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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第九章 記念の祭り、各々らしく
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第二十話 安心保証、ざる芝居


 ホマスとのクエストが終わった翌日……翌日というか、当日ではあるのだがまあ、1回寝たので気分的には翌日だ。

 特にやる事も無く、普段通りレベル上げでもしようかと思ったところ、見計らったかの様に来客が来た。


「誰だ……お前か」


「お前とはなんじゃ、お前とは」


 玄関の扉を開け確認すると、シャーロットだった。思わず雑に反応してしまった……流石に不敬が過ぎたかな。遊びに来たという風体でも無し、拒む理由ももちろん無いので招き入れる。

 シャーロットはちょくちょくここに来る訳だが、今までの傾向からして、2日ぐらいは空けると思っていた。それが1日空けた今日来るとは……まあ気まぐれと言ってしまえばそれまでだけどな。


「今日はどうしたんだ?今日来るのは珍しい気がするけど」


「なあに、主に世間話じゃ。少し話したらすぐ帰る」


「……?そうか」


 何やら今日はお茶を濁すな。雰囲気としてはいつも通りにしているけど、少しばかり神妙というか何というか。メイドさんもいつも通り……あの人は殆ど表情変えないし、表に出さないだろうから参考にならないな。いつもの如くお茶を準備しに行ったし。

 シャーロットは話すのは少しと言ったし、すぐに分かるか。悪い話なら率直に言うだろう。


「どうぞ」


「ああ、いつもどうもです」


「いえ」


「では良いかの?」


「まあ良いけど……世間話じゃ無かったのか?」


「あ、そうじゃった。今の無しで」


「おい……」


 場を和ます為にわざとかと思ったが、素で間違えた様だ。というか、この調子という事は、この茶を濁した感じはわざとやっているのか?思っていたより大した事無い内容なのか……?


「まあそれはそれとしての……えー……そういえば、ノインケルで大捕物があったのじゃ」


「ああ、その件の話か……」


 思っていたより直球に来た。いや世間話といえば世間話の範囲だけど……あからさますぎる。

 演技が下手というよりは、導入が雑過ぎだ。シャーロット自身もそう感じた様で、若干顔が引き攣っている。


「危険物は無事騎士団に押収され、所持していた貴族、雇われた賊全員捕縛に成功したらしいのじゃ。突入時に門が壊れたそうじゃが……まあ語る程では無いの」


「そ、そうなのか……ありが……いや世間話か」


「そう世間話……んーー……面倒じゃ!」


「え」


「お主の関わった内容が内容じゃから、直接言わん様にしていたが……そも誰も聞いておらんし別に良いじゃろ!回りくどくて面倒な事この上ない!」


「み、身も蓋もない……」


「それに、お主も少しは話を合わせんか!」


「ええ、俺のせい……?」


「殆ど殿下の自爆のせいかと」


「お主まで言うのか、ナタリー!」


 間接的な話し方に耐えかねたのか、シャーロットが爆発した。元から起爆していた感じもするけども……今までの過程が全て台無しになったな。


「もう直接言うがの、そちらで行った事は特に心配いらん!日常茶飯事という訳では無いが、適材適所というわけじゃ!」


「本当に直接的だな……まあ大丈夫だとは思っていたけど。わざわざ教えに来てくれたんだろ?ありがとう」


「そうじゃ、感謝せい!一応伝えに来たは良いが、遠回りに言うのが面倒臭くなったりはしておらんからの!」


「分かった分かった」


 そう言って、シャーロットはお茶をぐいと飲み干した。付け合わせの菓子も頬張り、若干行儀が悪い。ここはシャーロットの親切心に素直に感謝しておくべきだろう。


「話はこれしか無いからの。今日やらねばならぬ事も残っておる……お暇させてもらうぞ!」


「ああ、ありがとうありがとう。片付けはやっておくから」


「そうか、ではさらばじゃ!」


 公務に戻るのだろう2人を見送り、茶器を片付ける。

 意図知れずシャーロットからのお墨付きも貰ったし、ホマスとの一件は本当に気にしなくても良くなった。


「じゃあレベル上げ……邪魔入らないと良いけど」






「それで、ホマスに協力したんだ」


「そうそう。色々あったけど」


「まあアレ関係のクエストはね……そういうロールをするつもりが無い時は終わっても若干不安になるよね」


「翔斗もやった事あるのか?」


「1回ね」


 学校の昼休み、ゲーム中ではタイミングが悪かったのか翔斗に会う機会が無かったのでこのタイミングでの話となった。

 どうやら翔斗も似た様なクエストを受けた事がある様で、すんなり話が伝わった。まあそりゃ色々人脈が広い翔斗なら体験する事も……あるか?どんなゲームでも人脈やばいのは一体何なのか……やはりコミュ力。


「まあ僕の場合は、誘われた相手はホマスじゃないし、内容もアウトローを秘密裏に……って感じだったから、鋼輝ほど闇深い事に関わって無いけどね」


「闇深……そうだよな、貴族関係だしな……」


「それに僕は報酬貰って終わりだったし、専用のNPCもギルドとやらも行ったこと無いね……どうだった?」


「酒場的な場所で……謎空間。大体それっぽい感じだったよ」


「いや簡潔過ぎて分かんない……説明する気ないでしょ」


「いやいや……」


 言葉の通り……俺が言われた側だったら確かにわからない。しかしあのギルドの事をどう伝えようか……伝えるだけなら、そのまま言えば良いだけだが、果たして広めて良いものか。他言するなって言われてないから大丈夫だな、うん。どうせ辿り着けないし。


「ああ、それなら確かに誰も場所を知らない訳だ。『盗王』については、多少スキルについては分かっているのに、条件とか設定はあんまり情報無いから……」


「へえ、意外だな……サイトに載ってなくてもトップ連中は知ってるもんだと思ってた」


「まあ知ってる所もあるかもしれないけど……『盗王』ってレベル上げてなれる様なジョブじゃないみたいだしね」


「まあそこら辺は良いとして……まあ体験としては良かったよ」


「結構プレイ幅広いからね。そういえば秋イベも近いよね」


「ああもうそんな……王都祭のタイミングがずれてただけか」


 秋といえば、食欲、運動、芸術……全部ごった煮で来そうだな。内容はともかく、季節のイメージ自体は守ってくるはずだから、何とも言えない。


「告知来ないと判断付かないな……」


「そうだね、今日どうする?暇だけど」


「いや俺が暇じゃ無いんだが。出された課題の量覚えてる?」


「あー……すぐ終わらない?」


「終わるか!」


 こいつはもう……今日は課題を終わらせて寝よう。秋イベまでは、ちゃんと勉学に励むんだ……レベル全然上がらないし。


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