第十八話 オマケクエスト
秋のイベントも残すところ2日となった。簡単なクエストを消化したりしていたが、特に大した内容も無く、大半はレベル上げをして過ごしていた。
「それで、どう?」
「何とかレベルは1上げたけどなあ……先が長過ぎる。西田さんとかどうやったんだよ」
「さあ……?」
「あ、お2人とも今良いですか?」
ホームルームも終わり、帰る支度をしながら翔斗と雑談をしていたところ、琴音さんが話しかけてきた。
大抵いつもは池田や、他の友人と帰っているはずだが、今日はどうしたのやら。
「何かあった?」
「はい、イベントのクエストを進めていたらですね、何故か討伐のクエストが発生しまして……」
「あれ、確かしていたのはポーションの納品クエストとかじゃなかったっけ?」
「そうなんですが……」
どうやらクエストの協力の申し出だったようだ。最近は助けた村人に関連してポーションなどの回復アイテム納品をしていたと聞いていた。そこから討伐クエストに派生するのは若干不思議に感じる。
普段はウリエルがいるだろうし、大抵は何とかなると思うのだが……まあそこは聞いていけば良い。
「納品のクエスト自体は終わってるんですが、その依頼人から新たに頼まれまして」
「えっと……ああ、これ?」
「そうですそうです!」
「どれ……墓場の異変?」
ショウが調べ当てたのは、攻略サイトに載ってるイベントクエスト。ここに載っており、なおかつコトネさんが受けたという事は汎用クエストか。何か特別な要素があるという訳では無いが、若干難易度は高め……ウリエルだけじゃ少し足りないか。
「すみません、お見せした方が早かったですね」
「いやまあ、これ経緯も何も載ってるからね、最初からネタバレするよりは良いでしょ。見たって事は鋼輝も大丈夫でしょ?」
「まあこのぐらいの内容ならなあ……」
こちらの端末でもサイトを調べ、内容を見てみるが、そこまで初見の方が楽しめる様な事は書いてない。受注したコトネさんとしても、さっさとクリアしたいだろうし。
「昼間でもコウモリのモンスターが出現して?夜に人型の吸血モンスターを討伐してクリア……人型?」
吸血系はイメージ通りこちらのHPを吸収して回復してくるタイプ。蝙蝠系は大抵すばしっこく、攻撃を当てるのが難しいので魔法でまとめてがベターだ。まあ今のステータスなら3回に2回は当てられるから大丈夫だ。
「珍しいね、人型は。こういう類のクエストだと1回しか見た事ないよ」
「そんなにか……NPC要素も混じってたりするのか?」
「それは無いんじゃない?会話が通じるタイプなら書いてあるだろうし……」
「あ、その依頼人の方が遠目に見たらしいんですけど……唸ってるだけで理性的な様子は無かったようですよ」
「度胸あるなそのNPC……まあそこは良いか」
「まあ吸血モンスター……吸血鬼だとしても普通に攻撃通じるから大丈夫でしょ。負ける方がおかしいって」
「フラグみたいだな……まあ無いだろうけど」
サイトを端まで見るが、例外があるとは書いていない。これならその人型モンスターを倒して終了だろう。折角の人型エネミーなのだから、体験してみて損は無い。
「では、夜にお願いします」
「夜……今だと7時ぐらいだっけ?」
「そうだけど……1回下見しとこうか。ほら、夜は見える様になってるとはいえ若干視界悪いし、鋼輝はこのゲームの墓場で戦った事ないでしょ?割と墓石とか邪魔だよ」
「そうか……琴音さんは?」
「大丈夫ですよ。そうしましょうか」
翔斗の提案も最もで、障害物は割と洒落にならない。琴音さんに窺ってみると普通に快諾してくれた。
「じゃあそれで……さっさと帰るか」
「……そうだね」
「どうした?」
「え、いや別に」
「か、帰りましょう!」
若干翔斗の返事が遅かったのでどうしたのやらと聞いてみたが、何故か様子がおかしくなったのは琴音さんの方。まあそこまで気にする事でも無いので、3人で下校する。
課題は後回しにしても問題無い量なので、さっさと支度を整えてログイン。
「あ、いた……モモとクローナは?」
「お姉様方は出かけておりまして……今日は恐らく戻ってこないかと」
「マジか……」
談話室へ入ると、コトネさんとウリエルがいた。あの2人がいれば心強いのだが、残念な事にいない様だ。まあそんなにいてもオーバーキルだろうし、人数はそれなりにいるのだからしょうがない。
座って少しすればショウも来た。背中には相変わらずベルフェゴールを背負っている。
「みんないるね、待った?」
「いや全然」
「ショウさんも来たので行きましょうか」
全員揃ったので移動……丁度5人になったのでメンバーとしては申し分ないか。意外とバランス良いし。
ドライタルに着き、町の外にある墓地へと向かう。墓地自体は村側にある様で、もやが広がっていた時にも若干巻き込まれていたとか何とか。まあ端も端だったみたいだから気づかなくて当然か。
「昼間だと雰囲気無いよな」
「薄暗かったりするとまだそれっぽくなるんだけどね……」
「ああ、やっぱりいますね」
よく見ると植えてある木などにコウモリのモンスターがぶら下がっており、たまに飛んでいる個体もいる。
昼間なのになあ……モンスターが湧いている事も含めて確かに異常だ。
「まあ2、3体倒しておくか?」
「そうですね、夜になったら増えるでしょうし」
「慣れておいて損は無いかな?」
「増えるのか……」
吸血鬼がどのくらいの強さにせよ、雑魚敵が増えるのは少々面倒くさい。ここで倒しても多分数は変わらないだろうが、ショウの言う通り慣れておいた方が良い。
とりあえず近くにいるコウモリへと攻撃するとあっさりと避けられる。まあ軽い攻撃だったので予想通り、今度は動きを予測して真面目に斬れば……普通に当たるわな。
この調子で次々と斬っていくが、流石に刀が届かない場所を飛ばれるとどうしようもない。この場合はどうするかというとまあ、ウリエルがまとめて焼き払ってくれるから大丈夫だ。生き残る奴がいたとしても、落ちてくる訳だから斬れば良いし。やっぱり高レベル魔法職相当がいると便利だ。
「思ったより数倒したね」
「粗方倒したな……まあ夜には戻ってるんだろうけど。勝手は分かったから良いか」
「じゃあ……戻りましょうか。時間になるまで待つのは無駄ですし」
「そうだな」
下見は終わりとし、屋敷へと戻る。夜の扱いになる時間帯は7時以降だが、それより遅くても問題は無い。その間にやるべきことを済ませてしまえば、気兼ねなく臨めるというもので、一時解散となった。
ショウはまだプレイするみたいだが……あいつは時間をどう捻出してるんだか。




