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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第十一章 始まるは人の世
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第十七話 「懲罰」

タイトルは仕様です。


「さて、色々不安な面子だね」


「まあ他もそうだけど、ここは特に急拵えのパーティだからね……」


「俺も天使と真っ向から戦うには微妙だからなぁ……」


「それよりも私はホマスが……リアルの名前言いそうになった」


「止めてね!?」


 ホマスが慌てた様にツカサへと振り返る。勿論、リアルの名前を言いそうになったツカサが悪いのだが、それだけ悪い意味で有名なプレイヤーが知り合いだったというのがショックだったのだろう。


「僕も気づかなかったからね……」


「いやあ、言わないと気づかないもんだね!」


「俺としては、イプシロンがゴーを出した事の方が驚いたもんだけどね。言っちゃあ何だが、カリファより信用が出来るか分からないんだが」


「意外と言うね……まあそこはほら、あれだよ、僕の人徳ってや「「「は?」」」つ……そんなに否定しなくても」


「それは無いでしょ」


「否定……出来ないね」


「否定してね!?」


 先頭を走るマモンを除き、ツカサもアークもツネもホマスに向けて疑念の目を向けた。今までの行いが行いなので致し方無い事である。

 イプシロン達がホマスを起用した理由としては、ツカサとアークの人選と同じく地上にいなくても不自然にならず、尚且つ実力のプレイヤーという条件を満たすからというだけなのは間違いない。

 イプシロン達はルシファーやアスモデウスからラミエルの話を聞いた所、マモンをあてがってさえおけば後は数合わせで良いだろうという結論になったらしい。念の為に体裁は整えたみたいだが。


「おーい、もうそろそろ着くぞー」


「了解、じゃあみんな、気を引き締めていこうか!」


「え、あんたがリーダーなの?」


「パーティリーダーは一応俺なんだけどね……」


 マモンに声をかけられ、気を引き締める一同だったが、ホマスのせいで若干緩んだ。本来のリーダーであるツネは柄では無いので代わりがいるのはありがたいと思っても、人選が微妙に悪かった。

 走り抜け、辿り着いた先の部屋は広さを無視すれば倉庫のような様相だった。多少物が置いてあるにせよ、そこは天使がいる場所としては不釣り合いも不釣り合いと言わざるを得ない場所だ。

 しかし、そこにはもちろん1人の天使がいた。ブロンドの髪に、筋肉質と言える体格をした天使が。


「誰が来るかと思ったら……お前か、マモン。良かった良かった……あの時は取り逃したからな。日頃の行いが良いおかげだな、うん」


「なーにが日頃の行いだ……何でルシファーや姐さんはラミエルに俺をあてがうんだ……」


 ラミエルは威圧感漂う笑みでマモンの姿を捉えた。最近痛い目をみたマモンとしては若干及び腰になっているが、ここで自分が引くわけにもいかないので、内心で自分に喝を入れ拳を構える。


「いいぞいいぞ!さて、リベンジといこうじゃないか!」


「それはどちらかというと俺のセリフ……!」


「……俺達置いてけぼりじゃないか?」


「隙をつきやすいとも言えるけどね」


「とりあえず私達はマモンを死なせない様にすれば良いんでしょ?」


「そう聞いてるね」


 アークが楽器を取り出し、演奏を始める。付与術師系統程では無いにしても、バフをかけておいて損は無い。懸念であるラミエルもマモンにしか目に入っていない様で邪魔をされるという心配は無さそうだ。


「うん、久しぶりに聞いたけど上手いね」


「何言ってんの、当たり前でしょ」


「う、うん……じゃあ頃合いを見計らって僕達も介入しようか。今は入れる雰囲気じゃないし」


「それもそうだな」


 ラミエルとマモンは互いに睨み合っており、下手に邪魔をして不利な状況になっては元も子もない。

 ラミエルもいよいよ戦闘へと移るのか、身体から電撃を放ち始めた。マモンも能力を発動し、同じく電撃を放ち始めるが、その見た目はラミエルと比べると些か劣っていた。天使相手ともなると完全コピーとはいかないのが、今の所のマモンという悪魔の限界だった。


「じゃあ行くぞ……!ふっ!」


「ぐっ……重てぇな!」


 凄まじい速度でラミエルは拳を放つ。マモンはすんでのところでそれを受け流したが、その表情に余裕は無い。膂力の差は勿論、今のスペックはコピーしたもの、慣れているはずもなかった。


「そら!」


「がっ……!?」


 ラミエルは即座に体勢を変え、再度拳を放つ。これもまたすんでのところで腕を十字に構えて防いだマモンだったが、その勢いを殺す事は出来ず、吹き飛ばされて反対側の壁へとぶつかった。


「そら、これを避けんと死ぬぞ!?」


 ラミエルはマモンに息をつかせる暇も与えず、更に追撃を行う。マモンも反応しようとするが、劣化コピーの影響か、一歩遅かった。

 ラミエルの拳は直撃し、壁はひび割れ粉塵が舞う。ただ、拳を放った張本人であるラミエルは至極不満気にその拳を壁から引き抜いた。

 粉塵が晴れたそこにはマモンの身体は無く、粉々に割れた、元は丸太だったのだろう破片が散乱していた。

 ラミエルが後ろを振り向くと、数メートル離れた場所にホマスと肩を担がれたマモンがいた。


「危ない危ない。いきなり退場されると困るからね」


「はぁ、助かった」


「いやいや」


「……人か。マモンを助けたのは良い。良いが……邪魔をするな。『トニトゥルス』」


「え、ちょ」


 ラミエルは手を上に上げ、号令をかけるかの様に振り下ろした。すると、何も無い天井付近から雷撃が2人へと降り注いだ。


「ひぇぇぇぇぇぇ!!?」


「おわっ、お前……!」


 マモンから即座に手を離し、逃げるホマス。牽制だったのか1つも直撃せずにツカサの後ろへと隠れた。マモンはその素早い行動に面食らった様で、少し掠ったみたいだが。


「いや、私の後ろに隠れないでよ。隠れるならツネさんでしょ」


「俺の後ろも遠慮したいな……俺でもただじゃ済まなそうだ」


「ほらほら、ツカサお得意の拳でガツンとやっちゃってよ……痛!」


「やれる訳無いでしょ……」


 ホマスの頭をグーで叩き、呆れた様に息を吐く。

 ラミエルはそれ以上攻撃を加える気も無いみたいで、しばらくホマスの方を見ていた後、マモンへと視線を戻した。


「さてマモン、続きをやろうか」


「くっそ……やってやらあ!」


 マモンは着ていた上着を脱ぎ、少しでも身軽にした。

 少しばかり慣れてきたのか、その後の拳撃を多少なりとも凌ぎ始めていった。


「……で、僕達はどうしようか」


「割と1対1で何とかなってる……いや、ラミエルが手加減してるのかしら?」


「思ったよりも出番が無いな……一応バフかけてるアークと、さっきのホマスだけだ」


 プレイヤー側は巻き込まれない様に端に寄り、万が一に備えて身構えてはいるものの、空気は結局緩んでいた。アークも演奏する曲は緩すぎず、かといって戦っている2人を邪魔しない程度の速度のあるものへと切り替えていた。


「そういや、結局あの2人の関係って何だろうね?どう思う、男女のアレコレにやたら鼻の効くツカサさん」


「何かやな感じね?まあ……うーん……」


「あれ思ったより煮えきらないね?」


 肘をついて考え込むツカサ。驚いた表情で当人を見るホマスだったが、そもそも大して興味は無かったりする。


「いやまあ、そういう感じじゃないのは察せるんだけど。だとするとどういう感情で固執してるのか分からないのよねー。キャラ背景とか知らないと理解しようがないわ」


「ふーん」


「……あんたが聞いたんでしょうが!」


「ぎゃっ!?殴る事無いでしょ!?」


「だって勢い勇んで来たら、振るう相手がいないんだもの」


「それで僕にあたられても……」


「仲が良いんだな……」


「はは……」


 ツネの言葉に、アークが曖昧な表情で返した。

 戦闘中の2人を見れば、マモンの動きは益々精細さを増しており、何もしないプレイヤーを責める事も無いので、する事が完全に無くなった。

 ルシファーから聞いていたはずの話が来ればマモンはラミエルの能力を完全にコピー出来るらしい。そうなれば完全に互角となるわけで、自分達が加われば勝ち目が出てくる。しかして、ラミエルに関しては何か倒す必要があるのかと問いたくなる状況であり、ツネは頭を抱えた。

 こういう時に上に指示を仰ぎたいのに、その上は今は戦闘中だろう。何故にゲームでこんな事に悩まされなくてはいけないのか……とりあえず気楽にいこうと考えるのを止めたツネであった。


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