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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第二章 春だ!桜だ!春寒料峭。
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第二十二話 割と大物


 ショウ達は御神木の方へと逃げていったが、丁寧にシズエさんを運んでいたせいか、切り株の追っ手が無かったからか、ゆっくりと進んでいたみたいで、割とすぐに追いつくことが出来た。


「おーい、ショウ」


「意外と早かったね、倒せたの?」


「そりゃそうだろ、ほら」


 倒してドロップした素材を見せて納得させる。確認は出来たようでひと段落といった感じだった。


「背負うの代わろうか?」


「いや大丈夫だよ、大した手間でもないしね」


 リアルじゃないから体力とかも大丈夫か。無事合流したので全員で御神木へと向かう。シズエさんはまだ目が覚めておらず、コトネさんが回復魔法をかけたので体力などの面は大丈夫かもしれないが、村人の信仰によって宿った精霊なのでよく分からない部分がある。流石に死にはしないだろうが、このまま更に弱ってしまうとモンスター避けの場の展開の余裕さえ無くなってしまう可能性もある。どうにかしてやりたいが手段が皆無なんだよなあ。これは囮作戦を実行するのは止めた方が良選択だったのかな、接触の仕方はとんでもない形だったが、探せば接触できるようだったから、他のプレイヤーでも同じ選択肢はあったであろう。

 御神木に着いたが、シズエさんはまだ目覚めない。元凶は倒したとはいえここに放置するわけにもいかないだろう。


「どうしようか?」


「はい回復魔法って感じじゃないからね……このまま目覚めないと……」


「ん……?」


 あ、目覚めた。


「大丈夫ですか?」


「あ……はい、何とか……あの狐は……?」


「あれなら倒したぞ、ほら」


 先程と同じくドロップした素材を見せた。これ、素材の使い道があるというよりは証拠用だったりしたのかな。見せると納得したのか安堵の息を漏らし落ち着いたようだった。


「体調は大丈夫ですか?」


「はい、もう動く分には問題ありません。この体を解いて本体に戻れば少しずつですが力も戻るでしょう」


「魔物避けとかは大丈夫なのか?信仰が落ちて力が落ちているとか言っていたけど」


「それはギリギリ展開できるぐらいの力はあるので……あの狐が死んだ影響なのか、ほんの少しですが信仰が戻ってきているので、しばらくは問題ないでしょう」


 しばらくといっても十数年は持つそうだが、そこから先は不安らしい。信仰か……真実を伝えれば多少はマシになるかもしれないが、信仰に繋がるかどうか。姿を見せたところで納得されるかな……見た目ただの村人だし。


「そういえばその姿は変えられたりしないのか?」


「それは余りしたくないですね……この形で慣れてしまったので、形を変えるとなると結構な力を使うので……この姿にらしいものがないのは自覚していますが」


「昔の村人の姿と言っていましたが、どうしてその姿を?」


「この姿の子は私を植えてくれた子なんです。最初はただの桜の苗木でしたが、その時に1番接してくれたのがこの子で……姿もよく覚えていたので、この形を借りています」


 なるほど、そういう由来か。それは姿を借りるだけとはいえ大事なものなのだろう。経緯としては作品としてはありふれたものだが、人の想いというものは中々侮れるものではない。実際そういうものが積み重なってこうして精霊となるに至ったのだろう。とはいえ、現実的にも心情的にも姿を変えられないのなら信憑性も微妙なものになってしまう。姿を見せたところでモンスター避けが出来る程度だと直接村人と関われるようになるとそれはそれで面倒も起きるだろう。モンスター避けだけでもすごいことに変わりはないが、それが限界みたいなのでいざという時に祈りを捧げられても本物の神仏ではないので叶えられる訳ではない。そういう意味では姿は見せない方が良いのだろうが、モンスター避けみたいな不思議な力的なのは話して、説得力を持たすのは必要かもしれない。


「結局当たり障りのない範囲で話して御神木の株を上げるぐらいの手段しか無いよな」


「そうだね……そんな感じで大丈夫でしょうか?」


「はい、それで少しでも改善されるならありがたいです。そうなれば力が持つ時間も伸びていくと思うので……あとそちらの悪魔の方は早めに離れることをおすすめします」


「おや親切に。まあ事によっては前ほどじゃなくとも戻るだろうからねぇ、あんたがその樹に戻れば樹自体の神聖さは戻るだろう?」


「前ほど、ではありませんが。それでは皆さんお世話になるばかりですが、何卒よろしくお願いいたします」


 そんなこんなで村人が納得する様に今回の顛末を伝えることになった。といっても俺たちは村人に何の縁も無いのでいきなり騒動の原因が分かって、それを解決しましたと言っても信じてもらえるだろうか。


「どう伝えようか、村人とはあんまり関わってこなかったからね……」


「あの、コウさん。あのお婆さんに頼るというのはどうでしょうか?」


「ああ!あのお婆さんか、でも大丈夫かなぁ?」


 パーティで関わった訳じゃ無いし、言っちゃあなんだがあのお婆さんにどこまで力があるか分からない。ただの村人1人を味方につけたところで他の村人を説得できるのか。知らないみんなに関わった顛末を話すと理解したようで、それに頼るしか無いのではないかという結論となった。確かに他に手段がないからしょうがないが大丈夫かなあ。とりあえず移動するしかないか。このまま大勢で行くのもアレなのでまずコトネさんと2人で向かう。


「すみませーん?お婆さーん?」


「はいはい、どちら様……この前の!一体どうしたんだい?茶しか出ないけど」


「いえいえ、今日はそういうことじゃなくて……」


「うん?」


 手っ取り早く説明するために黒狐の素材やらを出しながら大体の顛末を説明していく。子どもの頃に多分シズエさんの仕業であろう体験をしたということなので、この突飛な話にも多少の耐性はあるはず。信じてもらえると良いのだが。


「なるほどねぇ、精霊様は本当にいたのかい……村を守ってくれているんだねぇ」


「ほとんど状況証拠しか無いけど信じてくれるのか?」


「あれ、知らないのかい?ここ5日ぐらいあの切り株とやらの目撃が止んだんだよ。お前さん達の話だと先週にその元凶の大詰めの依頼を受けたんだろう?私達を怯えさせる必要も無くなったから止めたんだろうさ。それにその狐に似た魔物の目撃情報が大分前の村の記録にあったはずだから割と筋は……通ると言えば通るかな?」


「へ、へぇ……」


「私としては御神木の評価が改善されるに越したことはないからね、善は急げだ。村長の馬鹿でも連れてこようか」


「え?」


「ちょっと待っててな〜」


「……行っちゃいましたね」


「そうですね……アグレッシブだなあ」


 ショウとか離れたところで待たせたままだけどどうしようか、なんかサクサク話が進みそうだから呼んどこうか。呼ばないといないまま解決しそうだし。


「痛い痛い、自分で歩くから離しとくれ姉さん」


「ほらさっさと歩きな……あれ、人数増えてるね」


「あ、一緒に解決したメンバーです……姉さん?」


「おや、そうなのかい。言ってなかったっけ、弟が村長だよ」


 たまたま会ったお婆さんが割と影響力のある人でした。右回りという大雑把な判断を下したコトネさんは結果的にえらい人物を呼び寄せていた。というか村の中だけどイベント進むのな。ほとんどプレイヤーが来ない辺りだから、なんとかなってるのかな。姉に連れられてきたのもあるのか割と話しやすそうな雰囲気だった。まあ見たのは言い争いの時だったしな、一応擁護派だし多分大丈夫だろう。納得されるように頑張って話さないとな。このコミュニティのトップに信じてもらえないと意味が無い。

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