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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第三章 更に先へ、騒動は予見不可
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第十二話 行きは良い良い


「さて、じゃあ出発じゃー!」


 馬車の上に乗り、高らかに声を上げた第3王女。すぐさまメイドさんに引き摺り下ろされて、馬車の中へと放り込まれた。


「な、何をするんじゃー!?」


「大人しくして下さい。お忍びというほどでは無いとはいえ、この馬車にした理由をお忘れですか?」


「む、むぅ」


 この前の雪山フィールド探索から1週間以上経った。今日は問題のクエスト当日である。運が良いのか、今は周りに人がいるが、プレイヤーは見かけない。そのおかげであまり目立たずに……まあ確実にNPCの目を引いているが、まあそこにはどうにでもなるの……かな?

 このクエストでは、クルトとアゲハもいるが、コトネさんと一緒に馬車の中にいる。第3王女の話し相手な感じかな。残る俺達3人は一応護衛依頼なので、外で馬車の周りを囲む感じだ。今はそうでもないだろうが、フィールドを進んで行ったり、町に近くなるとプレイヤーはいるだろうから目立つかと思ったが、ショウによると意外とこういう護衛クエストは多いらしいので特に目を引く事は無いらしい。護衛対象が王女なのは中々無いだろうけど。御者は誰がやるのかと思ったらメイドさんだった。あの人何でもできるなあ……4次職『殺王』といい、万能感のある感じといい経歴が不明だな……何故メイドなんだろうか?

 ちなみに馬車は貴族が使っていそうな質の良い感じがするが、イメージである様な装飾がされていたり、紋章が入っていたりする訳ではなく、言ってしまえば王族が使うには地味な印象だ。まあ公式なのかそうじゃ無いのかよく分からない感じだから質素にしてあるのかな。

 耐寒装備は問題無く仕上がっており、後は大した準備は必要無い。まあ耐寒装備は町に近づいてから必要になるし、最悪町の中なら寒さで死ぬ事は無い……格好によっては肌寒さが永遠に続くので町にいるプレイヤーは耐寒装備をつけているのがほとんどだが。

 第3王女が馬車の上に乗って何やかんやはあったが、他には特に問題は無く出発することができた。護衛クエストなので道中何かあったりするのだろうか……テンプレみたいに盗賊でも出るのだろうか……そういやチンピラは倒したことあるけど、盗賊的な敵モブって見たことないな。






「何にも起こらねぇな」


「まあ平和で良いけどね……割と護衛クエストってこんな感じみたいだよ?」


「え、そうなのか……そりゃ毎回騒動が起きてたらやってらんないだろうけど」


「モンスターはもちろん出るけど……馬車が通るルートだから出現率は低いからね」


 とりあえず半分ぐらいの距離を進んだが、今話した通り大した事は起こっていない。途中モンスターが出てきたが、普通に生息しているモンスターだったので、3次職になりレベルも上がった俺なら1人で余裕で倒せる。モンスターの気配は魔法で感知できるモモと何故かそれより先に気づくメイドさんのおかげで馬車に近づく前に駆けつけ倒す事が出来ている。いや、本当に何者なんだ。4次職の『殺王』とはいえあんなに広範囲の気配察知スキルは無いみたいだし(モモ調べ)、まさか汎用スキル……?特殊条件の物もあるみたいだし無くもないはず……いやまさかのエクストラスキルという可能性もあるがそれだと知った所でなあ……聞けば1発だろうが、聞く勇気が無い。冷たい雰囲気で怖い訳では無いのだが、何となく話しかけづらいオーラが出ている様な気がするんだよな。

 馬車の中だが、話に花を咲かしている様で時折笑い声が聞こえて来る。まあ1番よく聞こえてくるのは王女様の笑い声なんだが……移動を楽しめているならいいと思う。本当にこのゲームのNPCは生き生きとしているので面白い。最近のAIは進化しているとニュースをよく聞くが、ここまでとはなあ。世の中の技術者は凄いものだ。ありがたくその成果を享受する事にしよう。

 結局、大した事が起こる事も無く、ズィーベルトンに着いた。本当に何事も無く着いたなあ。このクエストは王女が関わっているがそういうものなのかな……いや、道中の護衛までじゃなくてずっとでは無いが王都に帰るまでこのクエストは継続なので何かが起きるかもしれない……どうせなら何かが起きて欲しいのと、王女の護衛している時点で特殊な事何だからこのまま何も起きて欲しくないのが半々だ。ゲームだけどのんびりするのも悪くないと思うのだよ。

 町に入ったが、馬車は降りずにそのままこの町の領主の屋敷まで行くらしい。まあ王女なんだから1番偉い人がもてなすのは当然だな。俺達も護衛扱いなのでもちろん着いて行く事に。着いた屋敷は程々に大きく、俺達の屋敷より1……1.5回りほど大きかった。はー、でかい。流石領主の家かー。普通入れなのだから邪魔にならない程度に目に焼き付けておこう。


「では皆様は私達の後ろに……基本的に話しかけられる事はありませんのでどうぞ気楽に」


「あ、どうも」


 着いて早速、第3王女は領主に挨拶に行くそうだ。護衛の俺達も面通しみたいな事をしなくてはいけないので、後ろについて行く事になった。まあメイドさんが言うには、俺達はただ後ろにいれば良いみたいなのでありがたい。偉い人に挨拶とかしたくねー……王女は偉くないのかって?これに緊張する事は無いだろうなあ。

 王女達について行き、応接室だろう部屋に通された。まあ護衛なので俺達の席は無く、王女の後ろ側の部屋の端に立っている。


「だ、大丈夫ですよね?何かおかしな所無いですよね?」


「心配しすぎよ、落ち着きなさい」


 アゲハはアゲハで声がうわずっているけどな。俺達は探索者なので余程おかしな格好をしていない限りそんなものだろうとNPCに思われているので大丈夫なはず。クルトの格好は完全に鍛治師と言った格好なので変も何もないだろう。まあ話しかけてくる事は無いと言っていたし、余程変な体勢じゃなきゃ特に問題は起きないはずだろう。


「あー、早く終わらないかねぇ」


「いや、口に出すなよ」


「こういう場は嫌いなんだよ」


「でしょうね。ほら、我慢我慢」


 別の意味で不安な人が出てきたよ。確かにこういうのはモモは苦手だろうな……顔見せが無けりゃてきとうに外に出てもらってもよかったんだが、一応いてもらわないといざという時に面倒だからなあ。何かそれにしても機嫌が悪そうだが何かあるのだろうか?面倒臭そうなモモを宥めていると、誰かが歩いてくる音が聞こえた。ようやくかな?


「やあ、シャーロット王女。この度はわざわざ来ていただきありがとう。アリシアも喜ぶよ」


「なに、ズィーベルトン領主の頼みなら妾が動くのは当たり前じゃ。アリシアに会えるのは妾も嬉しいしの。それで動きはどうなのじゃ?」


「それは……」


 ん?俺達の方を見て……あ、信用できるとかかな?内容的に色々あるみたいだからなあ。


「ああ、この者達は問題無い。妾も1番上の姉上も信頼しているからの」


「そうですか。それなら……今は派手な動きはありませんが、娘の側に頼れる者がついておるのでひとまずは安心ですかね」


「ほう、卿が言うならそうなのだろうが……良くいたの、まさか探索者か?」


「いえ。というか経歴不明なんですよね、娘がいつの間にか連れてきまして……アハハ」


「わ、笑い事かの?本当に大丈夫なのか……いや、アリシアが連れてきたなら一応大丈夫か」


「そうですね。では、よろしくお願いします」


「もちろんじゃ」


 そう言ってこの場は解散となった。今は全く話が見えないが、詳しい説明が早めにあると嬉しいのだが。というか確実に何かある雰囲気なんだよなあ。その領主の娘が話の中心だろうが、何が何やら。どうせそのうち分かるか。

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