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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第十章 秋だ!糧だ!豊年満作。
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第六話 急いで一通り


「とりあえずイプシロンさんの所に行かないとですね」


「イベント中だけど、しょうがないねー……」


 報告は早い方が良いし、後に回して面倒事が起こった場合責任を取らなきゃいけない。二重でややこしい事になるならと、イベントを中断する。そんな何時間もかかる事では無いだろう。


「イプシロンさん出るかな……戦闘中じゃないと良いんだけど……」


『コウ君?珍しいね……何かあった?』


「あ、出た……えっと、6人目って言って分かります?」


『6……?えっと……あ、本当に?』


「そうですね、ちなみにタルさんです」


 イベント中、イプシロンさんがもやの中で探索を行なっている可能性は十分にある。更にはボス戦だったらたまったものではないが、どうやら取り込み中では無い様だった。

 ありがたいと思いつつ、あちらの状況が分からないので具体的な事は言わない様にしながら報告する。

 タルさんについては一応了解は取っていたし、目を向けても特に何も無かったのでネームを出す。


『え、タルって……まあテイマーのタルさんだよね……?』


「そうですよー」


「という感じで……どうします?」


『いやまあ……話は聞きたいけど……うーん、悪いけどポールスターの拠点に来てくれる?やっぱりそこが1番安全だから……今何処?』


「ドライタルですね。少しかかりますけど良いですか?」


『大丈夫大丈夫。僕達イベントフィールドの中だから。とりあえず先に行ってて、話しは通しておくから』


「分かりました」


 馬車システムでも10分程はかかるだろうが、そこはそれ、話がすぐにまとまったと思えば大した事は無い。イプシロンさんがイベント中なのに手隙だったというのも運が良いと言えるだろう。


「という訳で、王都に行きましょうか」


「そうですねー、行こう、サーちゃん」


「すまない、俺のせいで厄介事を……」


「それは契約した時に覚悟してたから大丈夫だよ」


「そう言ってくれると助かる……む、そうなるとベルゼバブに会う事になるのか?」


「そうだねぇ、あんた相性悪かったっけね」


 相性が悪い、ね……憤怒って何だったかな、今は大人しいもんだけど。モモとかと同じで大罪そのまんまじゃないタイプかな。

 人型のままだと半裸ジャケットだけに目立つので、サタナエルは狼の姿に戻った。それを見て、コトネさんがまた撫でたそうにしていたが……中身が分かった以上、ステイと言っておきたい。

 そういえばショウに連絡していないが……あいつに関しては後で良いだろう。ベルフェゴールの事を言っても良い知り合いだとは言っていたが、それでも6人目の事を言って良いかは分からない。ベルフェゴールまで集める利点は無い……はず?

 とりあえず馬車を乗り継ぎながら、王都へ向かう。王都に入れば分かるのかと思っていたが、狼というか、獣の姿は隠蔽効果があるとかで人通りが少なくなったタイミングで人型になってもらった。これでシャーロット達側にも伝わるはず。どうせ話しを通すのは俺達になりそうだし。

 イプシロンさんはすぐに連絡をしてくれていたみたいで、拠点にはすぐ入ることができ、いつもの部屋へと通された。中にはベルゼバブと、ミモザさん。まあ予想通りか。


「あ、皆さんお久しぶりです。クランリーダーはもう少しかかるみたいで……」


「久しぶり……まあそれは分かってるから……座っても?」


「どうぞどうぞ……あ、お茶を出さないと」


「ミモザ、おかわり」


「はいはい、今出すから……」


「あの、そこまで構わなくても大丈夫ですよ……」


「いえそう言う訳には……」


 実際お茶なんて飲まなくても大丈夫なメンバーばかりだ。ベルゼバブの催促を滞らせる方が面倒な事になるので、それに専念してもらいたいが……まあこなしているのであまり口を出すものじゃないか。


「大食漢な子ですねー」


「そういう問題では無いぞ、マスター……相変わらず、貪り食っている様だな、ベルゼバブ」


「んぐ……サタナエルじゃん、何でここいるの?」


「少しは経緯を考えたりせんのか、貴様は……」


「興味無い」


「ぬう……!」


 いつも通りだなあ……予想はしていたのか、多少イラついてはいる様だがサタナエルは引き下がった。

 これでベルゼバブとの面通しは終わったから、関わる気もないのだろうな。下手に突いても良い事無い。


「やあごめん、待った?」


「いや、待ったという程じゃ無いですね」


「こんにちは」


 イプシロンさんが到着した。一緒にエコさんも入ってきたが……すぐにタルさんの方に行ったあたり、知り合いとかだろう。


「じゃあ僕が言うのも何だけど……早速教えてくれるかな」


「ああ、はい」


 町で判明した経緯、タルさんがサタナエルと遭遇し契約した経緯をそれぞれて話していく。

 2人は森で遭遇したようで、最初はレアモンスターかと思いテイムを仕掛けたところ、判明した様だ。その時から狼の姿だったと思いながらも、まあ特に劇的な事も無く偽装もしやすいとの事で契約したそうだ。


「うん……話した人はいないよね?」


「そうですねー、面倒になると思ったので……コトネさん達にバレたのも事故ですし」


「私にも話してなかった」


「しょうがないでしょー?エコはここの所属なんだから」


「まさか知り合いに出会うとは思わなんだ」


「それは運が悪かったねとしか……」


 やはりエコさんとは知り合いというか、割と仲が良いのか軽口を叩いている。

 一通り話し終わり、確認も済んだ。他のクランへはイプシロンさんが伝えるだろうし、ほんの1時間程で済んだ訳だ。


「あとはー……何かしなきゃいけない事はありますか?」


「うーんと、一応集まってほしい時に予定を合わしてくれると助かるけど……まあ用件が伝われば良いしね。必要な戦闘にはほぼ……言いたく無いけど強制かな」


「それは、予想してましたので……分かりました」


「よろしくね。後は、国というか王女様には……コウ君お願い出来るかな?」


「まあそりゃそうですよね。分かりました」


「ここに来ないって事は、そっちの屋敷にいるんじゃないかな……」


「いるだろうな……」


 イプシロンさんは若干申し訳なさそうに言ってくるが、その方が早いから仕方ない。

 シャーロットに関しては勝手に入って今更文句は無い。それはそれとして同じ説明をしないといけないのは……一度に集まらない時点で諦めるしかない。

 一応そちらにも面通ししないといけないので、タルさんを屋敷に連れて行く。


「凄い所を拠点にしてますねー?」


「タルさん程じゃ……これ貰い物だし」


「貰い物って言って良いんでしょうか……?」


「私の所は1人で建てた訳では無いのでー……」


 屋敷に入り、談話室。はい、いた。


「妾じゃ」


「知ってる」


「厄介事が起こっている最中に重要事を持ってこないでほしいんじゃがの……」


「そう言われてもな……」


「謝った方が良いんでしょうかー……?」


「いやお主に非は無いからの。秘匿しようとするのは当然じゃ……話を持って来るのがコウなのがアレじゃが」


「俺のせいかい」


 確かに多い様な……というか、モモのせいじゃね?最初の起点はモモが持って来ている気がする。


「とりあえずこちらとしては所在が分かれば良いし、その点に付いてはお主……タルは全く問題無い」


「イプシロンさんと大体同じですね」


「こちらとしてもありがたい」


「サタナエルじゃったか、まともそうで良いの。とにかく、そういう訳じゃ……とりあえずはドライタルの一件を何とかしなければ」


「それはそうか」


 イベント真っ最中で、この件だ。シャーロットは流石にイベントの調査に関わる事は無いらしいが、それでも王女としてしなければいけない事柄は多いらしい。話が終わるとメイドさんに抱えられて、去って行った。そこまで急ぐ事があるのやら。

 兎にも角にも、イベントの最中では6人揃っても進行はしない様だ。タルさん達はイベントに戻るらしいし、俺達も、ボスの1体ぐらいは倒しておきたい。


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