第十一話 雪山のお宿?
「ああ、何も知らずにこちら側に来てしまったのですか。こちらは地形のせいか他の所よりも雪がとても強くなってしまうのですよ」
猛吹雪の中、灯りを見つけた俺たちはその方向へ向かった所、辿り着いたのは雪山にポツンと立っていた。民家だった。中には和服を着た白髪美人、怪しい事この上ないが、今の所急に訪ねて来た俺達にの良くしてくれている。というか、モモがあの偽シズエさんに出会った時と同じ表情している時点で何かあるんだよなあ……騒動感知機ィ。
「とにかくこちらに上がって火に当たりなさいな。大した事は出来ませんが場所を提供するぐらいはできますので」
モモの様子を窺うが、特に何も言わないので、大人しく上がらせてもらい、火に当たる。中は完全に日本家屋で、落ち着いた雰囲気。凍死しそうになっていたこっちからするととても有難いが、どうするべきかなあ。あー、それにしても暖かいわー。囲炉裏ってこんなに暖かいのか……社会科見学で行った史料館ぐらいでしか見た事無いし、実際に火に当たるのは初めてだ。まあゲームだけど、そこは些末な問題だろう。
「はあ、暖かいです……」
「まさしく渡に船……使い方あってたっけか」
「ど、どうでしっけ……?」
「ほら、お茶をどうぞ。粗茶ですが、暖まるはずです」
「あ、どうも」
「ありがとうございます」
お茶を出されたが、思わずコトネさんと目を合わせる。もてなしてくれている人を前に疑ってかかっているのはどうかと思うが、前例があるんだよなあ。飲んでいいのかな、これ。
「飲んでいいと思うよ、マスター。敵意も邪気もなさそうだから」
「お、おう?」
ここでやっとモモが口を開いた。というか、家主の前で堂々と言うのは大丈夫なのか?敵意が無いらしいが、今の状況だと気分を害されたりすると面倒なんだが。
「こんな所で天賦獣が何をしてるんだい?人の真似事なんかして。ここの主という訳でも無さそうだけど」
「「え!?」」
「あら、あら。流石は古を生きる大悪魔。私の正体もお手の物、ですか。これについては特に意味はありませんよ?長い事していれば特に苦という事もありませんし。それにここに主らしい者はおりませんし、貴方達に害をなす気もさらさらありませんよ」
「まあそうだろうね。あんたならこんなフリをする必要は無いだろうから」
「え、ちょ、天賦獣……エクストラモンスターってマジか?」
うーわ、モモがシズエさんを攫ってきた時以上な衝撃だわ。モモが変な冗談を言うはずが無いから本当の事だろうし、というかこの人(?)もバレたみたいな事言ってるしどうなのだろうか?エクストラモンスターならアナウンスが流れるはずだが、相手に戦う意思が無いからか隠蔽しているせいなのか流れる気配は無い。それにしてもエクストラモンスターか……えー、ちょっと対応に困るわー。
「そうさあ、多分狐か何かだろ?」
「おや、当たりです。流石ですね〜」
「あ、あの、本当にエクストラモンスターなんですか?人にしか見えないですけど……」
「エク……ああ今はそう言ったりするのでしたか、そうですよ。まあ多少長く生きていればこのぐらいはいくらでも。後は私の性質もありますけど」
「まあこの前のアレと同じ様なもんさ。そういうのはあんたらの十八番だろう?」
目の前の、まあ人じゃ無いみたいだが、人はこの前のアレというのが気になった様で詳しい内容を聞いてきた。春イベの事をかいつまんで話した。何かどんどん空気が冷たく……いや本当に寒くなってるわ、あの人のせい?内容が内容だからなあ、思う所は色々とあるのかな。
「……そうですか、まあそういうのがいるのは承知の上ですが、それと私を同じ様だとおっしゃられるのは……いささか気分が悪いですね」
「あっ、火が」
いやもう空気が極寒。何故か寒さで火が消えるし。外ほどじゃ無いがもう空気が冷たーい……流石にアレと一緒にされのは嫌だろうなあ。モモは多分悪気は無かったみたいで、ちょっと失敗したという表情になっていた。
「あー、悪かった。そういうつもりじゃなかったんだけどね。謝るよ」
「……いえいえ、こちらも少し感情的になりすぎました。そんなあからさまに質の悪い話は久しぶりに聞きましたので……火が消えてしまいましたね」
「あ、私がつけるよ。詫びにもならんだろうけど」
「いえ、ありがとうございます」
「不躾ですけど、今のが、えっと……あなたの能力何ですか?」
「ああ、自己紹介がまだでしたね。シロネ、と申します。そうですね、まあ一端と言った所でしょうか」
「ご丁寧にありがとうございます……あの質問ばかりで申し訳ないのですが、何故こんな所に?」
「いえいえ。まあ私はこんな身ですから、たまに人の世に紛れている者も見かけますが、中々紛れづらのです。まあたまに訪れたりしますが、多少足りない物を揃える程度で」
「そうなんですか……」
へえ、エクストラモンスターって言っても色々とあるんだな。エクストラモンスターって聞くとゲームの触れ込みだとボーナスキャラみたいな印象だったけど【空操馬】みたいに色々と背景が作り込まれたりしていた。シロネさんみたいにただ生きているだけのエクストラモンスターもいるんだな。
「あ、ちなみにこの吹雪は本当に私の力ではありませんよ。私がここを見つけた時からこうでしたので」
「そうなのか……あれ、そういえばモモを悪魔だと分かったのは良いとして、古だかなんだかはどうして分かったんだ?」
「あ、そういやそうだねぇ」
人に害をなす、まあモモが必ずしも人に害をなさない訳じゃ無いが、悪魔は一応人に化けられるはず。古って事はモモがそういうものだと分かっているみたいだからどういう原理なんだろうか。
「え、ああそれは昔見た事があるからですよ。まあその時は私はただの子狐でしたが」
「昔…………ああ、あの時か。へぇあの中に紛れてたんだ。まあ色々あったからねぇ」
「昔って?」
「ん?んー……前の文明の時に色々あってねぇ、派手に動いた時があったのさ」
「へ、へえ」
何かさらっと色々話したが、突然言われたので消化できません。ま、まあ世界観設定はあまり気にしない様にしとこう。このゲーム設定はきっちり練られているみたいだから下手に考察すると面倒臭い。そもそも重要NPCに関わっているだけなんだから考察は専門外だなあ。
「あ、外は吹雪が少し弱くなって来た様ですよ。これなら多分戻れるはずでしょう」
それを聞いた、コトネさんが外の様子を窺うと確かに弱まった様だった。帰ることが出来なくなりここにたどり着いたので、ここに留まる理由も無くなった。
「それじゃあお邪魔しました」
「いえ、久しぶりに変わった事に出会えたので。できれば私の事はご内密に」
「少しの間でも留まらせてもらったので恩を仇で返す様な真似はしないです」
「それならありがたいです。あ、そちらの方にまっすぐ行くと速いかと」
「あ、そうなんですか。ありがとうございます」
「いえいえ、ではお達者で」
シロネさんに見送られ、留まられせてもらった民家を後にする。多少弱くなっただけで、吹雪は吹雪なので少し歩くとすぐに見えなくなった。
「まあ言わないけど……定住しているといつか見つかりそうだけどな」
「それはないだろうねぇ」
「え?」
「偶然迷い込んだから見つけられたんだろうけど、多分狙って行くと永遠に辿り着かないはずさ。シロネとやらの能力だろうねぇ行く時は分からなかったけど、離れる時にほんの少し違和感があった。まあ感じられただけで対策は無理だろうけど」
「ああ、そういう感じか。じゃあ、問題無いか」
「そうだろうね」
「あ、やっと視界が開けてきましたよ!あれ町ですよね」
「あー戻ってこれた。何か文字通り狐に化かされた感じだな……」
「ま、意外と訪ねれば会えるかもしれないよ?寒さ対策はしっかりしておかないと今度こそ凍死だろうけど」
「……それはごめんだ」




