第七話 サブジョブあれこれ
「あ、コウさんも3次職になってたんですね!」
「おう、クルトも順調みたいだな」
「はい、3次職の『匠』になったおかげで作れる武器の幅も広がりましたし、サブジョブに『錬金家』をとったのでできる事が本当に増えました」
「ああ、レイヴンさんと同じ構成にしたのか」
「ちょっとアドバイスも貰ったので……少しズルの様な気もしますけど」
「いやまあ、そのぐらいは別に良いんじゃないか?それにしてもサブジョブか、俺はどうしようかなあ……」
3次職になったおかげで他の系統の2次職をサブジョブに取るメリットが生まれたが、どうしようか。何があるぐらいは調べたがジョブスキルまでは調べて無いんだよな。
「戦闘職って、ジョブ次第で結構シビアみたいですからね。生産職は基本そのまんまの意味で副業扱いで通りますけど」
「まあ大体は絞れるけど、後で良いか……あれ、コトネさん」
「こんにちは……お、お久しぶりです?」
「いや学校で会ってますよね?」
「何というかこっちで会うのは勝手が思ったより違ったというか……」
まあ分からないでもないが……コトネさんはただログインしただけで特に今はやる事も無いそうで話に加わってきた。特に目的の無い駄弁りなので、何か時間の無駄な気がするが、ゲームをしている時点で良い意味で時間を無駄にしているので別に問題は無いだろう。
「そういえばコトネさんも3次職になったんですよね?」
「あっ、はい、『癒術師』になりました」
「じゃあ完全にヒーラー職な感じになったんですか」
「そうですね、モモさんが回復以外の魔法が使えるので、それを補える方がいいと思いまして」
「なるほど……」
なんか完全に俺達とパーティ固定みたいなことになっているが……それを指摘するのは野暮かな。まあこちらとしてもこのゲームをしている限り縁が無くなる事は無いはずなのでヒーラーとして力をつけてくれるのはありがたいか。
「コトネさんって、サブジョブは何にしました?」
「あ……えっと……」
「あれ、何か変な事言ったか……?」
「いえ、言ってないと思いますけど」
「その……サブジョブは『薬士』にしようと、というかしたんですけど……やっぱり魔術士系した方が良かったですか?」
「生産職……いや自分の事ですし、そもそもゲームなんで自由でいいと思いますけど……ちなみに理由は……?」
「えっと、やっぱり回復が難点なので、コウさん達も割とソロで動く事が多いので良いポーションを作れたら楽になるかなと」
何この人、良い人。ゲームなんだから、自由に動いて構わないのに……まさかいない時のサポートとかを考えているとは。中学でも色々満遍なくやっていたみたいだし、サブジョブに生産職をとっても両立はできるだろう。
「『薬士』ってどこまで出来たっけ?」
「最初作れるポーションは錬金術師系統も出来ますけど、種類は断然『薬士』ですね。どっちかというと錬金術師はポーションみたいな一時的な物よりアクセサリーとかの恒久的な物を扱うのが多いので。バフポーションとか、状態異常回復の物とか、素材があって作れるなら買わずに済みますね」
「なるほど役割としてもクルトと被らないか。まあ被っても気にしないけど、良く関わるなら住み分けできていた方が良いか……?」
「そうですね、薬士の人がいるなら、錬金術関係で協力できる事もあるので、コトネさんが就いてくれたのはありがたいですね」
「そうだな、ポーションとかの自由が利きやすくなるなら確かに嬉しい」
「ふぅ、そう言って貰えると良かったです。これで良いのか大分悩んだので……」
「ゲームなので、自分のやりたい事をすれば良いと思いますけど……一応聞きますけど無理してませんよね?」
「いっ、いえいえ!裏方大好きです!はい!」
「そ、そうですか」
まあ本当に無理はしてないだろうから大丈夫だろう。そういうのはショウに相談しているはずだし、レベル上げを付き合ってくれたアポロさんとかとも話しているだろうから、そこら辺は問題無いか。
なるほど生産職か、俺も……いや、意味無いわ。流石に後衛の魔法職ならともかく、前線で物理で闘う奴がサブジョブ生産職は無いわ。『錬金術師』や『薬士』だと、生産にがっつりMPを使うらしいから、ジョブ関係的にも合っているだろう。あー、サブジョブどうしよう、早目に調べないと。手っ取り早くショウに聞くか……ワンチャン、モモに聞けば意外と予想外の良い答えが出てくるかもしれないが、悩みもせずに最初に聞きに行くのは駄目な気がする。なんとなくアイツはそういうのは嫌いな気がするんだよな……【空走場】の時も俺がそれなりに検証してから頼りにしたし。まあジョブ構成に関しては、偉大なるWiki様がいるからそれに頼るとしよう。幸い、エクストラスキルもそこまでピーキーな性能では無いので、基本スタイルは十分に応用できるはず。刀を扱うプレイヤーなんて大勢いるはずだし、というかアポロさんもその1人だし……あの人サブジョブ何なんだろうな、暇があったら聞いてみようか。
「コトネさんが『薬士』になるんだったら、生産設備も必要になりますね」
「ああ、確かにそうだな。部屋は……まあ空きはあるし問題無いか。コトネさんの部屋の隣って空いていますよね?」
「あ、はい空いています。お世話になります」
「いや、ここ半分コトネさん名義でもあるので別にそんな……いや豪邸で良かった」
「そうですね、こんな拠点持てるプレイヤーなんて限られますからね。大規模クランでも無いのに」
「本当だな……ああ、コトネさんの設備の話だ。どのくらいかかるんだろうか」
「それは調べた所手持ちで問題無く払えるみたいなので…………」
「……どうしました?」
「あ、あのもしよろしければ、あっ、お暇であればその、一緒に買いに行くのを手伝ってもらっても構わないでしょうか……?」
「それは別に良いですけど……専門外すぎて荷物持ちぐらいにしかならないですよ?あ、クルトとかも」
「あ、僕はちょっと依頼があって。それに設備は2次職用の物なら特に大差無いと思いますよ。PCAの方に行けば間違い無いと思います」
「そうか?ならコトネさんが良ければ良いですけど、荷物持ちって言っても物理的に運ぶわけじゃ無いですし」
「いや!一緒に来て貰えるだけでもありがたいです!よろしくお願いします!」
「ハ、ハイ」
別にコミュ障という訳でも無し、というかコトネさんはコミュ力高めの人だったと思うから、買いに行くぐらいだったらいくらゲームの中で勝手が違うと言っても大丈夫だと思うけどなあ。意外とそうでも無いのだろうか。2人で買い物に行くなんて、ゲームの中とはいえ中学の時のクラスメイトにバレたら面倒なことになりそうだ。いや、これそういうレベルの話じゃ無いから気にしすぎか。
元々用事は無いので、コトネさんの付き添いでPCAの薬師部門の方へ。着くと、隣の建物がそういう販売所みたいな所になっていた。設備のお値段は高かったが、今の俺やコトネさんの懐では待った問題が無い。2次職用ともなると更にそこまで価格が張らないので、今のところ支障は無い。3次職用以降はなってから揃えれば良いので、早々と後にした。後は、部屋に設備を設置するのを手伝ったぐらいか。まあゲームとはいえ力仕事は俺が手伝った方が良かったか。
「付き合っていただいてありがとうございました」
「いやいや、このぐらいなら別に。これで大丈夫そうですかね」
「はい、多分。なるべく早くお役に立てる様頑張ります!」
「ゆっくりで良いと思いますよ」




