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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第十章 秋だ!糧だ!豊年満作。
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第二十一話 代償は程々に重く


 コロエウスを倒した事により、アナウンスが流れる。予想通りというか、当たり前というかエクストラスキルを獲得したのはコトネさんだ。


「わ、私で良かったんでしょうか……」


「いや、全員文句無しでコトネさんでしょ」


「そうそう。いないと倒せなかったのは確実だし」


「最後は見事でしたよ」


 コトネさんは申し訳なそうにウィンドウを操作して、獲得したスキルを確認している。謙遜している割にはちゃんとすぐに確認しているのは……まあ良い所なんだろうな?

 とりあえずはクエストも達成、偶然とはいえ、エクストラモンスターを倒せた。予想以上の成果だろう。


「さて、後は……」


「とりあえずクエストの報告をしないとですね」


「報告……大丈夫なのか?」


 周りを見渡せば、墓石の大半が粉々になっており、墓地としての原型を留めていない。本来の討伐目標だけなら多少の破壊はしょうがないよねぐらいで済んだはずだが、エクストラモンスターが乱入して来たせいでその被害は更に広がった。最後に不時着したのでトドメになった点もある。


「あ、大丈夫ですよ。余程地面が抉られていたりしなければ墓石とその位置は記録してあるから修復するそうです」


「あ、そうなの」


 どうやら、埋まっている死体が無事なら問題無い様だ。墓石は無惨な物だが、地面が抉れて棺桶やら人骨やらが見えているということは無い。これなら大丈夫だろう。

 ウリエルに配慮しながら聞けば、どうやら他のクリアパーティもそれなりに壊れていたりするらしい……ここまでじゃないだろうけど。サイトのページの下の方に小さく書かれていたぐらいの様で、恐らく見逃したのだろう。そこまで詳細に見ていなかった。


「エクストラスキルの詳細は……どうしましょうか?」


「……まあ、多少時間はかかったけどそんなに夜中って訳じゃ無い、けど」


「どうせならゆっくり聞きたいよな」


「じゃあ明日にしましょうか。ざっくりですけど確認しておきます」


 明日も学校なので下手に時間を取るよりかはマシだろう。そもそもクエスト報告をしないといけないので、それに時間を取られる。

 状況整理も程々に墓地を後にし、町に戻って達成報告。NPCなのでエクストラモンスターの事を話しても基本は問題無し、墓石が壊れすぎたのでその辺の経緯も話せば、十分に報酬を貰うことができた。







「成る程、エクストラモンスターが乱入……聞いた感じからして、イベントで用意されたタイプじゃなくて、ただの偶然ですか」


「改めて考えると、ただのモンスターがクエストに乱入してくるだけでも結構な確率なのに、エクストラモンスターだと相当だよね」


「討伐も出来ましたからね」


 翌日、学校。池田はともかく、西田さんにも話した様で早速昨日の話となった。


「羨ましい……と言いたい所ですが、相手の能力だと私も相手になりませんね」


「攻撃力が高くても意味無かったからなあ……琴音さんがいて、いやクエストを受けたのは琴音さんだからある意味必然だったのかな」


「必然だなんてそんな……」


「いやあ、私も鼻が高いよ。こうなってくると琴音ちゃんも一端の上級プレイヤーだね!」


「百合は大した事してないでしょ……」


「ゲ、ゲーム中の人付き合いのアレコレは教えたよ?」


「それは大事だし、池田の場合一家言あるけどな……」


 プレイヤーとしての能力には大して関係無い気がする。まあそこは気にしても仕方ないのでスルーしておこう。


「それで、スキル内容は確認したんですか?」


「はい、ざっとは。効果としては、パーティメンバー1人のHPの減少割合を逆転させるみたいですね」


「逆転……9割減ってたら1割減った状態にするって事?」


「まだ試してませんが、多分そうだと……デメリットとしては発動すると私のHPが元の割合と同じになる事ですね」


「コトネさんが9割減か……若干重いですかね?」


 確かに、コロエウスの特徴を押さえた様なスキル効果だ。消費するのはSPの様で、MPを主軸とするコトネさんの邪魔にはならない。発動分のSPは足りてるみたいだから、この先のステータスの割り振りにも影響が無いそうだ。


「あれ、割合を反転するなら……0を10に出来るのかな?」


「え?実質蘇生?」


「……HP残量の制限は無かったので不可能では無いと思いますけど……」


「身体が消える前なら可能でしょうね。問題は琴音さんのHPが0になる事ですか」


「でも、琴音ちゃんは回復役なんだし、最後の手段としては良いんじゃない?消費するのはSPなんだから、MPが切れてどうしようもないって時に」


「要検証だけど、確かにそれなら結構強いよ」


 現状、蘇生手段は4次職で修得できる魔法1つのみだ。それも大量のMPを消費するので、SPを消費するコロエウスのエクストラスキルは便利すぎる。


「じゃあ後で確かめてみましょうか」


「そうだね、実験体は……コウで良いでしょ」


「俺かよ……まあ良いけど。予定も無いからデスペナ食らっても問題無いし」


「よろしくお願いします」


「頑張ってね〜」


 話し込んでいたら、そろそろ午後の授業の時間が迫っていた。弁当の残りを急いで腹に入れ、教室へと向かう。






 学校もつつがなく終わり、家に帰りログイン。今日は家に持ち帰って行うタイプの課題が無いのでフルでプレイできる。


「……まあすぐには来ないよな」


 ログイン状況としては、俺とアポロさんぐらい。相変わらず早いな。屋敷にはいないから、コトネさんが帰ってくるまでは外でかりかな。

 コトネさんが来るまで談話室にいれば良いかと早速移動する。中にはモモとクローナとウリエル……そりゃそうか。


「おや、マスター。天賦獣を倒したんだって?」


「ああ、ウリエルから聞いたのか」


「ええ、役に立ったそうで」


「まあそれはそうだな、攻撃せずに動きを止められたのはウリエルぐらいだったな」


「そうですか……偉いですね」


「ふふふ」


「……」


 クローナの膝に頭を乗せ、満面の笑みで撫でられているウリエル……果たしてこれは俺が見て良いものなのだろうか?

 今ウリエルは正気なのか……まあもう見てしまったからいいか。気にしないでおこう。


「それで、コトネが手に入れた力は?」


「この後検証する予定」


「そうかい」


「こんにちは……あ、コウさんお早、ウリエルさんは……?」


「好きにさせとけば良いと思うけど……あ、ショウも来た。やろうやろう……アポロさんも気づいたみたいだし」


「そうですね、裏庭に行きましょう」


 アポロさんは割と近場にいた様で、連絡が来てから数分程で戻って来た。ショウも上から降りて来たので、検証開始だ。


「とりあえず1割ぐらいで試してみようか」


「そうだな、おりゃ」


 刀を腕に突き刺し、グリグリと動かす。ちょっとすればすぐに1割程が削れた。


「じゃあやりますね、対象はコウさんで……【反象捧(コロエウス)】」


「どう?」


「ただ減っただけだな?特に何か感覚があったりとかは無い」


「私も無いですね。SPとHPが減りました」


「そういう感じですか」


 特にエフェクトは無い様だ。分かりづらいといえば分かりづらいかもしれないが、それならそれで利用方法もある。


「じゃあ、回復して10割行ってみようか」


「そうだな、んぐっと」


 ポーションを飲み、コトネさんのSPが回復するのを待つ。ギリ2回分が無いのは……まあ連発するスキルじゃ無いから良いとして。


「それじゃあ……誰がやる?」


「私が行きましょう。『黒炎』……」


「え、ちょっと」


「コトネさん、良いですか?」


「あっ、はい!」



「【滝割り】!」


「ぐえっ」


 そりゃ体力を0にするにはそれなりの威力は必要だ。しかして、そこまで、『黒炎』を発動をしてまで必要はあったのだろうか。装備無しで直撃するんだから【滝割り】のみで良い様な。


「【反象捧(コロエウス)】!」


「さて……うん?」


 コトネさんの【反象捧(コロエウス)】が発動する。アポロさんに逆袈裟斬りにされ燃やされた俺は、そのまま消える事なく、五体満足の状態で地面へと落ちた。


「うわあ、何か感触がキモかった……」


「うーん……成功で良いのかな?」


「何か異常はありますか?」


「えっと……特に無いな?というかコトネさんは?」


「え、あれ?」


「消えてますね……これも固有のエフェクトは無い様ですね」


 ステータスを見るが、0になったはずのHPは全回復しており、断ち切られたはずの身体もなんともない。特殊な状態異常も無く、現象としては完璧な蘇生だ。

 ただ、いつの間にかという程に静かにコトネさんが消えていた。恐らくはあちらのHPが0になったことで教会へと……演出が無いのもやっぱり考えものか。

 数分後、何故か予備の装備に変えたコトネさんが帰ってきた。


「どうしました?」


「えっとですね……傷は反映されないみたいなんですが、起こるであろう装備の損傷は反映されるみたいでして……」


 そう言って取り出したのは、先程まで着ていた装備。しかし無残な姿となっており、よく見てみると確かに俺が受けた傷と似通っている。


「1回目はコウが肌に直接だったからかな……」


「長袖だったら分かってたか……いやそれでも傷はつくけど」


「ここでそれなりのデメリットが出て来ましたね」


 確かに、このスキルを持って蘇生するのならそれなりの損傷を負っていることになる。従って装備にも傷がある訳で……これをどう見るか。


「まあ蘇生手段とするのが1番だし、それならそうそう使わないからまだマシじゃない?」


「そうですね、使った後私が戻って来れるかは分からないですし」


「多分対象になるのは俺だろうし、修理代払えば良いか」


「それが1番面倒が無いでしょうね」


 とりあえず、蘇生手段として使える事は確認出来た。装備が壊れるであろう事を込みにしても、大分強いスキルだな。


「これで、更にお役に立てそうですね」


「今でも十分助かってるけど……」


「それでもです!」


「あ、はい」


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