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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第二章 春だ!桜だ!春寒料峭。
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第十八話 お、お前……


 さて今日は何をしようかな。いつもはクルト達か、コトネさん、モモの誰かしらがいるものだが今日は俺以外誰もいない。まあレベル上げかな。日は沈んでいるので、雨林は補正で一応見えるとはいえ、流石に暗い。砂漠は1人で行くには少しレベルが足りない……荒野フィールドで良いか。ポーション多めに持ってかないとな。そうして部屋で持ち物の準備をしていると、いきなりモモが入ってきた。なんかでかい袋担いでる……動いてね?


「いやあ、大変だった。よいしょっと」


「お前それ何?」


「いやあ、やっと探しものが見つかってね」


 探し物っていうか、探し者……そうじゃなくて誘拐じゃね?じゃねじゃなくて誘拐だわ。ええ……まさかのがっつり犯罪行為、村からここまで攫ってきたのか?よく誰にも……はい、魔法でなんとかしたんですね。


「いや、説明説明」


「ええ?うーん、まあ見た方が早いか」


 そう言うとモモは袋の口を開け中身を俺のベッドの方へと放った。結構な勢いだったけど大丈夫かな、というか誰?見た方が早いと言うが誰か分からんのだけど。何か口と体を魔法的なものに縛られていて身動きは取れないようだ。格好的にイベントの村の子どもかな……子どもを誘拐するんじゃないよ!親とか今パニックになっているんじゃないの?


「おま……犯罪はするなって言ったのに……」


「……犯罪?まさか。これ攫っても訴える奴なんていないよ」


「……?」


 鑑定じゃNPCは対象外だし……モンスターでもなさそうだ。結局誰か分からないのでモモに答えを聞く。


「分からないか……桜の精霊いるじゃないか、これ本物」


「は!?」


 仲間になったNPCがイベントのストーリーをぶち壊した気がする。NPCの自由度が高くてモモみたいに力があるとこうなるのかー……いやいや、これはどちらにしろヤバくないか?というか大丈夫なのか?イベントは村の外で進行するから、他のプレイヤーと被らず、矛盾が起こらないようになっているが

、ここまで連れてくるとそこら辺大丈夫なのかなあ。万が一、一緒に進めているコトネさん達以外のプレイヤーが見たら大変な事になる気が……運営に聞こう、そうしよう。お問い合わせ画面!送信!


ピコン!


 返信が速い!運営絶対今見てるだろ。モモが攫ったあたりからログ参照して回答用意してただろ。てか、気になる内容は……


『色々大丈夫☆』


 ……俺は運営に送ったんだよな?間違って変なMODとかに送ったりしてないよな……してないな。これで良いのか運営。色々ってなんだ色々って。他のプレイヤーに見せても良いのか、本物(仮)を第3王女に贈呈するぞ、イベントぶち壊しだ、アハハ……ハァ……えー、どうしよう。確実にイベントの本筋から外れているわー。確かに自称桜の精霊は怪しかったけどさあ、もうちょっとこう、村で暴いていくとかじゃないの?てか、じゃああの自称桜の精霊は何なんじゃ。あー、考えることが多い!一つずつ!


「悩みごとは終わったかい?」


 寛ぐなよ……精霊(本物?)はがっちり縛られているせいで身動きが取れず、さっきまでみじろぎしていたがすっかり静かになっている。


「というか、本当に本物なのか?あれ」


「もちろん。若干だけど前村に近づいた時に感じたのと同じ感じがするからね。まあものすごく弱いから探すのに苦労したけど」


 なるほど。聖なる感じのあれか。弱いって事は桜の咲きが悪いのと関係があるのか……まか聞いてみないと始まらない。


「とりあえず話聞きたいから拘束解いてくれるか」


「良いけど、口だけだよ?体の方はこっちまで持って来れるように聖属性でがんじがらめにして固定しているからね」


「意外と存在がギリギリ……まあ話がしたいだけだからしょうがないか」


 とりあえず自分で体勢を直せなさそうなので、起こして壁に寄り掛からせる。この際ベッドの上なのはしょうがない、この状態だと椅子よりベッドの方が座りやすいだろう。拘束している魔法で見えづらいが村人と間違えるぐらいには地味な格好だな。髪も黒でそこら辺のNPCと言われた方が余程信憑性が……自称の方が桜の精霊っぽいのは如何なものか。モモによって口の拘束が解かれた。


「えほっえほっ……やっと外れた……」


「なんかすみません……」


「いえ、こちらもあなた方と接触はしたかったので……こんな形になるとは思いませんでしたが」


「意外と冷静ですね?」


「冷静というか、この拘束が解けたら私死んでしまいますので……生かすも殺すもそちらの悪魔次第なので」


「嫌だなぁ……そんな事はしないさ。する理由がないからねぇ」


 思っていたよりヤバい状態じゃね?モモはよく攫ってきたな……自分の魔法に自信があるとかそういう感じかな。まあ解かなきゃ良いんだから別に良いか。


「この拘束どのぐらい持つんだ?」


「念入りにかけたから、解かない限り自然に消えるとかはしないよ。マスターの切り札を使えば別だけど」


 切り札……エクストラスキルか。する必要がないから大丈夫だな。それにしても接触したかった、か。もしかしてあの時の影はこの人だったのかな?


「というか、本当にあの御神木の精霊なんですよね?」


「ああ……確かにあの偽物の方がそれっぽいですよね……この姿も昔いた村人の姿を借りているだけですし、そもこうやって動いているだけでも精一杯なんです。証明する方法は……ちょっと……」


「これが本物だよ、誓ってね。証明する方法は……殺せば、御神木に影響が出るはずだけど……やる?」


「やらんわ!……いやモモを信用してないわけじゃないんだけど、確証がね?」


「まあ、それは分かるさ。けど、頼まれて用意するものがアレだろう?そもそも本当に悪霊なら聖属性で縛っている時点で消滅するだろうし」


「まあな」


 自称に頼まれたアイテムは実際の所、「悪」霊対策では確実にないことが分かっている。だから、用意はするが慎重に進めていこうという話になっているが、まだ「あれが偽物なら本物は?」という話になっていたので確証が得られていなかった。目の前に現れたというか攫われてきたのがいるおかげで証明されたが。まあ本物ということで良いか。


「それで、話があるとは?」


「はい、お分かりかと思いますがあの偽物を倒して欲しいのです」


 でしょうね。桜の精霊(本物)……名前は偽物が名乗っていたのと同じく、シズエらしい。御神木の近くで現れた切り株は偽物の仕業で、つまりは自作自演である。しかし偽物を追いかけていたのはシズエさんの仕業らしく、誤解した俺達によって倒されてしまったのでもう俺達に頼るしかなくなったという。多少生命力を削って生み出したとのことなので2体目は無理だそうだ。元々、村人の信仰によって精霊としての力が生まれたが、モンスターを寄せ付けないぐらいの場を作るのが精一杯らしく、切り株みたいな物理的手段を取るのは結構厳しいとのことだ。さっき言った通り、こうして本体を離れて動いているだけでも精一杯だそうだ。

 偽物の正体は闇系の魔法を主に使う狐のモンスターで、数十年前に村にちょっかいを出そうとしたらシズエさんに邪魔され、それを根に持ち御神木を排除しようと企んでいるらしい。理由が何かありがちだけどみみっちいなあ。けど執念深く計画を立てていたらしく、なんとか村に入り、動くこと自体を可能にし、村人に接触して御神木への信仰を低くする様に動いていたらしい。


「それは入った時に分からなかったのか?」


「私の作り出す場は魔物を寄せ付けないようにするだけで、あの狐は近くに来た際に見たので分かりましたが、村に入った時はうまく擬装していたみたいで、場にも反応せず見逃してしまい……」


「なるほど……モモはそういうのはできないのか?」


「種族の問題さ。聖属性が混じってるおかげで他の魔物より影響が大きいからねぇ……聖魔法は使えるけど不快なことこの上ない。それをかける時は大変だったよ」


 ダメージを受けるとかではなく、ただ不快なだけらしい。下位の悪魔はダメージを受けるようだが、それこそ起源の違いか。まあモロにくらうと弱体化するようだ。

 話を戻すと、計画は成功してしまい信仰は徐々に下がり、御神木を大切にしても信仰までいく村人は減り、開花具合に影響が出たみたいに目にわかるほど力が低くなってしまったという。そうして、切り株を操り、俺達のような探索者をけしかけ精霊を殺すか、御神木を切ろうとしている。まあ若干後半が雑なのはゲームだからなのか、ただこれで十分だと思っているのか。あらましはこんなもので、説明は終わった。これ、最後に詳しく話してもらうやつだよなあ。NPCが自由だとこうなるのか。いい意味ではありきたりじゃないとも言えるが……そもそもこんな事になっているの俺達ぐらいか。明日あたり説明しないとなあ。

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