めるんじゃない。というか、幼い子どもも追いかけているってまさかあいつロリコン?
何か場が混沌としてきたので、第3王女主導の元、さっきとは別の部屋で話をする事に。コトネさん、クルト、アゲハは面倒事から逃げようとするショウに気づかずついていってしまった。俺を1人にしないでくれ……!いや1人じゃないけど、凄い面倒な事になった。今この部屋にいるのは、第3王女、メイドさん、領主の娘のアリシア、マモン、モモ、俺である。もう何が何やら。そういえば俺以外NPCか、変な状況だなあ。
「さて、アリシアよ。その者について話してくれるだろうか?」
「はい、分かりました!私とマモンの出会いですね!」
「……大丈夫かのう」
最初から雲行きが怪しいなあ。あの子何か精神干渉でも受けているじゃないか?ロリコンなのは本当なのか……あ、モモが凄い顔になってる……とりあえず話を聞こう。
領主の娘……まあ内心はどう呼ぼうと関係無いから、アリシアで良いか。アリシアの話は、思っていたよりは落ち着いて、分かりやすく語られていった。
ある日、アリシアは庭に怪我をしている烏を見つけた。アリシアは優しい子の様で、その烏をこっそり拾って治療したのだそうだ。そこだけなら、良い話で終わるのだが、中身がなあ……さて、どうなるのだろうか。話は続き、その烏は順調に回復していったらしい。その後起こったのは今回のクエストというか、第3王女がここにきた用件の原因らしく、ある日屋敷に侵入した者がいて、アリシアを攫おうとしたらしい。領主側は完全に隙をつかれた様で、なんとか動いた兵士もいたらしいが、中々の手練だったらしく、止める事が出来なかったとか。そうして、いざ攫われそうになった時に颯爽(?)と現れ侵入者を撃退したのが実は烏に化けていたマモンだったらしい。
「自作自演じゃ無いだろうね?」
「ち、違いますよ。結構な怪我で死にそうだったんすよ!そもそもそういうやり方は趣味じゃありませんって」
……趣味じゃないって言っても、その言い方だと趣味のやり方でお近づきになりたいとも取れるのだけれどな。まあそういう感じでは無さそうなので良いが、若干ロリコンが入っているのは確実か。モモといい、ベルゼバブといい、コイツといい一癖あるのはデフォルトなのか。
「まあそれは知ってるから良いか。にしてもあんたが怪我するなんてどうしたんだい?ヘマするなんて珍しい、鈍ってるんじゃ無いだろうね?」
「まさかそんな……怪我は、あー……」
「別に良いだろう?ここにいるのは多少なりとも知ってる奴だし……お嬢ちゃんは別として?」
「う、そうなのか……気ぃ抜いてたらラミエルに出くわしたんすよ。まあ戦闘なんて面倒なんで、とりあえず逃げたんですけど何故か機嫌が悪かったらしくて1発もらっちゃって……逃げて、落ちた先がここだったんす」
「あー、なるほど、そりゃ災難だったねぇ、相性悪いくせに良く怪我で済んだね」
「まあ運良く逃げられたんで。後成長してない訳じゃ無いんすよ?」
「それもそうか」
わあ、字面だけだけど新キャラ。これで名前を知った天使は3人目か……?それにしても一応ガブリエルと同列なはずだから、生き残れるのは流石は七大悪魔と言ったところか。
「ふむ、ラミエルとはなんじゃ?」
「こっちの話を知っているならそれの対ぐらいは当然知っているだろう?」
「……なるほどそういう事かの。ならそれの詳しい事は良いかの、妾が聞いても役に立たん……というか、攫おうとした者達について聞かねばならんの」
まあマモンの件は終わった事だし、そもそもあんまりその事件自体は興味が無い。重要なのは第3王女の言った通り、その襲撃者の方だろう。と言っても、あまりその事件の後は進展は無いらしく、襲撃者もマモンが無効化したらしいが自死してしまったらしい。王女もマモンも詳しくは語らないが、アリシアが怪しい集団に狙われる理由はあるような感じだった。
「ふむ……ならば少し様子を見るしか無いの。マモンとやら本当にアリシアを守る気はあるんじゃろうな?」
「助けられた恩を仇で返す真似はしねぇよ」
「それなら良いが……今は良いが、言葉遣いは何とかした方が良いんじゃないかの?」
「それは大丈夫よ!何せ、お父さんに人前では喋るなと言わせる程だもの!」
それは自信たっぷりに言う事じゃ無いと思いますよー?何とも締まらない感じで話が終わったが、しばらくはこっちも落ち着けるかな。モモはマモンと話がある様で連れてった。肝心のアリシアの護衛はメイドさんが一時的に何とかするそうで、短い間なら問題無いらしい。クエストに関しては俺達はしばらくは多少自由に動けるそうだが、フィールドに出たり、遠くの町へ行く場合は一言言わないといけなくなった。まあ耐寒装備はあるし、この辺りのフィールドはレベル上げに丁度良い感じなので大丈夫だろう。




