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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第十章 秋だ!糧だ!豊年満作。
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第十六話 それなりに期間が空けば良い思い出


「おーい、2人とも。今日空いてる?」


「どうしたー?」


 談話室で、コトネさん特製例のキノコを使ったポーションを確認していると、ショウが声をかけてきた。ここ数日は別のプレイヤーと組んでいたみたいだから誘ってくるのは久しぶりだな。


「ああ、空いてるけど」


「そうですね、丁度ポーションも見終わりましたし」


「そう、それなら良かった。実はイベントフィールドでミニゲームみたいなのが追加されてね」


「ミニゲーム?」


 ポーションを片付けながら返事をすると、予想外の答えが返ってきた。ミニゲーム、大体はメインで行う必要の無い手軽に出来るゲームの事で……このゲームの場合そんな物はあまり見かけない。強いて言えば、トランプみたいなリアルのゲームがあるぐらいだ。


「村人が何かイベントの物を利用したとかですか?」


「いや、そうじゃなくてね。塔があったでしょ?その場所に100メートルぐらいのパズルが出現したんだよ」


「は?」


「規模が……凄い、ですね?」


 思わず口を開けて間抜けな返事を返してしまった。コトネさんは俺ほど変な事にはなってはいないが、それでも驚いている様で若干返答がおかしい。


「まあ分かるよ、僕も昨日聞いた時、何だそれって思ったし。経緯が全く分からないよね」


「原因何とかしたんだから、これ以上変化するものか?」


「それはワテルさん達によると、あの壺の変化の残りカスが収束する時に出てきたんじゃないかって話みたいだよ。クリアすると貰えるアクセサリーやら何やらから調べたみたい」


「一応設定はあるんですね」


「報酬あるのか……考察様々だな」


 こじつけなのかはどうでも良いが、最低限の設定があるならまあ良いか。報酬があるならやってみても良い……暇だし。


「クリアしてから3日経ったら出現するみたいでね、3日経ってるでしょ?」


「えっと、そうだな。経ってるか」


「ではクルト君とアゲハちゃんも誘いましょうか」


 話は分かったので、今日の主題はミニゲームに決まった。コトネさんはアゲハを呼びに行ったので、俺はクルトを呼びに行く。話を伝えると、クルトもそれぐらいの暇はあるとの事で、一緒に向かう事になった。


「パズルですか、どう動かすのかは分からないですけど、僕達でも役に立てそうですね」


「人力なら私は無理じゃ……ショウさん報酬は?」


「クリア時に1番高いステータスがプラス100されるアクセサリーみたいだよ」


「……強くね?」


 パズルの仕組みはともかく、アゲハの質問は俺も気になるところ。それで返ってきた答えはまたもや驚くべきもので……タダでもらえる、しかもアクセサリー分類で1レベル相当のステータスが付くなら大した物だ。ランダムじゃなくて1番高いステータスというなら、大体伸びて損は無い部分だ。


「余程パズルが難しいとかでしょうか?」


「いや難易度はそこまでじゃないらしいけと……その報酬の見た目が普段使いするには微妙みたいなんだよね」


「あー、見た目で釣り合いとったか……」


「それは……僕ならともかく、コウさん達だと……」


 ゲームあるある、性能は申し分ないのに見た目のせいで装備するには抵抗があるやつ。VRゲームが普及し始めた頃には割と問題になったとか親が言っていた。

 そりゃディスプレイに向かうタイプなら、装備するのは画面のキャラクター、見た目がアレでもネタで済む。しかしこの場合……何かによるが、倉庫の肥やしになるのは目に見えている。

 流石にステータスの為に恥を捨てられる程ガチ勢じゃない。そう考えると、プラス100ぐらいだと微妙な気になってきた。

 ショウの返答に全員が微妙な表情になっており、本人もそれは予想していた様だ。


「まあ、持っておいて損は無いでしょ?僕も見た目は聞いてないけど、もしかしたらどうにか誤魔化せるかもしれないし」


「そうだと良いけどな……」


「とりあえず行きましょう」


「あれ、そういえばベルフェゴールさんは?」


「ベルなら今日は部屋で寝てるよ」


「そうなんですか」


「珍しい」


 馬車に乗り、向かう。もやの入り口に並ぶプレイヤーは増えていた。俺達と同じく、ミニゲーム関係だろうな。まあいつもの通りサクサク進むので良しとしよう。

 村に特に変化は無いので素通りだ。村人が少ない様に感じるのは外のまだ無事な畑の手入れにでも行っているのだろう。

 塔があった場所に着くと、巨大な石板が設置されていた。よく見れば外枠があり、その内側は等間隔に石板が区切られており途中で途切れた紋様が描かれている。向こう側の角は石板1個分凹んでいる様に見える。


「パズルってこういうのですか」


「なんかあったよな、安い感じの」


「200円とかそんな感じで売られてるのですね、見た事あります……確かスライドパズルでしたっけ?」


「そもそもこれ、動かせるのかしら?」


「アゲハちゃんはね……コトネさんと2人なら行けるかな?」


 それぞれ思い思いに感想を述べる。とりあえずやり方は分かったが……これだけでかいと全体像が把握し難い。確か100メートルって言ったか、100メートルって相当だよな。石板1枚当たり約2メートル……50×50?


「さて、何処から手をつけるんだ?手当たり次第だと永遠に終わらなそうだけど」


「そこはほら、【空走場(アハルテケ)】」


「確かにコウさんなら!」


「なるほど、じゃあ行ってくるわ……【空走場(アハルテケ)】」


 ショウが誘ってきた理由の1つ、というか大体それが殆どだろう。上から撮る事が出来れば、全体像が把握でき、ただ動かすのに手間がかかるだけのパズルになる。

 スクショが撮れるまでの高さにまで上がる。足場をしっかりと作って見下ろすと、全体像がよく見えた。約50×50もあるだけあって、初期状態では何を表しているのか全く分からない。


「撮っても……うん、分かるから大丈夫か」


 ここで考えても仕方ないのでさっさとスクショを撮り、下へと降りる。石板の境も模様もはっきり写っているから困る事は無い。


「どうだった?」


「時間かかりそうだぞ……ほら」


 撮ったスクショを全員に見せる。アゲハなんかは思わず声が出ていたりしており、その難易度は伝わった様だ。ショウはすぐに考え始めたようで……まあ頭を使うのはショウに任せよう。


「これがこっちで、そう動かすと……あー……とりあえず動かしみよう」


「印刷出来たら良いんですけどね」


「印刷かあ、流石に手間がかかるしな……」


「時間かかりそう……」


 かかる時間を考えればげんなりもするが、始めなければ終わらない。重くなってきた腰を上げ、最初の起点である向こう側の角へと移動する。


「さて、どっちから動かす?」


「えっと、こうだから……こっちだね。よろしく」


「へいへい」


 石板に触り、力を込める。少し試してみたが、外すのは無理な様だ。スライドさせる分にはそこまで力は必要無く、また見た目にそぐわず抵抗もあまり無かった。


「ほいっと」


「動かすのは簡単みたいだね。じゃあどんどんやっていこう」


「はい!」


「おー」






 〜1時間経過〜


「ん?あれ間違えた?」


「マジで?やり直し?」


「えっと……うん」


「そんな……」


 〜2時間経過〜


「あれ、これ繋がんないの!?」


「微妙に線が繋がらないですね……」


「……これどのくらいまで遡るんでしょうか……」


「疲れたんだけど」


 〜3時間経過〜


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」






「これで良いですよね間違ってないですよね!?」


「多分合ってるはず!」


「コウさん確認をお願いします!」


「了解、【空走場(アハルテケ)】!」


 4時間が経過した。全員疲労困憊、何か色々割に合わない感じがする。攻略法が出てからで良かったんじゃないかとは誰も言わない……言ったらここまでかけた時間が無駄になるからね。

 何回か使ったにせよ、クールタイムはとうに終わっている【空走場(アハルテケ)】を使用。急いでスクショを撮り、全員で確認する。

 完成する模様は塔の中で倒したカボチャの山を表しており、中々に複雑だった。細部まで確認し、模様がずれていないかを確認する。


「うーん、まあ……大丈夫?」


「とりあえずやってみるしか……」


「じゃあ動かすぞー」


 最後と思われる石板を動かす。しかし特に変化は訪れず、何処か間違っていたかと落胆した瞬間、紋様が光り始めた。


「正解?」


「不正解でこんな事にはならないでしょ……」


「あ、カボチャ」


 それぞれの足元にカボチャが落ちてきた。ボスの件があるので一瞬身構えたが、特に動く様な事は無かった……これが報酬?


「パンプキンヘッド……普段使いは出来ないね」


「鍛治をする分には問題無さそうなので……僕は使えそうです」


「私もですね」


「他の季節もこれつけるのかしら」


 分類は一応アクセサリーのパンプキンヘッド……これは使えない。流石にこれは……仮装ならともかくなあ。

 生産を行う3人は実際に被って確かめている……絵面はアレだけど、視界に問題は無いようでまあ誰にも見られないなら有用か。


「何か、割に合わん」


「それ言っちゃあおしまいだよ」


「ま、まあクリア出来たから良いじゃないですか」


「帰って休みましょう」


 生産職向けという事で納得しておこう。もしかしたら使う機会もあるかもしれない。凄い疲れた。


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