表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第十一章 始まるは人の世
272/289

第八話 急ぎすぎたが故に


「どうだったー?」


「苦虫5分の1匹ぐらい含んだ感じでアリだそうだよ。こちらとしてはあれでアリなのは面白くて良いけどね」


「邪道も良いとこだし、出来れば正道に行きたかったけどね」


「まあ、攻めてくるまでの余裕が分からないからね」


 教会から戻り、ワテルさんに結果を聞く。別に連絡をすればすぐに分かる事だが、それはそれ、現地で聞こうというイプシロンさんの提案である。

 俺達が行ったルシファーとの戦闘の作戦は、対策はともかく、邪道も邪道だった。ルシファーの性格からして若干厳しいんじゃないかとの声も出ていたが、どちらにせよやってみる価値はあるだろうとの事だった。

 結果は上々、一撃は一撃という事でクリアとなった。


「そもそも、今の戦闘も必要だったのかねぇ?どうなんだい?」


 モモがルシファーへと尋ねる。とんでもない事を言い始めたな。


「まあな。しかし、勝算が低過ぎるというのは困る。この年月でお前らの目が節穴になっている可能性はあるからな」


「心外だねぇ……相変わらず慎重な事で」


 モモが諦めた様に肩を竦める。

 あちら側として見れば、そりゃ不安だよな。まともな人員も揃わず負けるのは、流石に酷い。

 過程は納得出来るが、それはそれとして必須じゃないならやらなくて良いんじゃないかと思わないでもない。まあクリアしたのだから良いけど。


「とりあえず、これで悪魔は全員揃ったね?」


「マモンがいないですけどね……」


「あれは別に良いだろう」


「良いんだ」


 話を進めようと、イプシロンさんが切り出した。いかにも全員集合だ、みたいなノリなのでマモンがいないのが際立つ。そして誰も気にしていないのが憐れというか。まあ本人からしたらモモが連絡すれば、問題は無いだろうけど。

 とりあえず、話をまとめようという事で、空いている場所に全員集まる。円卓でもあれば丁度良いのだが、生憎そんな物を用意している人はいなかった。

 無い物はしょうがないと、全員地べたに座る。


「で、何が聞きたい?期待する答えを返せるかは分からんぞ」


「まあ、こちらも知らない事を1つでも知る事が出来れば御の字だから……何か質問ある人いる?」


「じゃあ……アルカディアの場所については?何処から来るかが分かればありがたいのだが」


「ああ、あれの場所はまあ察しがついているだろうが……」


 ワテルさんの質問に対し、ルシファーが上へと指差す事で答える。

 天空城という話だし、空にいる事は知っている。ルシファーは指を上に指したが、直上にいる訳では無いだろう。どうやらルシファーも詳しい場所は知らない様だ。


「うーん、それだと……」


「まあ、あいつらは基本的にこちら、特に人間を舐め切っている。城その物はご丁寧に真正面から来るだろうさ。ああ、来るのはこの国の首都だろう」


「それは分かりやすくて良いけど……流石に地上に降りては来ないだろう?乗り込む方法は?天使の方々も勢い良く出て来るとは思えないし……」


「そうだろうな。方法については……少し待て」


 そう言うと、ルシファーは小屋の中へと戻って行った。一体何やら……話の流れからして何か持って来るんだろうけど、そんな便利なアイテムがあるのやら。


「あ、出てきた」


「何だあれ……」


「ジャンルが変わってきましたね?」


 ルシファーが肩に担いで持って来たのはあまりにも近未来的な、杭の様な形の機械だった。いくら何でも、世界観が変わってくる……あの小屋から出てくる物じゃないだろ。


「そもそも、今のアルカディアは防衛機構によって守られている。それを解除しなければ天使を倒すどころの話では無い」


「それで、まずそれを?」


「そうだ。この『アルカディア外装防衛機構自壊権限槍』によって、引きこもりのあいつらを引き出す」


 杭じゃなくて槍だったか。いやまあ、あれそのものをアルカディアに突き刺すんじゃ無いだろうけど。というか、駆動部分(?)が青く光ってウィンウィン鳴って……起動してる?


「動いてないですかー……?」


「起動したからな」


「え!?」


「ちょっと……!」


「力があるのだから、構うまい?」


「構うよ……」


 何をしてくれてんだ、この悪魔。

 別に俺がする訳では無いが、他のプレイヤーとの兼ね合いもあるのだから、イプシロンさん達的には冷や汗ものだろう。


「あ、ちょっと席を外すよ……」


 ワテルさんがこの場から離れて行く。反応からしてフレンドからの連絡……取り返しがつかなくなってるなあ。


「え、流石に今すぐじゃないよね?」


「それはな。あいつらとて、まあ……1週間は確実に猶予を持って来るだろう」


「それならまあ……良いや」


「良いんだ」


「いや、良くは無いけどね……はあ」


 イプシロンさんが諦めたかの様に息を吐く。

 いきなりとんでもない事になった訳だが、まとめられる時間は多分あるのだろう。頑張ってほしい。他人事だって?いや、プレイヤーへの誤魔化しとか出来ないし。


「あー、みんな。山脈辺りで巨大な浮遊物体が出現したってさ」


「ああ、やっぱり……」


「面倒な事になったねぇ」


 ワテルさんが戻って来るなり、少し引き攣った顔でそう言った。あーもう、ノンストップだ。


「……はい!もう急いでまとめてくよ!という訳で一旦解散!コウくんやカリファは1週間後の準備をしといてくれれば良い、他のみんなはカバーストーリーやら連絡やら指令系統を作ります!はい!」


「了解……」


「その方がありがたいねぇ」


「じゃあ僕も……」


「あ、ショウくんは残ってね」


「えー……」


「頑張れー」


 ショウはまあしょうがない。俺は役に立てる事は無いので、コトネさんやモモ達と一緒に帰る。さてさて、準備をしないと。







「さて、いよいよ今日だな。時間が合って良かった」


「怒涛の1週間だったね。いやあ、疲れた」


「天使との戦闘は楽しみですね」


 出来うる限りのレベル上げやら、装備の更新やらを済ませるとあっという間に1週間が過ぎた。運営からの予告もあり、時刻は午後7時から。学生であれば余裕でこなせる時間帯だ。

 しかしまあ、結構忙し過ぎて学業の方が疎かになっており、若干の問題が……まあ、うん。大丈夫大丈夫。テストまでまだ期間もあるし。


「まあ頑張ってね。せっかくの機会なんだし……他のプレイヤーとか荒れてないの?」


「そりゃ、多少はね。でも、急に始めた運営に対してで、僕達の事に関してはイプシロンさん達が上手いこと隠してるからバレてないから大丈夫」


「意外とバレないのか、それともイプシロンさん達が凄いのか……」


 池田は相変わらず蚊帳の外ではあるが、これもいつもと変わらず本人は気にしていないから話しやすい。

 天使と悪魔の情報に関しても、イプシロンさん達が徹底的に情報統制を行なっている様で、今回の一件に関して話題になる事は無かった。


「あっちはあっちで結構な規模の雑魚戦があるらしいから、それを隠れ蓑に出来るのもあるだろうけどね」


「考えれば、残った5人で国を滅ぼすというのは色々無理がありますからね」


「ゲームでそれはなあ」


「とにかく、持ち物の選別やら何やらやる事あるからね。気張っていかないと」


「楽しみですね」


 西田さんがやたらウキウキだな。こっちとしては負けたらやり直しが効かない可能性があるだけに若干緊張しているのだが。

 とりあえず昼飯を食べ終え、今日の学業を消化する。急いで帰り、ログイン。夕食で一旦離れるだろうが、出来うる限り準備に時間をかけないと不安で不安で仕方ない。


「これとこれ………これは……無しと」


 ポーションは最高級品。これはイプシロンさん達から支給された物で、何とタダだ。ありがたや。

 装備の方は見た目は殆ど変わっていないが、補正値が軒並み上がっており、動き易さも少し上がっている。至れり尽くせりだ。


Name:コウ 

Level:94

Main job:刀王

Sub job:蛮将

HP(体力):10000

MP(魔力):1300

SP(技力):1860(2046)

STR(筋力):1650(2904)

VIT(耐久力):860(+3250)

AGI(敏捷):2330(3797)

DEX(器用):1850(2294)

INT(知力):100

LUC(幸運):150


スキル

ジョブ:【抜刀】【朧流し】【居合】【刺突】【滝割り】【極刀】【ディケイブースト】【レストリジェクト】【ウーンドリターン】【フラジャイルクイック】

汎用:【鑑定Lv.8】【採集Lv.8】【魔力操作Lv.1】【魔力感知】【罠感知】


Exスキル

【貫牙剣】【空走場】


魔法

『反剋』


武器:黒暝刀【諱鳴】

所持金:48597720G


称号:[Exモンスター討伐者][熟練探索者][邂逅者][大罪契約者(色欲)][第3王女に目をつけられています][春イベントシナリオクリア][迷宮踏破者][天使(堕)所有者][日誌回収3/5][宝真珠入手5/5][夏イベントシナリオクリア][未踏の宝No.5][天討者][秋イベントシナリオクリア][石板スライドパズルクリア]


 これで負けると、合わせる顔が無いというか、引退レベルだ。確実に居場所が無くなる。出来る事は全部したはずだ。


「コウー?」


「今行く!」


 下からショウが呼ぶ声が聞こえたので、談話室へと向かう。中へ入ると、全員集まっていた。更に加えて、シャーロットとメイドさんもいる。

 モモ、クローナ、ウリエルも含めて戦闘職は全員装備が新しくなっている。もちろん変えた所で何が変わるのか分からないベルフェゴールもだ。

 モモとベルフェゴールは俺と同じくあまり変わっていない。クローナとウリエルの天使組は普段のメイド服に近い物から、動きやすそうなドレスとなっている。似合っているけど……メイド服とどっこいか。性能は十分だから文句のつけようが無い。


「あ、コウさん……ど、どうでしょうか!」


「え、うん、似合ってると思うけど」


「あ、ありがとうございます!」


 これで良いのか、良いのかな?嬉しそうなら大丈夫かな。


「じゃあ行こうか。早めにあっちに移動しといた方が良いし」


「そうだな……クルトとアゲハも頑張ってな」


「はい、皆さんもお気をつけて」


「頑張ってねー」


「よろしく頼むぞ」


「おう」


「頑張ります!」


 シャーロットからの激励(?)にも答え、屋敷を後にする。いよいよ時間が迫って来た……まだ夕飯があるけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ