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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第十章 秋だ!糧だ!豊年満作。
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第十二話 カボチャの山


 辿り着いたボス戦用と思しきフィールド。そこで出現したのはただのカボチャ……と思いきや、それが大量に降ってきた。中には巨大な物も紛れており、プレイヤーでもただでは済まなそうだ。


「『アイシクルマジェスタ』」


「おお」


 モモが出した氷壁により、降ってきたカボチャ達が防がれる。衝突して氷が削れる音が絶え間無く続くが、これなら……耐えられるか?


「あ、思ったより……防ぐのは無理!各自避けな!」


「マジでか!?」


「やはりそうですか……!」


 大概頑丈なモモの魔法が削られている時点で察するべきだった。モモが言うのが早いか、氷壁の隙間からカボチャが落ちてくる。このままでは全壊するのも時間の問題だ。

 幸い、周りの様子を見るからして逃げ道が無いほどではない。しかし、俺でも走り回る必要はありそうで……モモ達は頑丈だし大丈夫だろう。問題はコトネさんだ、いつもならモモに魔法でサポートしてもらうのだが、今はそれは無理。ショウいると良かったな!


「【フラジャイルクイック】……!失礼!」


「え、きゃっ!?」


「【空走場(アハルテケ)】!」


 急いでコトネさんに駆けつけ、抱き抱えて移動する。数瞬後には、コトネさんがいた場所に氷壁を突き破って巨大なカボチャが落ちてきた。セーフセーフ。モモ達も各自避けている……あっちは大丈夫か。

 カボチャ達は天井から落ちてきているわけでは無く、その上に多少のスペースはある。そこにいればカボチャの心配は無いだろうと、避けながら上へと移動する。


「あ、人いると足場の強度が……MP倍消費……!」


「す、すみません……!」


「いや必要経費……危ねぇ!」


 思わず口に出てしまったが、そういやそうだった。人を運ぶ事なんてあんまり無いからな……謝らせてしまった。

 上へと逃げようとすると、何故か横から飛んできたカボチャに当たりそうになる。どうやら、落ちてくるカボチャは大小関係無く落下速度に差があるみたいだ。それでぶつかってこっちに来たのか。

 避けながら上を確認すると、出現する場所はどうやら隙間が無い。カボチャが出ない間もその先が歪んで見えるので通れるかどうか……上も駄目か。


「う、上も無理でしょうか!?」


「多分無理……てか、いつまで続くんだ!?」


 コトネさんが心配する様に声をかけてくるが、まあ避けるだけなら見えるから問題無い。このままなら下の方が避けやすいので、落ちたカボチャから1メートル上ぐらいに戻る。

 下手をすると、【空走場(アハルテケ)】の効果が先に切れそうなものだが……それは杞憂だった様で、その後1分程でカボチャの落下は止まった。


「降りますよ」


「あ、はい。ありがとうございました……一面カボチャですね」


「歩きづらいな、モモ達は……死んで無いよな?」


「殺すんじゃないよ」


「うわ」


 姿が見えないので一瞬心配になった。真下からカボチャを押し除け現れたのには驚いた。

 どうやら神器やら魔法やらを駆使して耐えていた様だ、3人いればそりゃ丈夫だろうな。


「回復は……」


「ああ、大丈夫大丈夫」


「私達も問題無いです」


 クローナとウリエルも這い出て来る。見た目は特に大丈夫そうだ。


「さて、ひと段落だけど……これは何なんだか」


「ただのカボチャ……では無いですよね?」


「そうだねぇ……最初のは普通のだったけど、これらは……ああ、ほら分かりやすい」


 地面一面を埋め尽くしていたカボチャの大部分が振動し始める。地震ではなく、どうやら自ら震えている様だ。

 震えるカボチャは動き始め、1つの塔……と言うには少し不恰好、カボチャの山と言った方が合っている物体を作り出した。


「これがボス?」


「でしょうか?」


「魔物の反応はあるけどね」


「それなら……どう倒すんだか」


 あのカボチャの山がボスだとしても、全て潰せば良いのだろうか?そうだとすると、恐ろしい時間がかかりそうだ……やってらんねぇ。


「あ、コウさんあれ……」


「うん?震えて……飛んでくるんかい」


 コトネさんが何かに気づいた様で、刺した指の先を見る。カボチャの山を構成していた1つが震え、こちらに向かって飛んできた。その速度は中々に速く、コトネさんが気づいて教えてくれなければ当たっていただろう。

 俺が避けた事により目標を失ったカボチャはそのまま地面を埋め尽くしているカボチャにぶつかり、複数まとめて砕けた。


「結構な破壊力……このカボチャそれなりに強度あるし」


「私だとまともに当たると死にますね……」


「2人とも、続いてくる様ですよ」


「うわ」


 第2ラウンドとでも言うかのように、山から次々とカボチャが発射される。今度は基本横から、それにスピードも増している。今の所一方的だな、こちらが攻撃する機会が無い。

 幸い、その数は上から降ってきた時ほど多くなく、注意していればコトネさんでも避けられる。変化球は無いから、それだけはありがたい。


「それで、どうなんだ!?あれが尽きるのを待てば良いのか!?」



「ちょっと待ちな……魔物って言っても、あのカボチャ自体は普通の物、どっかに起点があるはずさ!」


「核があるってか?」


「そう!」


「ならば焼き尽くしましょう……!」


「私も派手にいきますか」


 天使2人が広範囲攻撃をし始める。まあ流石に規模は魔法職と同じくらい、際限が無いわけでは無いらしいから、味方ギミックと思っておこう。モモは核の探知に集中様で、素直に任せる。探してくれるだけありがたい。

 こちらも積極的にいかないということで、刀を変える。思ったより出番のある棍棒(刀判定)だ。


「よし来い……ホームラン!」


「砕けた場合はどうなるんでしょうか……?」


「野球ボールが破壊される事は……多分無いだろうなあ」


 飛んできたカボチャを打ち返そうとしたら、普通に砕けた。威力があり過ぎたのか……まあ硬いと言ってもカボチャだよな。

 その後も飛んでくるカボチャの迎撃を行う。ほぼバッティングゲームみたいになっている……ストレートだけならどうにでもなるんだよなあ。たまにでかいのが来るけど、【ディケイブースト】使えば何とかなるし。

 作業ゲーになりかけようとした時、今度は普通の物より3回り程も小さい、青いカボチャが飛んできた。


「これぐら……やっぱ避難!」


「爆発……!」


 ここで変わり種が来るということは、何かしらの特性があるはず。まずは様子見と青いカボチャをスルーすると、そのカボチャは地面代わりのカボチャに当たった瞬間爆発した。中々の威力、棍棒の耐久値全損しそうだな……一応刀だし。

 周りを確認すれば、モモ達の方にも放たれており、ウリエルの所では誘爆している。あそこだけ戦争さながらだな。


「というか、いつまでやれば良いんだ、これー!」


「全然、尽きる気配、無いですね……!」


 ぶっちゃけ、誰かがやられる心配は今の所無い。NPC3人はもちろんの事、コトネさんだって運動神経は抜群、今のカボチャなら軽い運動レベルだろう。俺は……ヘマこかなきゃ大丈夫。

 打ち返す間に、足元のカボチャも破壊していくが、いかんせん数が多過ぎて焼け石に水。この中から核を探すのは無謀が過ぎる。


「モモ、もうちょっと情報!」


「紛れて分かりづらいんだよ……!あ、マスター、それ」


「は?」


 モモが指差した先、足元には小ぶりの緑色のジャックオーランタン。無闇矢鱈に破壊していたが、丁度隠れていた場所だったのか?

 緑カボチャと目が合う。汗を流しているわけでも彫られた表情が変わるわけでも無いが、何処となく焦っている様な……そのまま?どうやってか動いて?潜って……?


「逃げてますよ!?」


「やべっ、待てや!」


 何故か見つめ合ってしまった。さっさと壊さないと……見失ったら大問題だ。


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