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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第十一章 始まるは人の世
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第七話 命の価値はゴミの様に


 5人で戻ると、対策の為の議論は既に始まっていた。先に帰っていたカリファは散々と質問されたのか、面倒臭そうなのを隠してもいない。


「ただいま」


「やっと戻って来た……後はイプシロンから聞きな」


「まあもう1回聞くかもしれないけどね」


「はあ……」


「ルシファーは?」


「時間がかかりそうだからって、小屋の中に戻ったよ。いるだけなら好きにしろとも言われたから、心置きなく作戦会議といこうか」


 小屋の方を見ると、確かに灯りがついている。何をしているのかは知らないが、これなら相手を気にせず話し合えるというものだ。まあ地獄耳で聞こえているという可能性も無くも無いが。

 とりあえず、ワテルさん達が用意した椅子に座り、話し合う体勢を整える。


「それでまあ……端的に言うとだね、鑑定は不可能だったよ。端から見るだけだったから、実際に戦った君達以上の事は分からなかった」


「そうですか……それは困った」


「だからあの質問攻めかい……」


 まさかの鑑定不可。予想外していなかった訳では無いが、こうなると情報量が段違いに変わってくる。

 ワテルさん達は役割が役割だけに意気消沈といった感じになっているが、そもそも頭は回る人達なので、普通に俺なんかよりは役に立つと思うので立ち直って欲しい。


「じゃあ、とりあえず僕達の分かる情報も出していこうか……と言うけど、差し当たって気づいた事ある?」


「僕はオーラが出た後、最初に死んだからなあ……」


「ショウさんは、しょうがないですね……私もただ突撃しただけなので何も」


 ショウが苦笑いを浮かべているが、流石にアレはしょうがない。タルさんや、恐らくコトネさんも補助系なのだから、そもそもルシファーの動きを見れたのかどうかと言ったところだ。


「僕もね……折角エクストラスキルも発動したのに」


「ああでも、少しずつオーラ的なのが小さくなっていったよな?」


「それは、時間制限の様なものだと判断しているよ」


 俺がやられたのは4番目。俺がやられる瞬間には1回りにも満たないが、少し小さくなった様な気がした。

 ワテルさんの結論は納得できるもので、あの強力な強化に制限が無いというのは考えづらい。というか、無いと攻略のしようが無い。


「んー……まあ頑張って思い出して、試して行こう。回数制限とか無いよね?」


「待っている間に聞いてみたけど、何回でも付き合うとの事だよ。彼に対応するぐらいの力は早急に見せてほしいみたいだ」


「それはありがたい」


 さて、いつまでかかるやら……明日学校だけど……まあ、一晩ぐらいは、大丈夫かな?







「ふむ、また挑むか。ちゃんと手は変えたんだろうな?」


「もちろんさ。付き合ってくれるんでしょ?」


「そうだな……確かに、今までよりは良い手かもな」


「それなら良かった」


 ルシファーの質問に大して、イプシロンさんが答える。今回は中々に好印象な感じだな……当たりかな?

 さて、今の状況としては試行20回目。つまりは19回ルシファーに頭を握りつぶされております。

 いやだってね、情報が全然無いから総当たりで試していくしか無い。デバフで固めたり、装備を変えてみたりしてみたけれど効果無し。とある方法で状態異常を与える事に成功したが、ダメージが入る前に治された。スリップダメージで一撃……という事も無理みたいだ。

 そういう訳で、手を変え品を変え試してみた。時間は経ってすっかり夜。幸い夜と言っても日付けが変わる程では無い。まだまだ試す時間はある。


「それでは、また始めようか」


 戦闘開始。ルシファーが構え、オーラを出す。しかしのそのオーラの大きさは、俺1人が挑んだ時よりも更に小さい。


「良し、やっと当たった……!」


「これで……!」


「……とりあえずは褒めておこう。しかし、そうであれば欠点も分かっているだろう?」


 ルシファーの言う通り。今の俺達は、仮にルシファーの能力が切れたとしても1発攻撃をもらうだけで死ぬだろう。

 何故かと言うと、ルシファーに相対している6人全員はHPが1割程しか無い。事前に減らしておいたという訳だ。

 俺1人が挑んだ時に、1度攻撃を凌いだ後の2回目の攻撃は気持ち遅かった。その時攻撃が掠っていてHPが6割程減っていた。会議の時に一応報告はしたが、確実に関連している確証が無いので、後回し。安直な方法から試していって今に至る。


「当てたからって、これで最後って訳じゃ無いだろうね?」


「もちろんそれは無い。勝てるまで挑むと良い」


「それは有り難いですね……!」


 対処法は確定した。HP参照なら減らしておけば良い……が、これはこれで難易度が高い。ルシファーの能力を制限したとしても、そのステータスは高いはず。全く油断は出来ない。


「今度はこっちから行くよ!【聖騎剣(エクスカリバー)】!」


 イプシロンさんがエクストラスキルを発動する。流石にこの状態で受け身になるのは不味いので、今度はこちらから仕掛ける。


「ふんっ!」


「これなら見えるよ……!」


 ルシファーの一撃をイプシロンが避ける。そのまま剣をルシファーに当てようとしたが、ルシファーが飛び上がった事によりそれを避けた。


「わざわざ跳んでくれるとはねぇ!」


「【抜刀】!」


 逃げ場の無くなったルシファーに対し、カリファと俺の2人で攻撃する。行先を塞ぐ様にして攻撃すれば……!


「このぐらいで勝ったと思われては……!」


 ルシファーは空中で体を捻り、カリファが振った大剣を軸にして、俺の刀も避け地面へと着地した。


「曲芸かよ……」


「ほら!攻撃!」


 ルシファーの動きに面食らったが、イプシロンさんの一言で冷静さを取り戻す。すぐさま追撃に移り、ルシファーへと迫る。


「【オーヴァードライブ】!」


 避けられたから真っ先に動いたカリファがスキルを発動する。イプシロンさん、少し遅れて俺も後に続く。


「まだ足りんぞ!」


 ルシファーは半身を逸らしてカリファの攻撃をまたもや避ける。だが後ろには……!


「【シールドバッシュ】!」


 大盾を振りかぶるショウがいる。イプシロンさんもすぐに迫り、前と後ろから挟み撃ちにする。


「はあっ!」


「む?ならばこうだ」


 2人でルシファーへと迫るが、ルシファーは迫るイプシロンの剣を躱して肩を掴んだ。イプシロンさんはその膂力に抗えず、ショウの方へと投げられる。


「うげっ」


「ごめん……!」


「まず2人だな」


 ルシファーの拳が2人に迫る。ここで2人も脱落されては困るとかいう問題では無い。速度は変わらないにせよ、足に更に力を込める。


「【滝割り】……ガッ!?」


 ルシファーを斬りつけようとした途端、顎に強い衝撃が。視界が揺れ、動いた視線の先にはルシファーの足が。

 恐らくは顎を的確に蹴られた事での……真後ろにいるのにそんな芸当……!2人を攻撃したのはブラフかよ。

 しかし、何故か俺のHPは全く減っていない。後ろ蹴りで力が入っていなかったと仮定しても、ルシファーのステータスであれば全損するはず。ブレる視界で周りを確認すると、何故かショウが消えて……肩代わりスキルか。


「うぐっ!?」


 俺がよろけている内に、イプシロンさんが頭を潰されて死んだ。このままだとやばい、早く立て直さないと……!


「次は……」


「【フラジャイルクイック】……そらァ!」


 俺へと振り返ろうとしたルシファーに対し、カリファが横から大剣を振るう。ルシファーは俺への攻撃を中断し、今度は屈む事でそれを避ける。

 その間に、この体勢から起き上がるのは時間がかかるので、いっそのこと後ろに1回転して体勢を立て直す。数秒も経っていないが、やっとフラつきが治った。


「ばっ……!」


 伸ばした腕を引っ張られ、そのまま頭をかち上げられたカリファが倒れる……これで3人!


「あとは、前を張れるのはお前だけだな」


「そうらぁ!」


 こちらをちゃんと視認されてる状態での近接戦闘は無理。ヤケクソに見える様に思い切り刀をぶん投げる。流石に明後日の方向には行かず、ルシファーの頭めがけて飛んで行ったが、少し体を逸らされて終わった。


「さて次に期待……む」


「行かせません!」


「えい!」


 俺へ近づこうとしたルシファーの両足に、コトネさんとタルさんが縋り付く。攻撃じゃないから、ルシファーも反応しづらかったか。


「次!」


「流石に、安直が過ぎるぞ」


 投げナイフを取り出し、次々に投げていく。しかし、最初の1本を受け止められ、その後の物を弾かれてしまう。


「そら」


「ぐえ」


 そして、最初のナイフを俺に向かって投げ……避ける時間も無く俺の頭に突き刺さった。もちろんHPはゼロになり、視界が暗転する。次の景色は教会の中……でもまあ、良し。







「……ふむ、まあこの短時間で気づいたのは褒めるべきか。次に期待しよう……そろそろ離してくれるか?頭を踏み潰すのは流石に……うん?」


「こ、これで良いでしょうか?」


「一撃ですよね?」


 ルシファーが足元の2人に話しかける。ただ、その2人はどちらもどこに隠し持っていたのか、小さなナイフを縋りついたルシファーの足に当てている。恐らくは力を込めても血のエフェクトが出るかどうかといった2人。しかして、ナイフの刃が当たった事には変わりなく。


「む、むむ……し、仕方あるまい」


「やった!」


「良かった〜」


 ルシファーは大分不満そうだが、1度口に出した事を変える事はそれ以上に阻まれる様で、2人の一撃を認めた。

 これまで大した行動をしてないからこそ、ルシファーも何処かで2人への注意を疎かにしていた。最初から考えていた訳では無いだろうが、それでも攻撃をすることは無いと判断してしまったタイミングを見逃さなかったのは良しとするしかない。

 ぶっちゃけ、この決着はルシファーとしては大分遺憾なのだが、諦めるほか無かった。


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