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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第十一章 始まるは人の世
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第五話 ちょっと試しに


 ルシファーに促され、小屋の前から移動する。森側を少し進むと、戦うには十分な広さがすっぽりと空いていた。狭い空間の割には大抵のものが揃ってるもんだ。


「さて、構えろ。初手は譲ろう」


「そりゃどうも……」


 やっぱり戦闘をする流れなのね。カリファが一方的にやられて、尚且つ全員が揃うのを待つ様な相手に力を見せよと言われてもな。


「そういや、勝利条件は?」


「ああ、言ってなかったな。一撃だ。一撃を俺に入れてみろ」


「一撃……?」


 倒して見せろと言うならまだしも、一撃ぐらいなら何とかなる気がなってきたんだけど。

 後からついてきたカリファに目を向けると、少し考え込む素振りをしてから首を横に振った。マジか、カリファも一撃を入れられてないのか……ちょっと見えてきた勝機が瞬く間に消え失せた。流星か何かですか?


「とにかくやるしか無いのか……!」


「やる気があるのは良い事だな」


「マスター、やるなら最初から全部だよ!」


「え?あー……了解」


 全部ね……【貫牙剣(アウラ)】もか。まあそのぐらいで死ぬ様な相手じゃなさそうだし、問題無いか。強いて言えばカリファに見られる事だけど……それ自体はそもそも前に見られてるし。


「さて、そろそろ来い」


「ああ、【貫牙剣(アウラ)】、【空走場(アハルテケ)】……『反剋』は駄目か」


「ほう、天賦獣……」


 『反剋』使えると便利なんだけどなあ。エクストラスキルに関してはルシファーは片眉を上げるだけ。大体察してそうだから、どれだけ虚をつけるか。


「【フラジャイルクイック】、【刺突】!」


「ふむ、悪くは無い、が」


 とりあえずとして、最大速度でルシファーに突っ込む。【貫牙剣(アウラ)】が発動していれば、どんなに頑丈だろうと防御不可。【空走場(アハルテケ)】で数センチ程空中に上がる事で目算も……ずれると良いな!

 しかし、ルシファーはかろうじて見える程の速度で半身をずらすだけで躱した。そして俺が突き出した刀を刃に触れないように挟み込み、動きを止めた。


「はっ!?」


「探索者としては中々の速度だな。俺の前では大して変わらんが。さて、どうする?」


 ルシファーは余裕の表情。

 掴まれた刀はびくともしない……しょうがない。


「手を離すか」


「【抜刀】!」


 やむを得ず刀を持ち替え、再びルシファーへと迫る。しかし、またもや見た目からはあり得ない速度で躱される。ステータス高すぎるだろ。


「やはり1人では無理か。そろそろ1回死ね」


 もう飽きたのか、ルシファーが俺の刀を捨てて拳を握る。何となく舐められていることに多少腹は立つが、実際力の差があり過ぎるので反論か何もない。

 ルシファーがそのまま俺へと拳を振り下ろしてくる。だがまあ……少しぐらい足掻きたい。


「【朧流し】……うぐっ」


 大分不安定な体勢だったが、何とかスキルを発動させてルシファーの一撃を受け流そうとする。ただ刀は折れ、俺の頭の真芯を捉えようとした拳は数センチズレただけ。俺の右頭部に当たり、右目の視界が無くなった。急所に近い為か、HPもゴリっと削れた。

 ルシファーは仕留めきれなかった事に少し、ほんの少しだが驚き、目を少し見開いた。


「ほう」


「【滝、割り】!」


「ふんっ!」


 反撃とばかりにスキルを発動させ、一撃を狙う。しかし、今の攻防では多少の隙も生まれなかった様で、ルシファー折れた刀の側面を正確に捉え弾く事で受け流した。


「うーん、無理か!」


「いや中々良かった。先の女はこれで仕留められたんだがな。とりあえずは、だ」


 「ぐえっ」


 今度こそとばかりに、ルシファーの拳が俺の頭を打ち砕く。避ける余力はもう無いので、素直に死……あれ、さっきよりも遅い?気のせいかな。







 はい、最寄りの教会。リザルトとしては刀が1本折れただけだから、まだ良いか。メインのは……あっちか。丸ごとだからな。

 戻ろうとしていると、カリファから連絡が来た。


『手酷くやられたね』


「お前は最初のでやられたって聞いたけど?」


『チッ、何だ聞いたのかい。まあ良いや、とりあえず戻ってきなー。イプシロンとワテルが連絡取れたよ』


「おお、分かった」


 そもそも誰もいないのがおかしかったんだ。フレンド欄を確かめると、コトネさんがログインしていた。ウリエルがいるから連絡しなくても大丈夫。後はショウとタルさん……ショウは遅れるだけだからその内来る。とりあえず今日集まると良いな。

 町を出て、再度ルシファーの隠れ家まで向かう。崖は……まあどうにかなるだろ。


「あ、コウ」


「あれイプシロンさん。丁度か」


「カリフから聞いたよ。やられたんだって?」


「カリファもですね」


「あはは、それも聞いたよ……こっちで合ってるよね?」


「そうですね」


 向かっている途中、同じく向かっているイプシロンさんのパーティに遭遇した。いつものというか、夏イベの時に遭遇したメンバープラスベルゼバブとミモザさん。

 分かれる意味も無いので、一緒に向かう事に。しばらく進めば、来た時と同じ場所へと着いた。


「はー……高いねここ。ここを探すのは後回しにしそうだよ。偶然に感謝だよ」


「じゃあ僕はここで」


「ああ、よろしく」


 ヒイロさんは、後から来たプレイヤーの為に目印となるらしい。たまに単独行動もするから、関係の無いプレイヤーからも怪しまれないとか。


「俺はエクストラスキルで降りますけど、イプシロンさん達は?」


「ロープだよ。結構長めのを持ってきたけど……まあそこから飛び降りても問題無いぐらいにはあるから。ミモザは受け止めれば良いし」


「よろしくお願いします」


 とりあえずそんな感じで降りる。イプシロンさん達はロープなので、時間はかかったが、安全に降りられた。残ったロープは上にいるヒイロさんが回収するから大丈夫だな。


「それで……何処?」


「確かこっちの……ああ、ここだ」


「へえ、見ても分かったかな……」


 偽装の壁をすり抜け、ルシファーの隠れ家へ。ルシファー達は普通に小屋の前へ戻ってきていた。


「戻ってきたかい。イプシロンも来たね」


「お前がベルゼバブの契約者か」


「ど、どうも」


 ルシファーは言及はしないものの、何処となく憐れみの視線を向けている様な。イプシロンさんもそれを感じ取っている様で、顔が若干引き攣っている。

 5分程すると、コトネさんとウリエルも来た。


「お前もかウリエル。予想はついていたが、よく死ななかったものだ」


「運が良かったので。ミカエルにバレた時はヒヤリとしましたが」


「最後に手を抜くのがあいつの悪い癖だ」


 何やら気になる会話をしているが、二言三言話しただけで終了してしまったので聞きようがない。

 そして続々と集まって行き、30分後には契約者がいないマモンを除く、全ての悪魔と契約者が揃った。


「マモンの話は聞いた。まああいつはいいだろう」


「割と緩いね……」


「問題は天使共に対抗出来るかどうかだ。1人いないぐらいは考慮するとも」


 特に何でも無い様にルシファーは言う。こっちとしても、マモンを呼び寄せるのは時間がかかるから話が早く進んで助かる。

 さて、力を示すという事だが、5人で一斉にかかれば良いのだろうか。


「……早速始めよう……と言いたいが、一応6人はいるべきか。では……そこの女が加われ」


「わ、私ですか!?」


 ルシファーが指差したのはコトネさん。マモンの代わりとしてウリエルのペアみたいなものであるコトネさんなら指定するのも分かる。回復役は欲しいから特に誰も反対はしない。


「これ、パーティ編成どうなるんだろうね?」


「私はこの子1匹だけですけど、それでも2人分……」


「ああ、全部アリになってるね」


 ショウが確認したところ、7人(6人プラス1匹)編成でも1パーティになっているみたいだ。今回の特例だろう。

 タルさんはデバフ役の梟1匹だけだが、アタッカーが3人いるので、割と何とかなるだろう。


「とりあえず……1回試してみようか」


 別に1回限りという訳では無いらしい。ならば6人で様子見と行く事に。そも、このメンバーだと連携もクソも無い。


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― 新着の感想 ―
[一言] カリファって女性だったんですね……。男性だと思っていました。
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