第七話 満開……じゃない
家財道具も大体揃え、この前屋敷の防犯設備も設置が終わった。それにクルト達に頼んでいた新装備も完成した。大まかな見た目は変わっていないが、作製時に細かいデザインを伝えられたため腕、足装備も揃えることができた。あとコトネさんの装備もちゃんと完成している。前のより冒険者風味が増し、動きやすそうな格好となっていた。武器も新調したためこれで効率も上がる。ウリエルのせいで武器が壊れていたためてきとうに用意した物のままだったので、ここ数日全くレベル上げができていないため大してレベルが上がっていないが、これから頑張っていきたい。というわけでステータス。
Name:コウ
Level:46
Main job:武士
Sub job:剣士
HP(体力):10000
MP(魔力):500
SP(技力):880
STR(筋力):890(952)
VIT(耐久力):570(+760)
AGI(敏捷):1300(1469)
DEX(器用):910(919)
INT(知力):100
LUC(幸運):150
スキル
ジョブ:【抜刀】【朧流し】
汎用:【鑑定Lv.5】【採集Lv.3】
Exスキル
【貫牙剣】
武器:黒刀【豪】
所持金:52447810G
称号:[Exモンスター討伐者][駆け出し探索者][邂逅者][大罪契約者(色欲)][第3王女に目をつけられています]
……称号の、最後のやつは、なんなのでしょうね。称号というか状態異常みたいになってるんだけど。コトネさんにもあったみたいだが、最初に会った時には無く、この前のモモに関する時の後についたので完全に興味を持たれたという認識で良いのだろうか?面倒事が起きないといいのだが……まあゲームだからいいか、プレイヤー間の確執みたいな面倒事よりは100倍マシだろう。
そして装備を更新したことにより前より補正が凄いことに。VITに関しては前の10倍以上のプラス値が付いているが、まだ王都圏で作ることができる装備、クルトもまだ2次職なのでまだ伸びしろがあるのだ。俺の装備の系統だと高ければ1000は普通に超えるそうだが、ショウの鎧の補正の合計は4000近いとか。タンクだから高くなるのは分かるが、そこまでいくとちゃんと効果があるのか分からなくなってくる。装備の素材もこだわったおかげでVIT以外のステータスにも極微小だが補正がかかっている。仮にも1でも上がるのは嬉しいので、苦労して崖登りをした甲斐もあるという物だ。何気にその素材が1番重要だったりしたので驚いた。武器もなんと攻撃力補正が約4倍になっているのでこれでエクストラスキルを使わなくても切れることが多くなるだろう。ちなみにネーミングはシステムではなく、クルト君です。運営に用意された物以外は命名が自由なのでツヴァイアットでは名前が残念なのもあった。あそこで作る武器に神剣とかをつけるのはいかがなものかと多々思う機会があったりしたなあ。
色々話したがなんと今日は春イベント初日である。ショウ、コトネさん、モモ、見てみたいということでクルト、アゲハもおり、全員で行くことに。
「はい、みんなちゃんとハンカチとティッシュは持ったかな〜?」
「遠足かよ」
ハンカチはともかくティッシュはあるのか。モモもいるのだからよく分からんノリは止めようか。あとショウがリーダーっぽくなってるけど人数の関係でショウはハブられている。そりゃモモはちゃんとパーティに入れないとね。別に今回はフィールドボス戦ではないのでクルト達を入れる必要は割と無いのだが、念のためである。
「そういやモモってその村行ったことあるのか?」
「あるのは知ってるけどねぇ……あの辺り近づきにくいんだよね」
はて、なんか悪魔特効でもあるのだろうか。さてはイベント説明にあった御神木かな?本当に神が宿っていたりするのだろうか。神といっても土地神の類だろうけど。それにしても村は存在自体はイベント前からあるのか。イベントになるとぽっと出現するタイプではないのはなかなかこだわっているというか。
「じゃ、じゃあ出発しようか」
「おーう」
目的地はフィーアル手前の森にある村。フィーアルを通り、森へと入る。そういえばモンスターとか出ないのかなと思ったが、どのフィールドにもそういう地域はあるみたいでそこが村になっていたり、休憩場所になっていたりとするようだ。なお、道中は例のクワガタや面倒な幼虫は普通に出るので注意しながら進む。だがモモが探知系の魔法で探ってくれているので幾分か楽だった。進んでいるとモンスターと会う頻度が少なくなっていき、人工物が見えてきた。そして森を抜けると一面の桜が……無い。もちろん桜の木は村の周りを囲むように何本もあるが、咲いてはいるが7分どころか5分咲いているかどうかといったところだ。
「これが春イベントの舞台ですか……?」
「全然咲いてない……」
「どうしてでしょう?」
「あらら」
「あれ、なんかピリピリしない、なんでだろう?」
上から順に、クルト、アゲハ、コトネさん、ショウ、モモの感想である。俺もなんというか期待外れ感が否めない。あと、最初の3人は分かるが後の2人はなんだろう。ショウは声に出すならもう少しなんか欲しい(理不尽)し、モモはその感想は結界に阻まれたことのある悪魔みたいな感じだぞ、実際悪魔だけど。
「ピリピリしないってなんだ?」
「前に近くに来たときは弱めの聖属性魔法をかけられてるみたいな不快感があったんだけど、今は全然無い」
じゃあ実際に聖域みたいな感じになっていたのだろうか、この話を聞いたショウの反応から安全地帯の特性ではなく、この村が特殊だということが分かるので、割と御神木が御神木してる(?)のかもしれない。
「ま、まあ何にせよとりあえず村に入ろうか。事情が分からないと考えようも無いしね」
「そうですね」
「そうだな」
いざ村へ。村は桜の木に囲まれていることを除けば至って普通の村だった。プレイヤーはイベント初日ということもあり大勢いるが思っていたよりかは少ない。サーバ事で分けられているとかかな、人でごった返しているよりはとても良いのでありがたい。
「入ったは良いけど、ここからどうするんだ?」
「ん?別に自由行動でいいんじゃない」
「なんじゃそら」
「いや情報収拾という意味でもね、各自好きに回ってみた方がいいと思うんだ」
……それもそうか。というわけで全員で予定を決める。モモはせっかく入れたので1人で見て回るとのことでフラッと歩いていった。プレイヤーが多いので1人で大丈夫かと思ったが、魔法でどうにかするみたいだった。クルトは鍛冶場があると聞きつけたので保護者のような感じでショウがついていった。残るは俺とコトネさんとアゲハだが、この村の桜は染料に使えるらしく、それを使った染め物やなんと和服もあるそうなのでそれを扱っているという店へと向かうことに。和服といってもとても近いモドキみたいで、王都より先の町に和風の町があるらしく、そこから服のデザインを取り入れ特産の染料と合わせたそうな。なぜこんな詳しいかというと特産はあるのかと近くの村の人に聞いたところ色々と話してくれたからである。あとは今年の桜は咲きが悪く、村でも話題になっているとか。イベント紹介は満開の桜とか書いてあったから原因を探せばいいのだろうか?
「ここですね」
村の規模の割に意外と大きい。特産の染料を扱っているだけあって買いに来る人も多いのだろうか。中に入ると鮮やかな桜色の生地や衣服がたくさんあった。試着もできるそうで、女性2人は足早に服の森へと入っていった。ついてきたは良いけどどうしようか、入口で待っ……あ、はい行きます行きます。
何着か持っている2人と一緒に試着室の方へ。感想とか聞かれるのかな、気の利いた事とか絶対言えないぞ。
「……ほらリーダー、さっさと出てきてくださいよ、終わってるでしょ」
「うーん、流石に動きづらくて面倒だね、これで着方合ってる?」
なんか見たことあるプレイヤー。そしてこの店のものであろう服を着て試着室から出てきたプレイヤーはめちゃくちゃ覚えがある。
「え?あの人……」
コトネさん、目を向けるんじゃありません。気づかれるでしょう。
「ん?おやあんた達は……」
オーウ……気づかれた。まあしょうがないか近かったし。そこにいたのは少し前に会ったPKである、カリファと弓使いであった。なぜここにいるんだ。




