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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第二章 春だ!桜だ!春寒料峭。
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第十三話 お婆さん普段これどうやって運んでたの?


 というわけではい、村に到着。相変わらずプレイヤーでそこそこ賑わっていた。モモは着くと同時にどこかへと行ってしまったが、まあバレるようなことはしないと思うので大丈夫だろう。そんな訳でコトネさんと2人きりになったわけだが、見てまわると言ってもなあ。


「それでどこから見ます?」


「そっ、そうですね……み、右回り……?」


「右回り」


 右回りってなんだろう?いや、いや言葉の意味は分かるよ?ちょっと思っていたよりアバウトな周り方だなと思っただけで。


「じゃあそんな感じで行きますか……」


「すみません、雑で……」


「いや謝られるほどの事ではないので」


 まあそもそもアテがあるわけではないので、てきとうに見て回っている。少し見て回っただけでも、イベントに直接関係があるわけではないが色々と発見があった。発見といってもいつも通り細かく作られているなあといったもので、家の主は留守だったのか回覧板みたいなものが扉に掛けられていたり、まごうことなき井戸端会議が開かれていたりといったものだ。少し聞いただけだが、会話も内容がループしている事は無いようだったが、もちろん大した内容ではないので役立ちそうな情報は無かった。桜もなあ……満開だったら言うこと無しなんだが、まあ俺は花より団子派なのでそこまで気にしているわけではない。そういや茶屋に団子があった気が、後で食おうかな。


「中々そういうものは見つかりませんね」


「まあそもそもあるかどうかは分からないですしね」


 とりあえず一周回ってみたが、それらしいものはなかった。村人に桜の精霊を見たことや聞いたことがないかをそれとなく聞いてみたが、誰も心当たりがあるのはいなかった。やっぱり村人と交流があるなら、わざわざ俺達探索者に頼らないだろうし、そもそも切るなんて話にならないか。


「一旦休憩でもしますか、結構歩いたので」


「そ、それはいいですね!この前の所に行きましょうか!」


 2人でこの前の茶屋へと向かうが……ちょうど混み合っていて満員だった。今はイベントの真っ最中、そして村の規模はそこまで大きくないので人数が来ればそりゃ満員な時間が多いか。この前も8割方座ってたし。


「ど、どうしましょうか……」


「待ちます?並ぶことになりますけど」


「待つのは……そこまでしてっていう感じでもありませんし……」


「じゃあうちで休んでいくかい?」


「「え?」」


 後ろから声が聞こえてきたので、振り返るとそこにはお婆さんが。うちってことは村人か、いきなりなんだろうか。


「うちも元々小さい店をやっていてね、年で辞めたけどスペースはまだあるんだよ」


「どうします?」


「良いんじゃないですかね」


 厚意という感じだったので、断る理由もなくついていくことに。わざわざ探索者を騙す理由もないはずなので大丈夫だろう。そうして着いたのは村の外側に近い、静かな場所だった。例えるなら超小さな古民家カフェみたいなものだ。


「綺麗な所ですね」


「それは良かった。ほら好きな所にお座り」


「あ、どうも」


 お茶どころか団子まで出てきた。お茶請けまで貰えるとは。


「それで、どうします?」


「割と見回りましたし、お屋敷に戻りましょうか」


「どうしたんだい?」


 いつの間に後ろに。気配を遮断スキルでもあるのか……冗談はさておいて、せっかくなので当たり障りのないレベルで事情を話していく。桜の精霊の件は言っていいのか分からないので誤魔化し、御神木の周りの切り株の原因を探しに動いていることを話した。


「ああ、桜の件で動いているんだねぇ、ありがたい。若者連中は何もしないくせに真っ先に御神木を切ろうとするんだから……村ができた時からこの村を守ってくれているというのに」


「実際に何かあったのか?」


「いや別に。ご利益が本当にあるかは知らないね」


「えぇ……?」


 まあ調べもしないで切ろうというのはどうかと思うが、一応一般人だからなあ。害も出てないんじゃ国の調査も行われるかどうか。そも国が出てくるならイベントにならねえしな。お婆さんが御神木が村を守ってきた、と言っているのは、村ができたから一度もモンスターに襲われていないという記録に基づいての事らしい。そこらの町でさえ襲われた事があるらしいのに、この村は一度も襲われていないのか。一応数百年ぐらいは経っているらしいが襲われた記録はないらしい。あの桜の精霊のお陰なのだろうか。周りの桜の樹が結界になっているとか……そういやモモが前は近付きづらかったと言っていたっけ。


「まあ、御神木様には意思が宿っているのかもしれないけどねぇ」


「え?」


 まさかのイベント関係者?いやイベントのストーリー自体は外での進行のはずだし、出会ったきっかけが茶屋に入れなかった、だからなあ。流石にそんな変なフラグは運営も用意しないだろう。とりあえず話を聞かなければ。


「私がまだ小さな子どもの時……あの頃はやんちゃでねぇ、森の奥に入ってしまって魔物に襲われそうになったのよねぇ」


「最初から絶対絶命ですね……」


「そうなの、子どもながらこれは死んだと思ったのだけれど……誰かに引っ張られたと思ったらいつのまにか村の近くにいたのよねぇ、今考えても不思議だわぁ」


「誰かって……姿は?」


「それが分からなかったのよ。視界が桜の花びらでいっぱいになって、見やすくなったら私1人だったもの」


 見てないかあ。やっぱり直接が関係があるわけじゃなくてフレーバーみたいなものか。まあけど良い話が聞けたので良いか。


「そういえば、ここはお婆さん1人でやっていたんですか?」


「まさか。数年前まで旦那がいたのだけれど事故で飼ってた馬ごと死んでしまってね。元々歳とって知り合いの話場程度だったから店自体は閉めたのよ。金取るかぐらいの違いしかないからね」


「すみません……」


「まさか、どうせぽっくり死ぬかの違いさあ。気にする事ないさ」


 その後も時間はあるので、てきとうに村の話を聞かせてもらったりして話をつぶさせてもらった。


「ああそうだ、これを運ばなくちゃいけないんだった」


 ここでクエスト表示か。まあ運ぶといっても大した量じゃ……量じゃ……これを運ぶ気だったんですか、お婆さん?でっかい重箱みたいなのが出てきた。というかそれを持ってきたお婆さんはなんなんだ。たまたま出会ったNPCなのにキャラが濃い。STRは足りてるみたいなのでコトネさんに誘導してもらいながら運んだよ。クエストになってるし、そのままお婆さんにやらせるわけにもいかなかったし。結構重かった……中に何入っているんだ。


「ありがとうね。最近は持てても腰に来てね……」


「いやご馳走になったし、その代わりと思えば」


「はい、まあほとんどコウさんにやってもらってしまいましたけど」


「いやいやあんたの誘導があったからスムーズに運んだんだろうに、ほら報酬」


「え、いやさっきのお茶でチャラじゃ」


「茶の一杯ぐらいどうにでもなるさ、ほら!」


『報酬を強制的に受領しました』


 おいコラ、エクストラハムスター以降聞いた試しのないアナウンスさーん?何を勝手に受け取っているのでしょうか。というかこれってデメリットのある報酬を受け取る可能性があるってことか……?クエスト受ける時は気をつけた方が良いかな。


「じゃあすみません……」


「んじゃ、気が向いたらまたくると良いさ。休ませるどころか老人のつまらない話と仕事をさせて悪かったね」


「いや、話は参考になった。ありがとう」


「うん?それなら良いけど」


 意外と話していたら時間も経っていたようで、そろそろ日も赤くなり始めている。2人で屋敷へと戻り……あ、モモ忘れてた。どうしよう……っているし。別れた方を忘れていたのはモモもみたいで、まあ行き違いがなくて良かったというべきだろうか。明日のイベントはどうなるやら。

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