表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第二章 春だ!桜だ!春寒料峭。
55/289

第二十八話 守るは懐旧 四


「『バーンバースト』」


「熱っ!」


「悪いけど我慢しなよマスター」


 戦闘が始まってから数十分、モモの魔法による邪魔とショウの防御により大した損害は出ていないが、こちらもアハルテケに有効打を与えられていない。エクストラスキルを何回か使ってはいるが、周りに展開している風の防御に阻まれかすり傷程度しかつけることができていない。風の防御自体は判定が効くのかエクストラスキルで切ることはできたが、相手は実体らしい実体が無い風。すぐに元に戻り、その風によって俺の体が阻まれるため勢いをつけたとしても更に1歩踏み込むことが出来なかった。

 今はモモが派手な魔法で牽制してくれているが、一進一退。互角と言いたいところだが、相手はかすり傷のみだがこちらは主にショウの盾の耐久やらが着実に減ってきているのでジリ貧である。あ、ショウのスキルであっちにヘイトが行った。


「まずあの防御どうにかしないとなあ……」


「一瞬なら吹き飛ばせるけどねぇ、結構な威力の魔法を使うからその隙を突いて突っ込むと確実に巻き込まれるね」


「まあそうだろうなあ……MPは大丈夫か?」


「それは問題無いね、牽制に使っているのは衝撃は据え置きでダメージ減らすようにしているから消費も減らせてるし。コトネの方も何とかやりくりしているみたいだしねぇ」


「そうみたいだな……っとぉ!」


 ショウのヘイトの効果が切れたのか俺達が突っ立っているのが気に食わなかったのか、こちらへとすごい速度で突進してきた。多少距離があったので、左右に飛びのいたのでダメージは無かった。アハルテケの風はやはり直接攻撃には使えないようだが、防御に使えるほどの風を纏っているため突進の攻撃力が倍増しみたいな状態になっている。ある意味防御は最大の攻撃みたいだなあ、意味が違うかもしれないが。そもそも慣用句だっけ、これ。とにかく、この若干不利な均衡をなんとかしないと状況が全く好転しない。最終手段というか、分かりやすいのは捨て身アタックだが、普通に死にそう。急にあの防御を何とかする策でも思いつかないかなあ?一応持ってきた投げナイフとか投げてみたが、呆気なく弾かれたし。


「って、うわ!い、や、しつこい!」


 何かずっとこっちを攻撃してくる。そんなにヘイトを集めるような事を……ちまちま傷をつけたり、倒されたのに性懲りも無くまたやってきたからか?ちゃんと顔を覚えられていたのかな……面倒な。


「っ!【貫牙剣(アウラ)】!【朧流し】!」


 動きが速い!スキルを使って受け流しはしたが、直撃を避けられたというだけで衝撃で結構ダメージを受けた。幸い、ショウのヘイト関係のスキルのクールタイムが終わったのと、モモの魔法で距離が出来たので回復する隙ができた。流石にコトネさんの回復魔法の範囲外なので自前のポーションで済ましたが、このままだと腹がタプタプになりそう。満腹感は無くともどのぐらい腹に溜まっているかぐらいの感覚はあるし、食いすぎると胃もたれみたいなことになるらしいし。まあポーションだと胃もたれは起こらないだろうが気持ち悪くはなるだろう。

さて、防御対策だが、解除や相殺ができない以上力技に出るしか無いだろう。ここで取り出したるは、クルト特製の盾なのか、鉄板に持ち手を付けただけなのかよく分からない物体。剣士系統ならまだしも派生である武士は盾を装備はできないのでただ持っているだけだが、無いよりはマシである。アハルテケはまだショウの方にヘイトが向いているので準備のしようがある。


「モモ!突っ込むから頼んだ!」


「はあ!?あー……そういう事。容赦無くやるけど良いかい!?」


「任せる!」


 ショウもこちらがやろうとしていることに気づいたのか、俺に関心が行かないように上手いこと立ち回ってくれている。念のためモモがバフをかけ直してくれた。エクストラスキルの残り時間が少ないため、これを外すとまたクールタイムになるため失敗は出来ない。まあ、失敗したところで負けるわけでもなし、死ななければまだ何とかなるので気楽にいこう。少しでも当てる確率を上げるために【抜刀】を使うので納刀する。バフがかかった体で勢い良く駆け出し、アハルテケの死角である真後ろに移動し走る。どこかで馬の視界は真後ろ以外は見えるという話を聞いたので真後ろに移動したが、戦っている相手の視界が広いのは面倒だな。移動したのは気づかれているかもしれないから意味は無いかもしれないが、多少の効果はあるだろう。あとはモモの魔法だが、魔法の腕はこのゲームの世界の中でトップレベルのはずなので大丈夫だろう。というか、俺が失敗しないかが問題だよなあ。たまにこういう事すると割と失敗したりするからなあ。気を抜かないようにしようか!


「『グランドシールド』『バーンバースト』」


「ぐぅぅぅ……オラァ!!」


「ブルルァァァ!?」


 モモの魔法によってまず頑丈な岩の壁が俺の後ろに出現した。次に炎属性の爆発によって少しの間アハルテケの風の防御が無くなった。もちろんすぐ近くにいた俺も爆発に直撃したが、さっき出した盾を構えていたので思っていたよりダメージは少ない。モモが後ろに出してくれた岩壁のおかげで吹っ飛ばされることもなく、爆風を切り裂きながら進んで行く。運が良いことに、今までより威力が高かった爆発に驚いたのかアハルテケはそこまで移動せず、俺にあまり意識も割いていないみたいだ。これ以上の隙は無いので思い切り斬りつけようとするが、多少動揺していても流石はエクストラモンスター、俺をはっきりと認識していたわけでは無いだろうが、後ろから来た俺に向かって蹴りをしてくる。


「チッ!」


 ボロボロになった盾と左腕を犠牲にして何とか直撃を避ける。体勢が大分崩れたので致命傷を負わせるのは不可能になったが、このまま左腕をやられただけになるのは癪なのでアハルテケの右の後ろ足を叩っ切った。


「ヒヒーーン!!!」


「うおっとぉ!」


 離脱離脱。足を切られたことで、アハルテケが暴風を巻き起こしながら暴れている。離脱というかほぼ風で吹っ飛ばされただけだが、おかげで離れられたので良しとしよう。


「コウさん!大丈夫ですか!?」


「あ、うん、大丈夫です。左腕バッキバキだけど」


「今回復しますね」


 多少アハルテケから離れたところで駆けつけてきたコトネさんが回復魔法をかけてくれる。アハルテケはまだ暴れているので他の2人も集まってきた。


「いやー、惜しかったね。けど状況が多少良くなったかな?」


「これで風の防御とかが弱まれば良いんだけどなあ……」


「多分そうなるんじゃないかねぇ。足を切られればいくら肉体が無いといっても消耗はするからねぇ、防御に回す力も少なくなるはずさ」


 こういう時、設定というか世界観に詳しいモモがいると状況が分かりやすくなるからありがたい。設定とはいえ、この世界を長く生きているから、全部を知っているわけでは無くともその知識は色々な状況で役に立つ。

 アハルテケに目を向けると先程よりは少し落ち着いてきたように見えるが、それでもまだ暴風を起こして暴れているため近づけない。だが、纏っていた風の防御は気のせいかもしれないが薄くなっているような感じがする。コトネさんの回復魔法だと、左腕は完全回復とはいかないが、ぎこちなくとも動くようになった。これならまた同じ手段を使っても何とかなるな。


「ここから奥の手とか出してくるかな?」


「さあ、そればっかりは。とにかく風の防御は弱まったから注意して攻めていくしか無いね」


 時間も経ち、落ち着いたのかアハルテケがこちらを視界に入れる。肉体が無いため出血などによるスリップダメージは期待できないが、攻撃はまともに効くようになったはずなので、ショウの言った通り攻めていけば何とかなるかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ