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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第二章 春だ!桜だ!春寒料峭。
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第十二話 30分デビルズクッキング


「んで、午後が完全に暇になったけど、どうするか?」


「うん、自由行動〜」


「……雑じゃね?」


「実際することないし、進めようがないからね」


 実際その通りで、明日にならないとイベントは進まない。何か頭のおかしい行動でもすれば何かしらあるだろうが、確実に悪い方向へと進むだろう。数十年前の携帯ゲーム機なら、本体の設定時間を変えることでゲームの諸々を誤魔化したりできたそうだが、今はほとんどのゲーム装置自体はインターネットに接続されていて自動設定となっており、そもそも変えることが出来なくなってしまっている。なので現在はゲーム内の時間経過が必要な行程は不正は一切できないようになっている。

 それで今後の予定だが、とりあえず屋敷へと戻ることになった。またクワガタとすれ違ったが、何か縁でもあるのだろうか?エンカウント率が高すぎる。普通に倒せるだろうが、1度でも面倒だった敵って自分が強くなっても避けたくなるんだよなあ。まあ大したことでもないが、起きたことはそのぐらいであり、屋敷に着いた。クルトは鍛冶場へ、アゲハは今創作意欲が凄いらしく、部屋へと駆けて行った。ショウはまた用事ができたようで、王都の先の町へと進んでいった。


「さて、どうする?」


「そうだねぇ……今朝買った食材でも処理しようかね……マスターも折角だからどうだい?」


「……まあやることもないし、ご相伴にあずかろうかな」


「ノリがいいねえ、じゃあ早速作ろうかな」


「わ、私も手伝っても!?」


「ん?ああなるほど……じゃあお願いしようかな」


 このゲームで食べたものと言えば空腹を満たすためだけの可もなく不可もない携帯食料と、トリモチさんの喫茶店で食べたケーキぐらいか。村の茶屋はお茶飲んだだけだから特に食べてはいなかった。トリモチさんの所のケーキは美味しかったなあ。あれからちょくちょく様子を伺っているが、休業している時以外は山のようにNPC、プレイヤーが並んでいるので2回目の来店は今のところできていない。あの時並ばずに入ることが出来たのは奇跡だと実感できたのが納得というかなんというか……それにしてもモモの料理かあ。味覚はまとも(失礼)なので、変な料理が出てくることはないだろうが、どんな系統の料理が出てくるのだろうか?イメージとしては野営料理的な物が出てくる感じがするが、意外とフルコースとかで出てきそうな料理が出てきてもそれはそれで別のイメージ通りのような気がする。コトネさんも手伝いに行ったようだが、料理が上手いという話を聞いたことがあるので問題は全くないだろう……俺は手伝わないのかって?野菜炒めがせいぜいな俺なので2人を手伝ったところで足手まといにしかならないだろう。というかコトネさんの料理か、いくらゲームの中とはいえこれだけリアルな世界の中だと、クオリティも一際だろう。バレたら中学の同級生に殺されそうだなー。コトネさん人気あったもんなあ……食器出しぐらいは手伝うか。


「はい、お待ち……まあ盛り付けは手伝ってもらったから驚きとかはないか」


 いや、十分に驚いています。めっちゃ綺麗に盛り付けられた料理が出てきた。わー、美味そう。


「凄いけど、これどこで覚えたんだ?」


 普通の料理ならともかく、これは一朝一夕で作れるものではない。まず、何かしらの指導みたいなものを受けてないと無理だと思うのだが……?


「あー、まあ……昔は作る機会があったのさ……」


 どこか遠くを見るような目でモモ……アスモデウスが答えた。うん、まあそういうことなのだろう。今は悪魔という種族で、それっぽい振る舞いというか、性格になっているが、元はどうだったのだろうか……そこら辺の謎も追々解けていけるのか、とりあえず天使に勝てるようにならないとなあ。


「モモさん凄いですね……手際がプロみたいでした」


「確かに淀みなかったからなあ」


「ははは、照れるね」


 疲れた様子でコトネさんが戻ってきた。全然お役に立てないと洗い物を申し出てきたのだが、流石に皿を出して、盛り付けを手伝ったと言えなくもないぐらいのレベルしか働いていないので俺がしようと言ったのだが、頑なに押し切られてしまった。調理道具はまさかこんな本格的に料理をする人がいると思っていなかったので、必要最低限ぐらいしか買っていない。どうせなら買うだけ買っておこうかな、作るのモモとかだけど。3人揃ったので実食。


「うわ、美味い」


「美味しいですね……」


「そりゃあ良かった。長年1人で食ってたから味付けがどうもねぇ」


 美味いわー。モモもコトネさんも料理人系統のジョブは無いのでその分の補正はかかってなく、トリモチさんの時のような体験した事のない驚きはないが、普通に美味い。こんなの食ってたらカップ麺とか食えなくなりそうだなー。そういうクレームとかあるのかな?VR技術は詳しくは知らんが、初期は法律やら何やら面倒だったと歴史の教科書になっているぐらいだからなあ。コラムにちょっと載ってるぐらいだったけど。

 このゲームの世界の食材は、肉はまあ名前はファンタジーな感じだが見た目は普通なのしか基本的にないし、野菜などは色と形が微妙に個性的なだけでほとんど現実と同じである。なので、出てきた料理も特殊な見た目の料理は無い。もちろん和洋中のくくりはないので、似たような見た目のものはあっても、ごったにテーブルに並んでいる。


「へえ、そんなにそこのスイーツは美味しいのかい?」


「はい、この世のものとは思えないほどでした」


 2人はトリモチさんの店の話で盛り上がっていた。機会があったら行くのもいいだろうが、はたして上手く空いている時に行けるかどうか……並ぶしかないのかなあ?まあ暇な時とかに並んでみるのもいいかな。


「いやあ、美味かった」


「ごちそうさまでした」


「気に入ってくれたようで何よりだよ、自分の好きなようにしか作ってなかったからねぇ」


 割と3人で食べるには量があったが、美味かったおかげで難なく完食してしまった。クルト達の分も残した方がいいかと思ったが全て食べてしまったので早めに証拠隠滅しなければ。コトネさんも綺麗に食べるのにどんどん口に吸い込まれて行くので驚いた。最近、中学の時とイメージが違ってきて意外と面白い人だなと思う。さて、まだ時間はあるからどうするかな?1回昼飯食べるためにログアウトするとして……今美味いもん食ったからいまいち食欲が……腹は減ってるけど面倒な精神状況になってしまった。なんとか切り替えられればなんとかなるからしょうがないか。


「こ、この後なんですけど……良かったら村にまた行きませんか?」


「それはいいですけど、何かしたいことでも?」


「具体的な事はないんですが、まだ詳しく見れてない所もあるので……」


 ああ、なるほど。確かにイベントのヒントになるようなものや人がいるかもしれないしなあ。こうして間隔が空いているときに見てまわるのは必要だな。


「そうですね、やりたいこともないので良いですね……モモは?」


「ん?いや……まだ別行動かな、ちょっと調べたいことができたし」


「調べたいこと?」


「確信できるようになったら話すよ。今話すと混乱させそうだし」


 まだ短い付き合いだが、こういう変な嘘は言わないはずなので多分大丈夫だろう。流石に最後の皿洗いぐらいはさせてもらった。コトネさんがそれも私がと言ったが、何もしてないのはと言いさせてもらった。一応ちゃんと洗えているはずだから大丈夫なはずだよな……?その後部屋に戻りログアウト。村で何か見つかるといいが。

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