第二十四話 小物相談会
「というわけでイベント報酬をどういう風にしたいかを話し合いたいと思います!」
「わーい」
「わーい」
「うぇーい」
「わ、わーい?」
「なんだいこれ」
「モモ、冷静になってはいけないのだよ」
「えぇ……」
午後になり、イベントのストーリーも終わりひと段落したのもあり、みんな暇になったのでイベント報酬のデザインをどうするかの会議を開く事に。別におそろいにするわけじゃないが、まとめてアゲハに伝えた方が早いだろうし、こうした方が楽しいんじゃないだろうかという雰囲気になっていた。まあ、やる事は本当に無いのでこうやって時間を潰すのは割と好きなので楽しんでいこう。内容的にすぐ終わりそうだけど。ちなみに上の会話は順番にアゲハ、クルト、ショウ、俺、コトネさん、モモ、俺、モモである。ふざけたテンションの時は冷静になるのは御法度だからなあ、モモは気をつけようか。
「それで、もうこんなのが良い!という人はいますか?」
「これって、形って本当になんでも良いんですか?」
「服とかでも良いみたいだし、小さくてもアクセサリーに分類されるなら大丈夫だよ」
「そうなんですか」
本当に形は何でも良いみたいで、今回の場合はあの村の桜が使われていれば良いみたいだ。桜の花そのものを使ったアクセサリーはもちろん、染料を使ったものなら何でもといった、結構許容範囲は広いみたいで、全てのプレイヤーがつけても問題無いように配慮されている。秋イベの時はカボチャ、冬イベの時はヒイラギの実だったらしい……カボチャの染料って何だろうな……カボチャ色なら分かるが。まあカボチャ色っていってもオレンジ色みたいなものだからまだ良いが、桜色はピンクに近いからなあ……流石に服は……寝間着ならピンクだろうが気にしないがゲームで寝間着はいらないからなあ。というか暖色系多いな、橙系、赤、桜……夏は何になるんだろうか、黄色?黄色で夏っぽいの何かあっただろうか……とうもろこし?いや、とうもろこしは流石に無いか。そうだ小物だ小物。形どうしようかな。
「ショウは他のイベントの時の報酬どんなのにしたんだ?」
「僕?僕はほら、これ」
そう言って、左袖をまくると出てきたのは2本のミサンガだった。橙……まあカボチャだろう、と赤の2本。前のイベントのやつかーそりゃあるよなあ。ミサンガか、スペース取らないし目立たないだろうから割とアリだな。
「そういやそれの効果って何なんだ?」
「え、これ?確か…………秋イベの方はHP自然回復量1パーセントアップで、冬イベの方はドロ率0.012パーセントアップだね、効果は独立してるから他と合わせたりは無理」
「微妙……両方本当に効果あるのか?秋イベは自然回復なら寝てる時しか効果無いだろうし、冬イベはほぼ誤差だろ」
「いやいや、秋イベの方はガチ勢にとっては効率上げの後押しとして役立ってるみたいだし、冬イベの方はちゃんと効果があるみたいだよ。検証班調べでね、無いよりマシマシ」
「そりゃ無いよりは良いだろうが……秋イベの方は寝るよりポーション飲んだ方が早くないか?というか検証班すごいな、0.012パーセントの差の証明ってどんだけ時間かかるんだ」
「……そんなに飲んだら胃がどうなると思っているのさ」
「あ、そっか」
満腹感は無くともこのゲームの中で腹が一杯になるとそういう似た感覚や仕様はあるので、無限に食べたり、飲んだりする事はできない。そりゃあ、ポーションがぶ飲みできたら苦労しないわな。じゃあ1パーセントでも時間がかからないのはガチ勢にとっては結構でかいかな?秋イベの方をショウがつけているのは特に理由は無く、単に他につけるものもないからと言った理由だった。このゲーム、アクセサリーはつけようと思えばいくらでもつけられるが、効果があるのは10個までであとはただの見栄えぐらいしかない。効果に関しても条件やら何やら色々あるらしいが、軽く聞いただけでも面倒臭かったので他のアクセサリーをつけるときに考えよう。Wikiに分かりやすい説明あるらしいし。
「あとミサンガの意味あるのか?」
「無いよ。そもそも製作頼んだらミサンガの形で来ただけだし。変なわけでは無いし別に良いかなって」
「意味ないのか……使い捨てのイベントの報酬とか嫌だし当たり前か。形は何でも良いってはずなのにそれで効果が変わるとアレだしな」
「そうそう」
「コウさん達何にするか決めましたー?」
「あれ、みんなもう決まった感じ?」
「そうですね」
「ああ、僕ミサンガで。こんな感じの」
「じゃあ俺もそれで。デザインは任せるよ」
「はい、分かりましたー」
「わぁ、パクリだ」
「小学生か。何にするかぐらいは別に乗っかっても良いだろ」
こうしてイベント報酬の形会議は20分程で終わった。品自体は小物でも時間がかかるみたいで、明日はクルトとアゲハはログインできない事もあり、完成は来週になるらしい。報酬の受け取り自体はイベント期間後でも可能なのでゆっくり製作してほしい。報酬の効果はまだ知らないが、1日でも早く受け取っておくべきというものでは無いはずなので焦る事はまず無いだろう。さーて、暇だなどうしよう。
「コ、コウさん、この後予定とかありますか?」
「何も無いですけど……何かありました?」
「い、いや私も特にこれといった事は無いんですが……そのレベル上げとか?」
「ああ、良いですね。コトネさんが良ければ行きますか?」
「は、はい」
そろそろレベルが60に近くなってきたので3次職になる日も近い。しかし、ここからレベルを上げるのに必要な経験値が今までよりも大幅に増えていくから4次職になる日は大分遠いだろう。ショウもそろそろ90になるだろうが、ジョブの条件とか満たしているのだろうか。3次職も条件はあるはずだから調べてそろそろ達成しておかないとなあ。レベルが上限に達するとその間得た経験値は貯めておけたりはせず無駄になるので、戦闘関係の条件だったりするとレベルを上げ切る前に満たしておかないと効率悪い。幸いなのか、今日レベル上げをしたぐらいじゃ60にはならないと思うので、今は気楽にレベル上げをしよう。
「あ、そうだ。モモも来るかー?」
「え。あー……」
(チラリとコトネの様子を見るモモ)
(コウに気付かれないように、レベル上げなのでついてきてくれるとありがたいというジェスチャーを送るコトネ)
「じゃあ行こうかな……する事無いし……」
「おう……準備もあるので10分後ぐらいで良いかな?」
「は、はいじゃあ10分後に!」
さあてポーションとか色々準備しないとな。コトネさんのMPはもちろん有限だから、長時間レベル上げをするなら回復魔法とポーションのバランス考えないと。
「良いのかい、ついていって」
「ただの探索ならまだしもレベル上げなので……モモさんについてきてもらった方がいいと思って」
「別にマスターと2人でも大丈夫だろうけどねぇ」
「私はまだまだ満足にコウさんのサポートができるわけではないので……」
「まあコトネが良いなら良いけどねぇ、そういや準備は良いのかい?」
「あ、ポーション!」
砂漠フィールドはまだ微妙にレベルが心許ないので雨林フィールドでレベル上げ。3人て色々とモンスターを倒していったが、特に面白い事も騒動も無く、まあいつも変な事が起こると困るのだが着実に経験値を稼ぐ事ができました。休憩を挟みながら夕方まで続けたが、レベルは60には届かず、3次職はまたの機会だ。条件も満たしていないし。明日はお婆さんのクエストを行う予定なのでまあ色々と時間が潰れるだろう。というか、学校の課題もあるんだよなあ、早目にさっさとやっておかないと……ああゲームだけしていたい。




