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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第三章 更に先へ、騒動は予見不可
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第三話 練習過程2


「じゃあやってみるかあ」


「お、頑張れ〜」


 やる気が復活したところで立ち上がり、【空走場(アハルテケ)】を使用する。1歩目の足場を作るのはもう慣れたもので何秒も必要無く作ることができた。さて、できた足場に足を置き、ここから魔力を流すという工程に入る。魔力操作はゆっくりだができるので、このまま足場の方へ……どうやるの?


「足場に魔力を流すってどうやるんだ?」


「え、体を動かすのと同じ感じで……できないかい?」


「うーん……こうか?」


「いや全然流れてないけど」


「辛辣……まあ長い目でやってみるか」


 そのまま力加減を変えてみたりと思考錯誤を繰り返す。うーん、靴越しとはいえ直接触れているわけだが、自分の体じゃないため難易度が高いような。自分の体に流れている魔力というかMPは分かるため足場に乗せている足の方にやって、感覚としてはぐにぐにと押し付けているが流れる気配が無い。ここでまた壁が。俺は一体何をしているのだろうか、1つの事に拘ろうとすると、そのために必要な事ができ、それをまた拘ろうとすると更に必要な事が増えてどんどん最初の事から離れているような。やった事あるゲームの1つで、同じ様な事があったっけ。あれ、最終的に最初の物が必要になって無限ループになったんだよなあ……うっ、頭が。何で欲しい物を手に入れるのに万全を期そうとしたら回り回って欲しい物が必要になるのだか。流石に今回はそんな事は無いと信じたい……変な方向に思考が進んでいたが、相変わらず足場に魔力を流せる気がしない。


「これ本当に流せるのか?」


「足を乗せてるときに微量の魔力が流れている時点で可能なはずさ。まあマスターが初心者なのもあるだろうけど、天賦獣のスキルなせいかねぇ……ちょっと足退けてみてくれないかい?ああ、足場はそのままで」


「おう」


 足を退けると、モモが自分の足を作った足場に乗せた。散々俺が乗せていたので、どこにあるかは大丈夫か。さて、何をするのやら……ん?


「うわ!」


「あっちゃあ、こうなるのかい……」


 モモが足を乗せた途端、足場が爆発した。爆発というか破裂と言うべきか、物凄く大きな音を立て足場は無くなった。幸い、俺も足を乗せていたモモも怪我は無かった。破裂の衝撃か、多少風は起きたが微々たるものだった。


「大丈夫か?」


「ああ、音だけだったねぇ……いやー、スキル使用者じゃない奴の魔力を流したらどうなるのかと思ったけどこうなるのか。参考になるかと思ったけど上手くいかないねぇ」


「物凄い音でしたけど大丈夫ですか!?」


「え?ああ、大丈夫大丈夫」


 音が聞こえたのだろう、クルトやアゲハ、屋敷にいたショウも駆けつけてきた。スキル検証で起こった事で特に被害も無かった事が分かると、それぞれ戻っていった。あれだけ音が大きければ何が起きたか気になるか。気をつけたいと思うが、どうなるか分からないんだよなあ。


「一応聞くけど見てたかい?」


「見てたよ……全く参考にならなかったけど」


「だよねぇ、そういや魔力感知持ってなかったねぇ……とる?」


「とらん、気長にやるわ。効果があるか分からんけどな」


「まあそうだねぇ」


 さて、気を取り直して、流せるか試……効果時間切れてクールタイムに入ったわ。丁度良いや休憩しよう。部屋に戻り、ベッドに横になる。こういう時ベッドの質感のリアルさはありがたい。


「あ"ーーーー」


 いやー、ベッドは適当に買った物だけど高めのやつ買ってよかったわー。あー、癒されるー。このまま寝ようかな……いや、怠惰はいけない、少し休んだらまたやろう。具体的には30分ぐらい。


 はい、30分。短い……何もせずにぐだぐだしてただけなのにあっという間だった……俺はゲームの中で何をやっているのか。現実逃避はそこまでにして続きをしよう、よしやる気出した。


「おや、またやるのかい?」


「ああ……ずっとここにいたのか?」


「今日はやりたい事も無いからねぇ、人間が成長するのを見るのも悪くない……堕ちていくのも一興だけど」


「なんか悪魔っぽいな」


「いや悪魔だけど。ほらとにかく始めなよ」


「おう、【空走場(アハルテケ)】……よし」


 エクストラスキルを発動し、何度目かも分からない足場をつくる。いやあ慣れたものだな、ここで満足してちゃ駄目なんだけど。さて、足を乗せて自分の魔力を操作する。多少使っているのでレベルが1なら上がりそうなものだが、ジョブのせいか魔力操作のスキルが上がる気配は無い。経験値ゲージ的なものは無いのでどのくらい習熟しているかは分からないが、しょうがない。モモは魔法については一家言持っているのでモモがレベル1でも足りるというならそこら辺は問題ではないだろう。それにしても、どうしたらいいのか。こういうのは、対象を自分の体の一部と考えるみたいなシチュエーションみたいなのがたまにあるが、流石に目に見えない上に空気なので実体が分かりづらいとなると体の一部もくそもない。


「なんかコツとかないか?大した時間もかけてないのに言うのもアレだと思うが、このままだと一向に進まない気がするぞ」


「うーん……そう言われてもねぇ。魔法に関しては生まれた時からできるからねぇ……コツねぇ。やっぱり魔力感知取得してみないかい?その方が進むと思うよ?」


「えぇ、やっぱりそうなるのか…………戦闘でも多少役に立つよな?」


「それはもちろん!それらほどレベルが上がらなくてもあるだけ役に立つのは無いはずだよ。まあ同じぐらい、ならあるけど」


「……ええいこの際だ。遠回りでも色々取得してやらァ!」


「その息だよー」


「で、どうやればいいんだ?」


「えっと、まずはねぇ……スクロールを買ってくれば?」


「……はい?」


「操作と違って感知は受動だからねぇ、練度による差はあれど、これに個性も何も無いさ」


「あー、そうなのね」


「【魔力操作】の時と同じ要領でできなかないけど……やる?」


「やらん、買ってくる!」


 勢いこんだ途端にスクロールで十分と言われ、出鼻が挫かれた。まあ、楽ができるならできるに越した事は無い。早速買いに行こう。【魔力感知】のスクロール自体は大したレア度では無く、値段は全てのプレイヤーに需要のある【鑑定】よりもお手頃だった。それよりも、明らかに見た目が近接職な俺が【魔力感知】なんてスキルを求める事に怪しげな視線を向ける店員の方がきつかった。NPCなのに2度聞かれたからね、仕草がリアルだなあ……それはそれとしてスクロールは手に入れた。さーて、取得取得……よし。


「おーい、取得してきたぞー」


「早かったねぇ、早速使ってみれば?」


「おう……何も感じないけど」


「そりゃ魔力を感知するものだからねぇ、今は何も見えないだろうね」


「事前説明少なすぎない?なんかオーラ的な感じで魔力が見えるのかと」


「あはは、そんなレベルで魔力が漏れてたらすぐに尽きるじゃないか。魔法を使う直前とか魔力の残滓とか、わざと漏らしていない限り基本見えないねぇ」


「へぇ、そうなのか。魔法を直前ってどんな魔法ぐらいかは分かるのか?」


「んー、まあ分からなくもないけど慣れが大半だねぇ。それは本当に時間がかかるから、いつか時間があったらにしようか。その【空走場(アハルテケ)】だっけ?そん時の魔力は見えるはずだから今はそれで十分じゃないか」


「まあ元々の目的はそうだから詳しい仕様はいいか。とりあえず【空走場(アハルテケ)】……おお、確かに見えるわ、薄らだけど」


 エクストラスキルを使用し、足場を作成、足を乗せてみると確かに足場に魔力が流れているのが見えた。魔力が流れているおかげで足場の輪郭もなんとなくわかる……まだ結構歪だな、はっきりイメージした方が更に維持が簡単になるのだろうか。さて、最初の主旨である足場に魔力を流したらどうなるのかを試そうか。まあまだ流せるのか分からないけど。

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