第三十話 残滓は還る
『Exモンスター 【☆2空操馬 アハルテケ】が討伐されました』
『MVPはplayer name:コウです』
(『コウにExスキル 【空走場】が贈呈されます』)
「終わったーー!」
「あーあ、やっぱりコウか〜。まあほとんどダメージ与えたのコウだからなあ……しょうがないか」
「お疲れ様です、あとMVPおめでとうございます!」
「あー、ありがとう」
「おやマスターが獲得したのかい、まあ順当か」
今回はエクストラモンスターとの戦いはパーティだったが与ダメの明らかな差で俺がMVPとなった。うまく追い込んでくれたショウやモモも活躍したと思うが、与えたダメージの割合がやっぱり大きかったのだろう。コトネさんは……まあ回復役としてとても貢献してくれたが、MVPは流石に無理だよね。ああそうだ獲得したエクストラスキルを確認しよう。ステータスステータス。
Name:コウ
Level:51
Main job:武士
Sub job:剣士
HP(体力):10000
MP(魔力):500
SP(技力):1010
STR(筋力):950(1016)
VIT(耐久力):600(+760)
AGI(敏捷):1510(1706)
DEX(器用):980(989)
INT(知力):100
LUC(幸運):150
スキル
ジョブ:【抜刀】【朧流し】
汎用:【鑑定Lv.5】【採集Lv.4】
Exスキル
【貫牙剣】【空走場】
武器:黒刀:豪
所持金:52412227G
称号:[Exモンスター討伐者][標準探索者][邂逅者][大罪契約者(色欲)][第3王女に目をつけられています][春イベントシナリオクリア]
1つレベルが上がっていたので全てSPに振った。これでエクストラスキルが2つになったのでこれからはSPの消費が激しくなるのでなるべく余裕を持たせるようにしたい。今回の戦闘でSPが限界だったのでこれからは少し振る比率を上げていこうかな。さて、エクストラスキルの内容はどんな感じだろうか。
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【空走場】
消費SP:100
効果:発動時300秒間「空歩」状態を付与。「空歩」状態の時使用者が認識し、空気が存在する地点を足場とすることが可能。
クールタイム:効果が終了してから100秒
それは幸せだった。それが持つ不思議な力を目にしてもただの馬として扱ってくれる良き主人がいたからだ。だから主人が危機に陥った時命を懸け守ろうとした。しかしそれは不思議な力を持つだけの馬だった。死にきれなかった。もう1人の主人についていく道もあったが、意味は無くとも、この場所を荒らされたくなかった。強い意志は残り、場所を荒らす獣を殺し、いつしかそれの不思議な力は敵を屠る力となった。
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……エクストラモンスターとなった経緯が物悲しいなあ。こうして見るに言葉は通じずとも家族だったのだろう。お婆さんについていっても後悔が残るのは分かっていたのだろう。俺達に倒されるのが最善だったのかは分からないが。効果の方は見た感じ結構便利そうだった。防御系か加速系かと思ったが、空を駆ける方だった。空気が存在する地点というのは分かるので水中でも自在に動けるというのは無理か。それでも5分間立体起動ができるようになったのは大きい。これで戦闘の幅が広がったなあ。一応一緒に戦ったのでショウ達にスキル内容を見せる。スキル効果も晒すことになるが、まあ、このメンバーだったら大した損になることはないだろう。モモを除いて何か空気がしんみりしてしまった。モモは結構長く生きている設定なので、まあそういうこともあるだろうと言った感じだった。悪魔だし、そこら辺は感傷は薄く、似たような話は慣れているのだろう。
「何か……悲しいですね」
「僕達殺した張本人だけどね」
「いや空気読めよ」
「あはは……あ、そうだエクストラスキル使ってみてよ。どんな感じなの?」
「無理無理、SP空なんだけど」
「え、あー……残念。まあいいや今度見せてよ」
「今度な……少し休憩したら村に行くか?」
「それがいいんじゃないかい?あー、疲れたこんなに魔力使ったのはいつぶりだろうねぇ……」
「ああ、モモもお疲れさん」
10分ほど休憩して村へと向かう。HPは7割ぐらいにしておけば事故で死ぬこともないし、MPもまあ何とかなる。SPは自然回復を待つしかないのでしょうがないが、これで村へ行く途中に特に騒動も無いだろう。もちろんフラグが立ったということもなく無事に村に着いた。
「もうお婆さんのところへ直行で良いよね?」
「他に用事も、というか優先することないだろ」
「一応だよ一応」
……確認は必要か、答えは分かりきっているけどな。気を取り直してお婆さんの家へと向かう。何回か来たこともあり道に迷うことなく着いた。特に出かけているということもなく、お婆さんは訪ねてきた俺達に気づきいつもの所へと通してくれた。いつものごとくお茶を出してくれたので、こちらもアハルテケの場所に行く前に買った菓子などを出した。このように報告に行くのは分かっていたので、いつもただで出してくれるから1回ぐらいはというわけである。話はコトネさんをメインに順番に語っていった。お婆さんはこちらが話している間はずっと黙っていたが、話終わるとゆっくりと口を開いた。
「……そうかい、あの子は逝ったかい」
「はい、多分旦那さんの死んだ所で……」
「……とても懐いていたからね……まあ還るべき所へ行ったなら良いさ。これで肩の荷が1つ下がったよ、ありがとうね」
「いえいえ、こちらも思わぬ収穫のようなものがあったので……」
「ああ、何だっけ、天賦獣だっけ?まさかあの子がそんなものになっているとはねぇ……どうりであんなに強くなっている訳だ。初めて見たよ」
「まあ普通なら出会うはずもない上に遭遇したら基本死ぬからねぇ、随分と珍しい例だよこれは」
「そりゃ普通に生きていればそんなもんか」
「そうだそうだちゃんと頼んだことをこなしてくれたんだ、報酬を払わないとね。ちょっと待っとくれ」
「あ、はい」
ちょっと待つと人数分袋を持ってきた。この前と違って結構な戦闘もあったので今回はちゃんと報酬を貰う……まあ仮に断っても前みたいに無理矢理渡されそうだが。
「はい、報酬。少なくて悪いね、あの子がそんなものになっているとは思わなくて」
「いや十分じゃないか、これ」
「そうだね、討伐の難易度を考えても……割が良いし、そもエクストラモンスターの討伐なんてこっちが金を積む事態だし」
「そうなのかい?これで足りてるのならこっちもありがたいけど……?」
無事に報酬も受け取り、クエストはクリアとなった。お婆さんとちょっと雑談をし、そろそろ昼飯の時間なので帰ることになった。モモは王都に着いたときに市場へと出かけていった。コトネさんもついていったので今はショウと2人で屋敷へ帰る最中である。
「これで春イベントは終わりかな……」
「お婆さんの件は……一応関係があるから関連事項か。主軸は御神木の件だろうからもう終わりだと思うよ」
「イベントって基本季節イベだけだっけ?」
「あー、新年祭があったけどそれはまあ無い方がおかしいし……ああ、武闘会があったっけ。まあけど何があるかは予想できないよね」
「そりゃそうか、じゃあとりあえず次は夏イベか。海とかだろうなあ……水泳とかのスキルってあったっけ?」
「どうだったっけな、水中呼吸とかの魔法はあったけどあんまり関わり無かったからなあ」
「午後にでもモモに聞いてみるか。スキルはWikiで調べりゃいいし。けどとりあえずレベル上げだな……ああ就職条件満たさないとな、やることあるな」
「まあ頑張ってね〜。条件とかはプレイヤーで協力できることは少ないし」
「へいへい、何とか頑張るかあ」
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