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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第十一章 始まるは人の世
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第二十五話 少年達は次の舞台へ、歯車は増えていく


 朝。起きて、顔を洗い、朝食を摂り、歯を磨いて着替える。端末を起動して連絡が無いか確認し、SNSを開いて何か面白い投稿が無いか一通り眺める。

 そろそろ家を出る時間が近づいて来たので、今日必要な教科書やらを入れたはずのリュックを背負う。


「じゃあ行くわー」


「はーい、行ってらっしゃーい」


 母からの返事を背に、玄関のドアを開け、外へと出る。

 天気は、特筆する事が何も無い晴れだ。学校へと向かってしばらく歩けば、別の道からとても知った顔がやって来るのが見えた。


「鋼輝くん、おはようございます」


「琴音さんおはよう……何でこっちに?」


 タイミングが合えば通学途中に会う事はあるが、この辺では無い。琴音さんの家からは若干遠回りになるはずなので不思議に思った。


「少し手前のコンビニで買いたい物があったので……」


「なるほど」


 よく見れば、琴音さんの持つ鞄から何かの商品のビニールがはみ出ている……ジロジロ見るのは失礼か。

 別れる理由も無いので、そのまま2人で学校へと向かい始める。


「あれ、今日は翔斗が来ないな?」


「……そうなんですか?普段はもう一緒にいますからね」


 少し進んで、翔斗が来る道には誰もいなかった。今日は家を出るのに特に時間がズレた覚えも無いし、まさかあの翔斗が時間がずれる様な事になるとも思えない。


「まあ池田かな?」


「ああ、百合さん……」


 池田と来るのだから、あちらがずれれば2人まとめてだ。確か1回ぐらいあったはず……1回しか思い浮かばないのは異常だな、あいつの生活習慣どうなってんだ。


「万が一休みなら連絡来るだろうしこのまま行くか」


「そうですね……そういえば最近どうですか?」


「あー……やる事がレベル上げぐらいしか無いし、それでもレベル中々上がらないし……ボチボチかな」


「純粋な戦闘職だとそんな感じですか……」


「琴音さんは?」


「私は、アルカディアから出たレシピとそこから他の人が派生させたレシピが大量過ぎて……」


「……そっちもそっちで終わりが無いかあ」


「やる事が無いよりは良いですけどね」


「それはそうだ」


「おーい、鋼輝!」


「琴音ちゃーん!」


「あ、来た」


「遅れただけみたいですね」


 学校が見えた辺りで呼ばれたので、後ろへ振り返ると、翔斗と池田、それに西田さんもいた。

 理由を聞けば、3人一緒に来る為に少し遅れた……という訳では無く普通に池田が遅れただけらしい。3人一緒に来る為に時間を早目にしたせいで寝坊したのは何とも言えないな。


「次から、次からは大丈夫だから!」


「まあ全然遅刻をする時間じゃないから良いけどね」


「百合さんらしいと言いますか」


「そうですね」


 5人で学校へと入る。授業は面倒だが、受けなければ人として色々と不味い。

 とりあえず数時間耐えれば昼休みが来る訳だ。まあ午後も授業はあるけど。


「で、どうしたんだ、それ」


「最近購買混み過ぎるのどうにかしてほしんだよねー……」


 池田の制服が若干よれている。購買の人集りでもみくちゃにされたせいなのは明白だが、そこまで大激戦なのだろうか。毎日弁当を作ってくれる親には感謝しかない……今更だけど。

 琴音さんも今日は弁当では無いみたいだが、購買には行っていない。どうやら朝言っていたのがお昼代わりらしい。菓子パン3個。


「まあ買えただけ良いでしょ」


「1個だけだけどね。まあ愚痴るだけ無駄かな」


「では私の1つどうですか?」


「え、良いの!?食べる食べる」


 池田は遠慮無く琴音さんの差し出したパンを受け取った。お互いに良いのなら、それで良いか。


「あ、そうだそうだ。「Arkadia spirit」がメンテナンスするってさ」


「は?そりゃゲームなんだからメンテぐらい……ぐらい……時間取って?」


「そう」


「マジかー……」


「……そういえば、それらしいもの今まで無かったですね?」


 そう、「Arkadia spirit」は今まで新イベントを開催する前ですら、プレイ出来ない時間帯を作ってメンテナンスを行っていなかった。全てのアップデートを全てのプレイヤーに影響無くこなして来た。

 そうして来たゲームはこれまでにもいくつか例があるが、「Arkadia spirit」程のクオリティでそれを成し遂げたのは初めてのゲームだった。

 そして、そのゲームがわざわざ時間を取ってまでメンテナンスをすると言うのだから、驚きもしようと言うものだ。


「てか、それいつ出たんだ?朝見なかったけど」


「ああ、5分前だよ」


「タイムリー……」


「それで内容はどんな……調べた方が早いですね」


「いつもなら説明するけど、結構量が多いからね。それぞれ見た方が早いんじゃない?」


「そうか」


 端末を取り出して、公式サイトを確認する。

 確かにメンテナンスのお知らせが更新されていた。相変わらず告知の時間に一貫性が無いな。

 それで内容といえば、メンテナンスは来週の月曜日を丸々使って行われるらしい。今日日メンテと言えば、3時間ぐらいがせいぜいなのに丸一日。何が行われるのか恐ろしい限りだ。

 画面をスクロールして行くと、メンテナンスの大まかな内容に移った。

 

・新ジョブの実装


 成る程。


・それに伴うスキルの追加


 そうだろうね。


・サーバー増設に伴う動作調査


 今?何故?


・新種族の追加


 は?


・新大陸の実装


 おい。


 後は、バランス調整とか細々とした事が書かれていたが、そんな事はもう気にしていられない。


「そんな素振り無かったけど……!?」


「この後どうするのかとは思ってたけど……派手に来るね……!」


「新種族ですか、定番のエルフとか来るんですかね?」


「そういえばそのゲーム、PVとか人間しか見かけなかったっけね。出てないだけかと思ったら本当にいなかったんだ」


「一応天使と悪魔はいますけどね……」


 ついでとばかりに見ていた池田も驚いている。というか、あの規模の大陸レベルのフィールドをもう1つ追加するつもりか。大胆だな……だからサーバーの増設か。


「新種族については……プレイヤーは変えられるのかな?」


「さあ……まあその時になってみないと分からないしな」


「プレイヤー自体が設定若干謎というか、雑だからなあ」


「どういう事?」


「あ、それはですね……」


 池田にその辺は誰も話していなかった様で、隣の西田さんがざっくりと説明を始めた。ネタバレ云々は……まあ良いか。池田も誰かに話す質じゃ無いし。


「とりあえず……いや、どうしようも無いね。NPCに聞いたって分かんないだろうし」


「その時まで楽しみに待ちますか」


「とりあえず、もうすぐ授業ですね」


「うわ、本当だ」


 話し込んでいたら、いつの間にか授業が迫っていた。急いで広げた物を片付けて、教室へと向かう。1週間後の事でなく、目の前の授業に集中……出来るか!






「……さて、何するかな」


 学校も終わり、課題も済ませログインした訳だが、方針に迷う。昨日までならレベル上げに勤しむのだが、昼の情報がなあ。とりあえず下へ降りるか。


「あ、コウさん!見ました!?」


「アップデートの件か?見たよ」


 下へ降りると、金属の棒を数本担いだクルトと遭遇した。何に使うのかとツッコみたいが、たまにあるので止めておこう。


「楽しみですね、ドワーフとかも出て来るんでしょうかね!?」


「ああ、そういうのもあるよな」


 生産職、特に鍛治系でファンタジーというならドワーフは必須だろう。このゲームは今まで人間しかいなかった……何かよく分からなかった天使と悪魔は横に置いておこう。

 そして、その今まで無かった要素が来るとなればテンションが上がるのも無理はない。俺もワクワクしている。


「まあ、何が来るかは分からないからな」


「そうなんですよねー……まあ夢見るのは自由ですからね!」


「そ、そうだな。そういえばアゲハは?」


「アゲハならいつも通り作業部屋ですよ。修理ですか?」


「いや聞いただけ。レベル上げ行ってくるわ」


「そうですか、頑張って下さいね」


「おーう」


「あ、コウさん……!私も良いですか?」


 丁度ログインしたみたいで、コトネさんが階段を降りて来た。ヒーラーがいればポーションを使わなくても長時間動けるし、何より経験値効率も良い。そもそも一昨日も一緒だった。


「もちろん、アイテムは?」


「問題無しです!」


「じゃあ行こう……何処が良い?」


「あ、じゃあ雪山の方で……」


「そこか……まあ大丈夫か」


「じゃあ僕は行きますね」


「そっちも頑張ってな」


「はい!」


 クルトはそのまま屋敷の裏の鍛冶場の方へ。俺とコトネさんも、レベル上げへと向かう為に馬車乗り場へ。


「楽しみですね」


「そうだな……定期テストも迫ってるけど」


「今回も良ければ教えましょうか」


「……お願いします」


「はい!」


 本当にコトネさんには頭が上がらない。

 さて、アップデートまでにレベルを100に出来るかな……流石に無理か。


これで最終回となります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

出来れば毎日更新をキープしたかったのですが、中々上手くいきませんでした。

更新間隔を含め、反省点は様々ありましたが、この物語を読んで少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。

改めて、最後までお読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございました。そして完結おめでとうございます。 一読者としてはまだまだ読みたいという気持ちもありますが、エタではなく完結で読み終えたこと嬉しく思います。
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