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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第十章 秋だ!糧だ!豊年満作。
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第十九話 理性が無いタイプ


 時間は進み、午後8時。クエスト対象である吸血鬼を討伐する為に再集合した。メンバーは変わらず俺と、コトネさん、ウリエル、ショウ、ベルフェゴールの5人だ。ベルフェゴールが役に立つのかは分からないが。


「そういや、聞き忘れてたけどモモ達は何処に行ってるんだ?」


「さあ、私に具体的な事を言わない事は多々ありますので……」


「ええ……それで良いのか?」


「はい、お姉様方が私の信用を裏切った事は無いので」


「そりゃ凄い」


 ウリエルは自慢とばかりに胸を張ってそう言った。

 出かけていない事はたまにあるので気にしなかったが、1日空けるという事はそれだけの用事があるという事で……ウリエルに聞いてみたところ、何も分からなかった。

 信用を裏切った事が1度も無いというのは中々だ。設定的に数百年ぐらいを過ごしたはずだが、ちょっとした事ぐらいならありそうなものだが、それを考慮していない節もない。先に生まれたとか関係無しに慕う理由の1つだろうか。


「まあ、ただ遠出して買い物という事も普通にあるでしょうし、あまり気にする必要は無いと思いますよ。大した事をしている可能性ももちろんありますが、必要な事は教えて下さいますし」


「確かに、ちょくちょくお菓子とか買ってきたとくれますもんね」


「それもそうか……なら良いか」


 コトネさんに菓子をあげていたというのは初耳だが、ウリエルの言う通りである。

 こっそり何かをしていたという事はあったが、それでも許容範囲だったはず。やばかったのは春イベの精霊拉致ぐらい……まあアレも問題無い事を確認しての事だろうし、詰みはしなかったから今更騒ぎ立てる事もない。

 普通に買い物というのも思い当たるし、やはりそこまで気にする事はなかったのかな。


「コウの疑問も解決した事だし、そろそろ行かない?」


「そうだな、時間取った」


「いえいえ」


「では行きましょうか」


 ショウがそろそろ行かないと永遠に終わらないでも言うかの様に俺達に声をかける。永遠に終わらないというの間もアレだが、帰りの雑談ぐらいにする内容だった。話題にするタイミング間違えたか。


「ほらベルも起きて」


「分かった……でも着くまでは寝る」


「しょうがないか……」


「戦闘時には起きると言っただけマシですね……」


 ショウも戦闘が待っているので、背中のベルフェゴールに声をかけるが、当の本人は気楽に寝続ける様だ。これでマシとは……以前は何処まで酷かったのやら。聞いてはみたいが、それで話を振るのは二の舞なので切り替えて目的の墓地へと向かう。

 夜間の戦闘ではあるが、コトネさんの明かりに、ウリエルの炎の剣も明かり代わりになっているので割と視界は良かったりする。


「光源の魔法の事忘れてたな……」


「夜は中々戦闘とかしないからね……何かあるのとしても紛れる必要があったり、コウの場合はランプで済むしね」


 レベル上げやら何やらは学校があったとしても夕方にまとめて済ましてしまうからなあ。夜はログインしても、効率が多少悪くても慣れた所でするぐらいだし。

 まあ明かりがあるなら問題無いし、日があるうちに確認したおかげで大体の感覚は覚えた。墓地はコウモリやら何やらのモンスターの声で中々に騒がしくなっている。それだけなら雰囲気は出るのだが、結構明るいお陰で半減どころでは無いな。


「まあ……それっぽい気配はしますね。気をつけてください」


「もうか。まあ彷徨ってるみたい話だしな」


「ベル、どう?」


「前」


 ベルフェゴールの能力の都合上、何処にいるかも副次的に分かるらしい。ショウがそれを利用して尋ねるとベルフェゴールは真っ直ぐ前を指差した。

 コトネさんが光源を多少調節して前方を強めに照らす。すると、コウモリの塊の様な物が見えた。気持ち悪と一瞬思ったが、問題は中身だ。次の瞬間には塊になっていたコウモリは次々に飛び去っていった。

 その勢いは強く、思わず腕で顔を塞いでしまった。そしてそれが落ち着いた後、塊があったら場所を見ると1人、いや1体の人影があった。


「あれがか」


「そうみたいだね」


 明かりに照らされ、詳細が露わになる。灰色の乱雑な長髪に白い肌、眼は紅く口からは鋭い牙が覗ける。服はボロボロで元の形は分からないが、服としての体裁は保たれている。爪は手も足も鋭いので、まあ攻撃手段として考慮しておくべきか。


「グルルルルルル…………」


「触れ込み通り話は通じなさそうだな」


「まあどちらにせよ討伐対象だけどね」


「私は周りのコウモリを払いましょう」


 飛び去った分も含めて、辺りにはコウモリのモンスターが大量にいる。その数は無視して戦えるレベルではあまり無いので、広範囲に攻撃できるウリエルに任せる事にする。何処となしにあの吸血鬼の僕みたいな雰囲気を醸し出している事からして、早急に減らすのは必要なはずだ。先に吸血鬼を倒して無秩序になられても困るし。


「ガゥラァ!」


「させないよっと!」


 吸血鬼が腕を前に突き出して突進してくる。しかし、単調な攻撃のため前にいたショウに難なく防がれ弾き飛ばされた。

 弾き飛ばされた吸血鬼の方も大したダメージは無い様で、すぐに体勢を立て直して光源から逃れるかの様に墓石の影に紛れ込み始める。

 しかし、寄ってくるコウモリを散らす為にウリエルが雑に炎を放出しているせいで常にでは無いにせよ、割と広範囲が明るい。お陰で吸血鬼が逃げた方向も検討がつき、見失う事は無い。


「当てた感じ大分タフそうだけど……まあ油断しなければ大丈夫そうだね。後回復させなければ」


「血を吸われなきゃ良いんだろ?コトネさんはウリエルがいるし、まあ無難に行けば良いな」


「じゃあ寝て良い?」


「一応ベルは起きててね……」


 ベルフェゴールは相変わらず、それだけ大した相手では無いと判断したのだろう。本来なら鬱陶しいであろうコウモリが何とかなっているので、難易度は低くなっている。

 吸血鬼の動く速度も普通に対処出来るぐらいなので、それこそ油断しなければ問題は無さそうだ。


「シャァッ!」


「分かってるっての……!」


 墓石の間をすり抜けて突っ込んでくる吸血鬼。見失ってはいないので刀で手を弾き、首を狙って斬り込む。しかし、欲張り過ぎた様で、刀は首を掠めるだけとなった。

 吸血鬼はそのまま離脱し、また墓石に紛れて移動し始める。


「結構フィジカル高いなあ……」


「載ってあった通りですね……どうですか?」


「まあ大体分かったから……時間かかるかどうかはともかく、倒せるは倒せるんじゃね?」


「まああのぐらい倒してもらわないとね……どうせならデバフかけてもらう?」


「んー……とりあえずそのままで。楽はしたいけど、このぐらいはな」


「じゃあそれで」


 楽はなー、したいんだけどなー。この先相対するであろう敵を考えると、このぐらいの敵は普通に倒さないと問題が起きる気がする。

 目測で倒せる感じなのでそのまま行こう。


「ガァッラァ!!」


「分かりやすい!【滝割り】!」


「ガッッ……!」


 馬鹿の一つ覚えの様に同じ攻撃を繰り返してくる吸血鬼。サイトに載ってた情報にはもう少し攻撃パターあるとかって書いてあったんだけどなあ……何で何だか。

 動く速度も確認出来たので、今度こそカウンターよろしくスキルを発動してダメージを与える。刀は胴体を深く斬り裂き、結構な量のエフェクトから飛び散る。

 吸血鬼は後ろに飛び去る余裕はあった様だが、先程と同じ様に走り回る殆どは無いらしい。


「追撃を……うわ」


 踏み込もうとすると、周りを飛んでいたコウモリが吸血鬼へと集まり始める。そのコウモリを吸血鬼は手当たり次第に食べ始めた。


「うわ……あ、あれでも回復する感じだっけか?」


「そういや書いてあったね……」


「早く止めないと……!」


「待ってください!」


 折角与えたダメージを回復されてはたまらないので、接近しようとするとウリエルに止められた。こういう時は止めたりするはずは無い。どういう事かと振り向くと、視界にショウの背中で上を向いているベルフェゴールが目に入った……上?


「ガギャッ!?」


 上から巨大な黒が落ちてきた。その黒は回復していた吸血鬼をその嘴で啄み、飲み込んでいく。


『ENCOUNT! 【⭐︎1反象鴉 コロエウス】』


 ま、まじかー。どうするんだこれ。


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