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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第一章 少年は舞台へ、歯車は揃いゆく
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第二十五話 遭遇、そして邂逅 三


 ガブリエルのことについてやけに詳しく知っているので何か因縁でもあるのかと聞いてみたが


「……ちょっと縁があっただけさ」


と、がっつり因縁でもあるかのような表情で答えたので、ちょっとじゃねえだろとか色々とツッコみそうになったが状況が状況なので飲み込んでおいた。続いてアスモデウスのことについてだが、ほとんどの攻撃魔法と付与魔法は使えるが、悪魔なのでイメージ通り聖魔法、それに回復魔法と王職……4次職の奥義とも言える魔法は使えないそうだ。あと付与魔法でステータスは上げられるが避けるのが精々で近接戦闘はからきしらしい。多少制限はあるとは言えぶっ壊れじゃね?


「え、悪魔全員そんな感じなの?」


「まさか、私はそういうタイプってだけさ」


 そりゃそうか全員同じだったらキャラが立たないもんな。俺ができることも説明し、作戦会議となる。『貫牙剣』の効果が切れるまであと150秒。さて、どうにかなるかな?






 ……作戦会議終了。作戦名は「お互い頑張ってなんか適当に」……いや、ちゃんと考えようとしたんだよ?だって、話しているとエクストラスキルの残り時間が短くなるし、もし効果が切れたら俺はお荷物以外の何者でもなくなる。ぶっちゃけて言えば大した作戦も思いつかないし俺とアスモデウスの手札じゃガブリエルの「聖水」は剥がすことができないのでアスモデウスのサポートを受けながら俺が突っ込むぐらいしかないのだ。ガブリエルの方は頭は冷めておられないようで相も変わらず見当違いな方向へ攻撃しながら移動している。少し様子を窺ってみたがこちらに気づく気配はない。


「どこだ悪魔と羽虫ィ!羽虫にふさわしく叩き潰してくれるわァ!」


 あれに突っ込むのかあ……ほぼ特攻じゃん。まあ腹を括るしか……なんか最近腹を括る機会多くない?アスモデウスに大量のバフをかけてもらいステータスを底上げする。バフの効果量はアスモデウスの実力が4次職レベルなだけあって相当なものだ。気分としては髪が金色になったり黒だか赤だか青だかになる武闘家のごとくである。実際には元のステータスの2倍にすら届いてないのでガブリエルを圧倒できる気はしない。しかしさっきよりは攻撃を視認できそうなので生存率は上がるだろう。


「さて、準備は良いかい?」


「準備もクソもないけどな、サポート頼むわ」


「任せな、一応七大罪の一角だからね、それなりの力はあるよ」


 やっぱり七大罪なのね。アスモデウスだから流石に色欲か。つまりは天使も悪魔もあと6人ずついるわけで……探し当てた方が良いのかどうか……まあわざわざ探す必要はないか割と1人ずつでお腹いっぱいです。よく考えてみるとどうでもいい理由で天使に喧嘩を売ってるな、いや俺としてはどうでもよくないが。初手はアスモデウスがするそうで俺がガブリエルの死角から攻める予定だ。はてさてどうなるか。


「『ラヴァコンシール』!」


 アスモデウスが魔法を唱えると同時に横へと駆け出し大回りしてガブリエルに近づこうとする。アスモデウスが派手に出した溶岩の壁がガブリエルに覆い被さろうとするが冷静ではなくとも流石にここまで派手にやれば流石に気づく。


「悪魔の児戯ごときが。『マレノストルム:アクートゥス』」


 「聖水」を操作して巨大な突撃槍を作り出しガブリエルに迫る溶岩の壁をぶち抜かれ、呆気なく破壊される。


「これぐらいで通じないのは分かってるさ!『グレイシアマジェスタ』!」


「『セカーレ』」


 難なく迎撃されたのはアスモデウスも予想通りだったのか、先程も使用した魔法で氷のフィールドを作る。破壊された勢いで飛び散った溶岩も巻き込んで氷を出現させたので複雑な形になると同時に余熱で氷が少し溶けて水蒸気が発生し、視界も塞いでいる。ガブリエルへと迫っていった氷は形が無数の刃のようになった「聖水」に切り刻まれていったがそれも考慮済みだったのだろう刻まれた勢い以上に飛び散りそれもまた視界を防いでいる。すごいなあれ、ちゃんと計算してああなったのだろうか?あ、ちょっとドヤ顔してる、ちゃんと計算した結果か。今の俺の位置からガブリエルまでのルートっぽいものも用意されてるみたいなのでそれを頼りに進んでいく。過剰なまでのアスモデウスによる視界を塞ぐ攻撃に警戒しているのか守りを固めているがガブリエルが大きく動く様子はない。警戒し辺りを見渡すガブリエルが反対側を向いた瞬間、走り出す。刀は【抜刀】を使い少しでも攻撃速度を上げるために抜かずにおいている。ガブリエルは迫る俺に気づき先程と同じく「聖水」で守りを固める。ん?なんか違和感。ガブリエルが作り出した球体は先程と同じ大きさなのでなんとなくどこを攻撃すれば深手を負わせられるのかは分かるが、浅いとはいえさっきも攻撃自体は届いたのだ。いくら羽虫と罵った俺に傷を負わされて興奮しているとはいえ、俺の攻撃に対して同じ行動をとるか……?罠……?しょうがない、肉を切らせて骨を断つ理論、下から反撃はやめてね!


「【抜刀】!【朧流し】ィ!」


 飛び跳ねスキルを発動し、刀を抜く。ガブリエルの頭があるだろう位置へと抜いた勢いのまま刀で斬りつけるが、予想通りだったのだろう下から剣山のような感じで地面を突き抜けた「聖水」が俺に迫ってきた。即座に【朧流し】を発動したが全てを受け流せたわけもなく、多少ダメージを受けながらもその場を離脱する。あぶねー、罠の可能性を思いついてなかったら、あれに反応できずに串刺しだったわ。多少暴れて少し冷静になってたか……?


「ふん、同じ手を食うわけないだろうが。今ので死んでおれば良いものを……流石は羽虫といったところか。周りをうろちょろと飛び回るせいで中々攻撃が当たらん」


 事実なのにあいつの顔と口調のせいでイラッとするわぁ……あと羽虫に例えるのいい加減やめてくれませんかねぇ。例えが微妙に理解できるせいでそれが俺だと思うと複雑な感情なんだけど。さて死角からの攻撃はもう無理か。あとはもうちゃんとした隙というものを作らないと当たんないだろうな。スキルの効果時間もどんどん減ってきている。


「『ブレイズスパイラル』」


 螺旋状の炎がガブリエルを飲み込む。アスモデウスの魔法か、今のうちに合流しよう。


「大丈夫かい?」


「ああ、体力自体はポーションをかけたりすれば……」


ガブリエルの周りに炎が残っているのでダメージはもちろん入っていないだろうが今のうちにポーションを傷口にかける。


「思ったよりも冷静だったねぇ……」


 傷をつけられたことについては今もキレているのだろうがそれを抑える理性を持っていた。流石は天使というべきか……1つ作戦を思いついたというか、これを作戦とは言ってはいけないような。その内容が酷い作戦をアスモデウスに簡略化して伝えガブリエルへと一直線に走り出す。


「ふん、どうにもなくなって、死ににきたか『マレノストルム:スパエラセカーレ』」


「【抜刀】」


 俺に向かって無数の刃が迫ってくる。抜刀した勢いで迎撃していくが、全てを防ぎきれるはずもなく半分以上が迫ってくる。アスモデウスも後ろから俺に当たらないように魔法を放ち数を減らしてくれているがそれでも何発か当たる。このままだとガブリエルに辿り着くまでにHPが無くなるだろう。だからこそポーションを飲み続け、かけ続ける。エクストラスキルのおかげで片手で持っていても相手の攻撃は斬れる。それを生かし空いた片手でポーションを取り出し飲むか、攻撃を受けた箇所にかけHPの減りをなるべく抑え続ける。暇がない時は相手の攻撃の軌道にポーションを投げ破壊させ、それを被る。死んでないだけでほぼゾンビアタックだが、もう一撃叩き込めれば十分だ。あと30秒……!



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