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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第十一章 始まるは人の世
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第三話 早い早い。


「それでどうだったの?」


「逆に聞くけど、町の中をさらっと巡ったぐらいで見つかると思うか?」


「まあそうだよね……僕も狩りの途中とかに見てみたけど、そうそう手がかりとか見つかったら苦労しないね」


 昨日の暇潰しの顛末を翔斗に語る。アークさんが路上で弾き語りをしているのは知っていた様で、そこまでは驚いていなかった。というか、ツカサさんと夫婦という事の方が驚いていた。


「意外と知ってるもんだと思ってたよ」


「ツカサさんの方はパーティ何度か組んだ事あってね……アークさんは一方的に知ってるだけだし」


「そういうもんか……てか、お前どれだけ知り合いいるんだよ。先にプレイしてたって半年だろ?」


「そりゃ鋼輝が来ないから野良で組むしかないからね。毎日プレイしてればそりゃ知り合いも増えるよ」


「……勉強しろよ」


「だって分かんない所無いし」


「腹立つ〜……」


 飄々とした感じで言い放つが、裏でこっそり勉強していたとかではなく本当に熟せていたのだろう。この前のテストだって全教科90点以上、ゲームを削って勉強すればフルマークとか普通に達成出来るはずだ。

 そして、毎日プレイしていたからってこうも多少なりとも人となりを知るぐらいの知り合いが山程出来るのだろうか。野良って基本長くても数時間ぐらいの話のはずなんだが……こいつのコミュニケーション能力の高さは今更か。


「お待たせしましたー」


「今日は遅かったね」


「購買がめっちゃ混んでてさー」


 話を続けていると、やっと琴音さんと池田が来た。購買が混んでいたのなら仕方ない。どっかの授業が少し早く終わったとかだろうな。


「あれ、西田さんは?」


「陽葵ちゃんは今日は家の用事で学校自体休みだってさ」


「へえ、大変だな……まあそういうこともあるか」


「そうだね」


 体調不良とかで無ければ心配する事は無い……いやその家の用事にもよるか。まあどちらにせよ俺が心配していい事じゃないか。


「それで何をお話ししていたんですか?」


「ああ、昨日の件で……」


 来る時に少し聞こえて気になったのだろうか。隠す理由は皆無なので、同じ内容を話していく。


「そうなんですか、アークさんが。聴いてみたかったですね」


「へえ、そこまでの……動画サイトに、いや本人は載せる様な人っぽく無いね」


「前に探した事あるけど無かったよ。今なら……隠し撮りとかならあるんじゃない?音だけだろうけど」


「それは流石にねー」


 隠し撮りというか、勝手に録音か。それなら余程内容がアレじゃない限り消される可能性は少ない。本人が申請すればもちろん消されるだろうけど。


「ああそうだ、今日僕ちょっとログインするの遅れるから」


「そうか、了解……って言っても、特に用事無いけどな」


「まあ一応ね。そういえばもうこんな時間だけど、2人は大丈夫?」


「そうだった、急いで食べないと!」


「早く食べないとですね!」


 俺たちにつられていつも通り食べていたせいか、琴音さんと池田の昼飯はまだ途中だと言うのに次の授業の時間が迫っている。

 池田はガツガツと、琴音さんはスピーディかつ上品に購買で買ったパンを平らげていった。池田は……荒いのに欠片もこぼしてないから文句のつけようが無い。


「良し間に合った!じゃあ行こう!」


「おお、凄い」


「間に合いますね」


 2人の食事も間に合い、教室へと戻る。残りの授業は特に厄介な物も無いから良し、帰った後は……とりあえずレベル上げかな。まだ1も上がりそうに無いけど。






「……良し、じゃあ……うわっ」


 帰宅後、すぐにログイン。早速レベル上げにでも向かおうとすると、連絡を通知するアラートが。さて誰だ。


『ああ、やっと出た。誰も出やしなかったからねぇ……良かったよ』


「うわ」


 相手は、はい、カリファですね。レヴィアタンの一件で、何かしら連絡が取れないと困るからという事で、結局フレンドになる羽目になったんだ。幸いなのか、それを利用した連絡はこれが初だ。


『うわとは何だい……はあ、繋がって良かったよ。早く知らせたいのに、運悪く関係者誰1人いやしないんだから』


「関係者?悪魔のか?1人もいないって……」


 イプシロンさんに、タルさん、ワテルさんと来て……トップで無くとも話が通じるプレイヤーの総数はそれなりにいるだろう。まあカリファが連絡を取れるのはその数では無いだろうから……それでもどうなのか。


『運悪くと言っただろう。あ、言っておくと罠でも無いよ。この連絡方法をそう使うと面倒だからねぇ』


「まだ怪しいけどな……そもそも用件が分からないんだけど?」


 そう、そもそも俺1人にしか連絡がついていないという事しか分かっていない。カリファは悪魔関係連絡方法(それがフレンド登録なのは果たしてどうなのか)での信用を保っておきたいだろうから、恐らく私欲では無いのは間違い無い。結局何なのか。


『あ、言ってなかったか……まあ端的に言うとね、ルシファー見つけた』


「……罠なら他所でどうぞ」


『いやいや、本当なんだよ!』


「昨日の今日だぞ!?みんなで探そう、時間かかりそうだなってなった翌日になんで見つかるんだよ!?」


『適当にそれっぽいフィールドぶらついてたら、レヴィアタンが崖から落ちてそこにいたんだよ!』


「何だその状況!?もう少しマシな嘘つけよ!?」


『嘘じゃないんだよ!こういう時PKは面倒だねぇ!』


 焦った様にカリファは本当だと訴えてくるが、にわかには信じ難い。本人の言う通り、PKである事プラス、若干狙われる事もあってかどうにもな……主観的には本当の確率は6割。高いんじゃって?残りの4割は無視出来ないだろ。


「…………とりあえず、その見つけたルシファーはどういう感じなんだ?」


『……まああんまり協力的じゃないね。何でか状況は把握している節はあるけど、とりあえず力を見せろ的なノリだったよ』


「ああ、そういう……それで?」


『その手の挑発には乗るスタンスだからね、遠慮無く攻撃したさ』


「オイ……いや、まあ……うーん、結果は?」


『なす術なくボコボコにやられて死に戻り、今は急いで町から逃げて身を隠せる外れにいるよ。PKはPKだし、丁度恨まれてる連中もいたせいで派手な鬼ごっこになったよ、アッハッハ』


「笑い事じゃないだろ……」


 4次職で、PKのトップで、戦闘能力も高いカリファがなす術無くか。やばいとかそういう次元じゃない様な気がする。最後だけあって、一筋縄じゃいかなそうだ。


『とりあえず再度向かうけどコウも来な。人手が欲しいんだよ』


「……まあしょうがないか。場所は?」


 とりあえずここまで話して嘘だという事は無いだろう。しかも悪魔関係。一先ずは信じて向かうとする。

 カリファに場所を聞き、準備を整え……あ、モモ達も呼ばないとな。まだ部屋から出てすらいなかった。


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