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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第十章 秋だ!糧だ!豊年満作。
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第九話 昨日の鬱憤を晴らす


「今日も頑張ってくださいね」


「ああ……1つ?」


 イベント3日目。学校さえなければ、1日にボスを2、3体倒せるのだが……それで休んで成績を落としては元も子もない。コトネさんはそんな事は絶対にしないだろう。

 クルトが渡してきたのは、黒と白の混じった1つの鍵だった。てっきり、どんどん鍵が増えていくのだと思ったのだが。


「はい、どうやら変化していくタイプの物らしくて……覚えているかどうかは分からないですけど、鍵の形も変わっているんですよ」


「あー、そう言われてみれば?」


「確かに、出っ張りが増えている様な?」


 鍵をよく見てみると、変わった様な気がしないでもない。そんな注意深く観察していなかった……少しばかり後悔。

 今日も現地集合ではあるが、ログインのタイミングが被ったのかコトネさんもいる。まあ、それ自体に不都合は全く無い。


「ありがとうな、じゃあ行ってくるか」


「あ、ちょっとお願いしたい事があるんですけど……」


「どうした?」


 クルトの依頼……素材調達かな。


「今日は灰色の森に行くんですよね?」


「そうだな」


「そうですね」


「差し支え無ければ、そこのモンスターの素材をいくらか……20個程集めてきて欲しいんです」


「20個……あー、まあ良いか」


 素材調達だった。黒ネコは毛皮、レイスは気味の悪い古布、他2つは螺子と狼系の毛皮だっけか。今日行くのは灰色の森だから、ゾンビっぽいモンスターからドロップする螺子。何故螺子……フランケン的なアレか?


「私も大丈夫ですよ」


「ありがとうございます……3種類程あるらしいんですけど、同じ系統の素材なので合わせて20個で大丈夫です」


「まあ無いとは思うけど、全部同じ種類でも?」


「はい、全然大丈夫です!」


 それなら集める側としてはとてもありがたい。均等に集めようとしたり、1種類だけを狙おうとすると途端にドロップしたくなる。おのれ物欲センサー。イベントのモンスターはドロップする素材の種類はランダムでも、1つは確定でドロップするから問題無し。20体狩ればそれで即終了だ。


「では、行きましょうか」


「20個、20個な」


「よろしくお願いします!」


 手を振るクルトに返しながら、町へ。もやの中へ出入りするプレイヤーは減るどころか増えている様な。時間帯とか、遅れたとか理由はいくらでもあるか。

 多過ぎるせいで列になっているので、素直に並び、入れる様になるのを待つ。


「一応事件が起きてる場所に並んで入るのは、シュールな感じがするな」


「そうですね……入るだけですので、殆ど待たずに入れるだけ良いですね」


 入場券を見せる必要も、入場制限がある訳でも無い。数百人はいたが、どんどん入って行くので30秒程で入れた。単に歩くのにかかった時間だな。


「あ、来た来た」


「今度は下見はしなかったのか?」


「もう終わったさ」


 村に入ると、モモ達が待機していた。座ってお茶を飲んでいるので、今日は何もしていないのかと思ったが……行動が早かっただけだった。昨日の反省かな。

 今日は昨日とは逆隣の森だ。下見は同じ勝手で出来るか。


「どうだった?」


「特に何も。魔物は塔で襲って来た奴と同じだし、広場は相変わらず壁があっただけさ」


「そりゃそうだよな……あ、落とした素材ってどうした?」


「私が回収してますよ。必要ですか?」


「ああ、クルトに頼まれてな……」


 昨日も、下見で倒したのか、レイスの素材を5つほど渡されていた。それなら今日もとありがたく思ったが、その数は2個。

 まあ下見な上に、見た事あるモンスターなのだから少なくなるのも仕方ない。集める数が2個少なくなっただけでも助かるんだ。


「20個、今渡した分を含めればあと18個。まあすぐですね」


「集めてから行くんです?」


「とりあえずそのつもりだけど、何かあるか?」


「いえ大丈夫かと」


 ウリエルの質問に答えたが、ただの確認だった様だ。特に時間をかける事も無く、目的の森に向かう。

 今度の灰色の森は霧が前の2つと比べて薄かった。濃さについては関連性があるのか無いのか気になるところ……まあ特に何も無いんだろうけど。

 進んでいると、ゾンビ系のモンスターが現れた。とりあえずは1体目だな。そして他と変わらずカボチャ頭。


「【抜刀】……良し」


 とりあえず首を一太刀。耐久力は見た目通り低い様で、すんなりと首を断てた。普通に雑魚敵だな。弱点は人と同じ、何より攻撃が効くのが良い!

 30分もすれば、18体倒し、ドロップ素材も集まった。少し歩けばすぐにエンカウントするから効率も良かったな。


「じゃあボス戦ですね」


「これが合うと良いんだが……」


 広場を囲う壁にクルトからもらった鍵を挿す。合わない訳も無く鍵は回り、壁は消えていった。

 広場の真ん中にいるのは、3メートル近い大柄の男。継ぎ接ぎの体に、頭に刺さった巨大な螺子、青い体の各所には薄く赤い線が走っており、流石に血色が良いという訳でもなし、血管では無いだろう。問題なのは、カボチャを被り、紫色のカボチャの巨大なハンマーを持っている点か。


「普通にフランケンシュンまんまでもハロウィンは伝わると思うけど……」


「す、少し可愛く無いですか?」


「ええ……?」


「え?」


「ほら、来るよ」


「あ、おう」


 フランケンシュタインは、動きが素早いという程では無いが、イメージや見た目以上には機敏な動きでこちらへと迫ってくる。

 まずはあのハンマーを避けて、いきなり首でも狙ってみようかと考える。しかし、余裕を持って避けたハンマー、カボチャの部分から大量の紫色の液体が飛び散った。


「おっとぉ!?」


「きゃっ!?」


 明らかに害のありそうな見た目、隙を突くどころでは無いので、距離を取る。フランケンシュタインからの追撃は無く、ゆっくりとハンマーを上げた。


「びっくりした……毒か?」


「毒ですね。状態異常になっちゃいました……もう回復しましたけど」


「良かった……」


「思っていたよりHPの減りが早いので、出来れば食らわないで下さいね」


「分かった。ありがとう」


 最低限の距離しか取っていなかったコトネさんが、飛び散った液体に触れてしまったらしい。毒のふざけた感じに出て来た割に強力な様だ。近づくのは大分リスキーではある……ハンマーによくよく注意するしかないな。

 フランケンシュタインはまた動き始め、変わらずこちらへと向かってくる。待ち構えるのは危険と判断し、今度はこちらも距離を詰める。

 近づいて来た俺に対し、フランケンシュタインは愚直にハンマーを振り下ろす。それを俺は無視して側を通り過ぎる。フランケンシュタインは毒を浴びても大丈夫な様で構わず飛び散った毒を浴びるが、そのおかげで俺は毒を食らわずに済む。


「【刺突】、良し、刺さる……!」


 フランケンシュタインに対して問題無く刃は通り、ダメージを与える。俺に続いてクローナとウリエルも攻撃しようとする。

 だが攻撃を食らったせいか、フランケンシュタインはハンマーを振り回し、毒を一帯に振り撒き始めた。


「パターン変化が早いんだよ……!」


 何とか毒を避けようとするが、範囲も量も多く、少なからず毒を浴びてしまう。お陰で状態異常になってしまい、凄い勢いでHPの数値が減っていく。


「おお、本当に減りが早い……!」


 急いでコトネさんの元へと向かう。その間にモモが氷の壁をフランケンシュタインを囲む様に出してくれたので毒の飛び散る範囲は極端に狭まった。


「やっばいやっばい、回復を……」


「今します!」


 何とか毒は止まり、減った量は3割程で済んだ。ウリエルとクローナも食らっていたみたいだが、コトネさんのおかげで支障はないらしい。


「一々面倒だな……速攻でやらないと駄目か」


「火力は……コウさんなら大丈夫ですね」


「頭叩けば大丈夫だろうしな」


 丁度破砕音と共に氷の壁が砕けた。フランケンシュタインが再度変わらず向かってくる。


「良し、じゃあ【極刀】、【貫牙剣(アウラ)】、【空走場(アハルテケ)】」


 大盤振る舞いとばかりにSPを消費する。フランケンシュタインも変わらずハンマーを振り下ろすが、空中を走る俺には当たらない。毒も、横には飛び散るが、上には意外とこないのだ。


「【刺突】!」


ハンマーを振り下ろし動きが止まったフランケンシュタインに対して思い切り刀を突き出す。カボチャ頭へと難なく突き刺さり、頭が弾け飛んだ。

 頭を失ったフランケンシュタインはその勢いのまま倒れ、消えていった。


「流石にここまで重ねればああなるか……お、ドロップ」


 残ったのは赤色の結晶。フランケンシュタインは青多めだったけど……まあ良いか。


「これで3つ目ですね……毒は大丈夫ですか?」


「うん、かかってない」


「お疲れ様……また明日かい?」


「えっと……そうだな」


 この森だとあまり分かりづらいが、もう日が暮れる。夕飯やら課題やらを考慮すると、やはり1日1体が丁度良い。

 屋敷に戻り、クルトに結晶と鍵を渡す。明日は4体目だ。


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