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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第二章 春だ!桜だ!春寒料峭。
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第五話 入学式って入学式だけじゃない


「……まあ、似合ってるけど普通ね」


「そりゃそうだろ。ただの制服なんだし」


 今俺は、言葉の通り、高校の制服を着ている。なぜかというと今日は入学式である。ついに休みが終わってしまった。しばらくはゲームをする時間が減ってしまうがしょうがない。朝食を食べ終え、持ち物の確認も終わり、家を出る。


「いってらっしゃい、気張ってねー」


 いや何を頑張るんだ。入学式だから大したことがあるわけじゃないだろうに。それにしても良い陽気だ。


「あー、暖かい。やっぱり春はこんな感じゃないと」


「おーい、鋼輝」


 この前は暑かったからなあ。年中このくらいだと過ごしやすくて良いんだが。ありえもしないことを考えていると見知った声が。


「あれ、お前もこっちの道?」


「そうそう、途中に坂があるんだけど、傾斜がキツくて。こっちの方が楽なんだよね、2、3分ぐらいしか変わらないし」


「へえ、あっち行かないからな……池田は?」


「坂下さんと待ち合わせだって、登下校途中まで一緒だから喜んでたよ」


「いつも通りだなあいつ。てか坂下さんって?」


「……コトネさんのことだよ……」


 あれ、そうだったっけ?まあ、セーフセーフ。ゲームの中だと名字なんて呼ばないからなあ、マナー的にも。そんなこんなで色々と話していると目的地である高校に着いた。高台にあるから、行きが上り坂で面倒だった。


「やっぱり桜が満開だと春って感じがするよね」


「中学の所は去年、すぐ雨が降って散ったからな」


 正門の横に大きな桜の樹があり、天候に恵まれたおかげで、絵になる程盛大に花を咲かせている。まあそこまで興味はないので、さっさと通り、玄関へと向かう。クラス表が張り出されていたので靴を履き替え確認しに向かう。


「あ、みんな同じクラスか。運が良いね」


 一緒のクラスか。確かに運が良いと言えば良いか。横に簡単な校内地図が貼ってあったのでそれを見て教室へと向かう。教室に入るとすでに何人かいて、その中には池田と坂下さんもいた。席は案の定出席番号順だったが、俺達の名字だと俺の後ろが翔斗になる。

入ってきた俺達に気づき、女子2人がこっちにきた。


「お、来たね。鋼輝も久しぶり〜」


「お、お2人ともおはようございます……!これからよろしくお願いします」


「おはよう、坂下さんもそんなにかしこまらなくても……」


 結構な頻度でゲームの中で会ってるんだからそんなに固くなるか?リアルで会うのはまたちょっと違うのかな。


「で、進捗は?」


「見ての通りだよ。そんなすぐには無理だって」


 何やら幼馴染同士で話しているが、こそこそ話しているので大して聞き取れない。そんなに大したことではないだろうから別に良いか。4人でこれからの事とかを色々話していると担任らしき人物が教室に入ってきたので、話を終え2人は席に戻っていった。池田は翔斗の後ろだが。さてそろそろ入学式か。






 いやあ、やっと終わった。入学式もその後の自己紹介や諸連絡も何事もなく終わった。何人か「Arkadia Spirit」をやっていると言った人がいたが、まあ別に俺や翔斗は言っていないので特にその話題で話しかけることはないだろう。普通のプレイ状況だったら、多少話したかもしれないが、持っている情報が情報なので万が一があると面倒臭いというのが理由だ。何事もなく、とは言ったが強いて言えば、提出物を回収した際に、今日は高校初日、委員も何も決まっていないため出席番号1番というせいで手伝わされることとなってしまったぐらいか。大した重さではなかったが、いかんせん面倒臭い。これだから何かしらの先頭というのは厄介なんだ。物を頼むときに都合の良い理由になるからな。しかもなぜ職員室じゃなく理科室なんだ。階段2階分も登る羽目になった。担任が理科担当なのが悔やまれる。さて、運び終わったし戻るか。階段を降り、教室へと向かおうとすると曲がり角の向こうから何かが飛び出て、避ける暇もなくぶつかった。


「きゃ……」


 女子、同……学年か。


「あ、すみません」


「いえ……こち……す……ませ……」


 素早く歩き去ってしまった。走り去ってじゃないのかと言われそうだが、あの光景は歩き去るという方が合っているだろう。多少ぶつかっただけなので、怪我もないだろう。結構な速度で歩いているのに音がないから気づかなかった。よくあんなに静かに移動できるな。


「あ、戻ってきたね」


「あれ、待ってたのか?」


「うん、2人は帰ったけどね。昼に新イベントの発表があったみたいでね」


 そうなのか、学校だから端末使えなかったからな。端末を取り出し公式のサイトを調べると確かに新イベントの概要が載っていた。


『〜新イベントのお知らせ〜


来週13日より新イベントを開催いたします。

お題は季節にちなみ『春』。

フィーアル手前の森の北東部にある村が舞台です。

春になると現れるモンスター、満開の桜など季節を感じさせる様々な風物が待ち受けています。

村の御神木の桜は一際大きく、鮮やかな花を咲かせていることでしょう。

ぜひ写真機で撮影するなど今しか見られない風景をお楽しみください。

探索者の皆様の旅路に幸多からんことを』


「……これだけか?」


「いつもこんな感じだね」


「結構独特なイベント予告だな」


「最初の頃は説明がアバウトすぎて分かりづらいって多少騒ぎになってたよ」


 確かに分かりづらい。春らしい、ということは分かるが、実際何をすれば良いのか分からない。まさか桜綺麗だなで終わるわけはないだろう。


「というか、写真機ってなんだ?専用のアイテムみたいなものか?」


「うーん、そうなのかな?でも、写真、だから多分カメラ機能のことかも。これイベント説明の時、所々言葉遣いが変なんだよね」


 運営は校閲とかしてないのか?文章が独特なのはまだ良いとして、誤解を招きかねないと思うのだが。


「そういえば前のイベントの時はどうだったんだ?」


「今まではハロウィンその他をごった煮した秋イベント、クリスマスをメインに題材とした冬イベント、後は新年祭かな。どれも後から見れば予告の通りなんだよね」


 翔斗によると新年祭を除いて、各イベントは大まかなストーリーが用意されており、それを進めていくことで記念アイテムやイベント期間中役に立つアイテムが手に入れられるとか。そこは普通なのか。


「まあ普通に桜を楽しむわけじゃないのは確かだろうね。多分桜がまともに咲いてるかも怪しい感じがするけど」


「そうか?春イベなのに本末転倒……ああ、原因をなんとかして満開にするみたいな?」


「そうそう、合ってるか知らないけど」


「ストーリーって言ったけど、全プレイヤー共通なのか?」


「いや、パーティごとかな。前のイベントだとイベントの中心、今回の場合は村だけどストーリーに関わっても、他のプレイヤーと出くわしてもおかしくないように配慮されてたよ。ちなみにパーティを解散して別の人と組むと、1番ストーリーが進んでいる人に合わさせられるから気をつけてね、大丈夫だと思うけど」


「まあやってみないと分からないか」


「そうだねー……コトネさんも誘うでしょ?」


「ん?まあそりゃ」


 あとクルト達も誘うか、というかどちらにしてもやるだろうし。生産職が活躍できるタイミングはあるのだろうか。多分大丈夫かな、生産職でもエクストラスキルが手に入れられるような可能性を用意しているぐらいだし。


「さてそろそろ帰ろうか」


「そういやそうだな、時間が少なくなるから出来るだけ時間取らないと」


 「Arkadia Spirit」を始めて初のイベント、さてどんな感じなのか楽しみだ。

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