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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第二章 春だ!桜だ!春寒料峭。
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第十九話 作戦会議


「君は何か普通じゃないものを連れて来ないと気が済まないのかい?」


「能動的に連れてきた覚えはないぞ」


「そうじゃない。というかわざとだったら頭かち割ってるよ」


 翌日、全員ログインしていたので集まってもらい、桜の精霊(本物)を紹介した。その反応がショウのこれなんだが、別に俺のせいではないので俺に責任を問うのはやめてほしい。確かに俺が関わっているけど、モモの行動は俺が指示しているわけじゃないのでどうしようもない。俺としては、それこそ犯罪だったり、それに準ずる行為でなければ、NPCの行動はあまり気にしないというか、自由にさせる方針なので今回の様に驚きはすれど、責めるつもりはない。予測不可能な事態もゲームなら楽しめるし。リアルで起こるのは勘弁だが。


「えっとここに連れてきて大丈夫なんですか?えっと……そのシステム的に」


 最後の方は小声でクルトが俺に聞いてくる。運営からはおかしな返事がきたが、多分色々整合性は取られているんだろうと伝えると、全てとは行かずともなんとか納得したようだった。この返信だと不安が残るよなあ。しかしなぜこんな返信なのか。プレイヤーによっては色々と面倒な事になるかもしれないのに……まあ、他のプレイヤーに接触して変な事にならなきゃ別に良いか。このぐらいで目くじら立てる理由もないし。

 シズエさんは昨日俺に話したことをもう一度話してくれた。まあ全員イベントアイテムのおかげでなんとなく察していたそうで、話は割とスムーズに進んだ。話疲れたのかお茶を飲んでいる。昨日は腕もがんじがらめになっていたが、モモの試行錯誤により、右腕は動かせる様になった。作業している時のモモの顔がとても嫌そうな表情だったのでやはり聖属性は苦手なんだろう。


「なるほどね……やっぱり今回も一癖あるのか」


「前のイベントもそんな感じだったんですか?」


「うん、N……今回の村人みたいな人達の話を鵜呑みにすると、事件が解決しなかったりするとかね」


 まあ、ストレートな話も悪くはないが、実際やってみると、多少癖があると嬉しかったりすることもあるからな。それにしても、ここからどうしようか。今はイベントアイテムを作成し、あの偽物へと届けるという過程が待っているが、偽物と分かっているので、ただ渡すのは……という雰囲気になっている。しかし、このまま渡すのも、いきなり攻撃するのも更にイベントがおかしな方向へ行く可能性があるので、どう行動するべきかという話になった。


「まず偽物が標的にしている精霊さんがここにいるんだよね」


「そうなんだよなあ……」


「その、シズエさんがここにいるのはバレていないのですか?」


「私はそもそも見つからない様に隠れていたのと、そこの方がバレない様に運んで下さったので……この私が死ななければ、本体の木も倒れないので隠れている方が確実なので」


 死なないのか、命そのものはこの精霊の姿の方に全部あるとかだろうか。バレていないなら色々と作戦の立てようがあるのでどうしようか。


「一応あっちは偽物だとバレていないと思っているから、やろうと思えば不意打ちし放題だよね」


「まあ村人を煽ってる上に、村を守っている御神木を害そうしているわけだからな。手段を選ぶ必要は無いといえば無いけど……」


「悪側とはいえ、少し微妙なやり方ですよね」


「それについては提案があります」


 シズエさんの提案とは、自分が囮になるというものだった。といっても、自己犠牲的なアレコレではなく、自分の姿が確認でき、用意したイベントアイテムで拘束されれば確実に偽物は油断するだろうとのことだった。動機はしょうもなくても、仮にも数十年単位で計画を立てていた相手である。シズエさんがこの屋敷に隠れていた場合、このまま村の周辺に姿がないと怪しまれるだろうとのことだった。


「……なら、アイテムをシズエさんに使うまではそのまま進めた方がいいみたいだね」


「問題はその後ですね」


 シズエさんを拘束してしまうと、イベントアイテムの効力はちゃんとあるので、今の様に身動きが取れなくなってしまう。モモは壊せばいいじゃないかと言うが、それにしてもタイミングがなあ。偽物がその後普通に正体を現して精霊を殺そうとするのか、それとも隠したまま俺達に倒させようとするのか。


「そうだ偽物の擬装を剥がせる魔法とか無いのか?」


「え、あるけど……ああ、そこを悩んでたのかい?」


 互いの認識に齟齬があった様です。モモは偽物なんだから、普通にそのまま倒せば良いと思っていた様でわざわざ擬装を剥がす必要は無いと思っていたみたいだ。こっちはちゃんと正体を暴いて、明確に敵というスタンスを相手にとって欲しかったので擬装を剥がす手段が欲しかった。あと、あの姿のまま倒すとなると絵面がとても酷い事になるのでそこもあるが。


「あとは倒す手段ですね。どの様な攻撃をするのかとかは分かるんでしょうか?」


「高いレベルで姿を擬装してるので闇属性の魔法はそれなり使えると思います。多分他の魔法もそれなりには使えると思いますがあまり詳しくは……あと、あの切り株をけしかけてくると思うので、そこを注意して頂ければ」


「あんたの本体はあんたがその状態なら基本ダメージは受けないのだろう?なら切り株どもは私の魔法でなんとかできるけど……?」


「あまり高威力だと流石に……なるべく火とか控えていただけるとありがたいです」


「じゃあ氷漬けにするとかか?」


「それなら私の本体の方にあまり来なければ大丈夫だと思います。規模にもよりますが」


「そのぐらいの調節なら問題ないさ」


「じゃあそれはモモに任せようか。闇属性の特徴ってなんだったっけか?」


「大体分かってると思うけど、主に精神系だね。直接的な攻撃魔法もあるけど特徴としてはそんな感じだね」


 闇って手口がいやらしいタイプのやつが多いよなあ。精神系なら、装備とかで耐性を上げる必要があるが、明日には間に合わないよな。解除するならまたモモに頼る必要があるか?


「いや、コトネに任せれば良いじゃないか。上位じゃなくとも解除系は使えるだろう?」


「は、はい。使えますけど……ちゃんと効果があるでしょうか?」


「大丈夫さ。擬装は巧妙だけど、あれは時間をかけて作ったものだろうだからねぇ。複数人にかけようとしたら効果は落ちるから、今のコトネでも十分に通用するさ。こっちは使おうとすると少し動けなくなるからねぇ……」


 使えても苦手な属性の魔法は使うのに準備がかかるか。適正どころか種族の問題だからなあ。モモのお墨付きもあるので満場一致でコトネさんに頼る事になった。そもそも反対する奴はここにはいないが。


「私はちゃんとあれが魔法を使う場面は見たことないので、詳しいことは言えませんがお気をつけ下さい」


「基本魔法だろうけどね、長く生きているみたいだから一応気をつけようか」


「そうですね」


大体の方針や情報は揃ってきたので詳細を詰めていく。ゲームとはいえ、ここで下手に動いて失敗すると、なんとも言えなくなるからなあ。クルト達も役回りが出来たので、全員が活躍できるだろうからイベントとしては良い方向じゃないだろうか。ショウもパーティは違えど、フィールドボスではないので一緒に戦えるのでタンクとしてはありがたい。最初に思っていたよりはストーリーの進み方が違ってきたが、自由度があるからこそこういう他とは違う決まった道筋ではない体験ができるから面白い。あとは元凶を倒して終わりだろうか……3人目は流石にないか。

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