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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第九章 記念の祭り、各々らしく
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第十八話 期待外れ過ぎて怖い


 決行当日……まあやると決めたのは昨日だけど。ホマスと話をした後、ノインケルの露店を見て回ったが、上手く装備を隠せる様な外套は見つからなかった。とりあえず屋敷に戻たところで、試しにアゲハに何か無いかと聞いてみると、それっぽい物を持ってきた。

 名称は「あてもなく放浪を続ける旅人風マント(荒野)」だそうだ。名前はもう少し何かなかったのかと聞いてみたところ、アニメで見て面白そうだから作っただけとのこと。まあ使うのに支障は無いし、本人は箪笥の肥やしになる物がお金に変わったと喜んでいたから良しとしよう。丁度良かったし。

 決行1時間前になったので、ホマスの一時拠点を訪ねる。ノックをすると鍵が開いたので入る。中にいたホマスは、廃教会で姿と現した時と同じ、白づくめの装備だった。


「それ夜だと更に目立つな……大丈夫なのか?」


「これに変えてから1度も失敗してないよ。性能は折り紙付きさ!なんたってレイヴン製だからね!」


「え、お前レイヴンさんのところからも盗んだって聞いたけど」


「それはそれ、僕の頼んだ装備内容聞いたら割り切って作ってくれたよ。本人曰く、それは1度も試した事は無いから興味があるってさ。職人様々だね!」


「ある意味弱みにつけ込んでるな……まあそれなら性能は確かか」


 何を盗んだかは結局分からないが、多少の恨みを飲み込んで装備を作るとは……職人気質って大変だな。まあ気質と言っても、興味はあっても受けない人はいるだろうが。


「それで外套用意した?まあ最悪無くても大丈夫なはずだけど……」


「ああ、これだけど」


「あ、それなら良いね。それっぽいし、外見は隠せる」


「そうだ、仮面を貰えるって話だけど……?」


「そうだね。じゃあ……もう良いよ」


「え?な「こんにちわぁ」に、うわっ」


 ホマスの言葉が合図だったのか、突如背後に2人現れた。何だろうな、確実に強くなっているはずなのに背後を取られる機会が多くなっている様な……慢心?まあ気配を読むなんて技能も仕様も無い訳だからしょうがないとは言え……駄目な気分になってくる。

 背後に現れた2人の右側は、俺に耳元で声をかけてきた方だ。声的に女性だろうが、もう1人は何か喋る事はなく分からない。

 2人とも仮面を被り、ローブを纏っているから、声と身長ぐらいでしか特徴が掴めない。


「……女性?」


「あらー、女性だといけませんか?腕は立ちますよ?」


「いやそういう意味じゃなくて……いやそう聞こえるか」


 もう1人の方もコクコクと頷いている。無口なタイプ……というか、両方女性か。ホマスに合わせてるからかな。

 その2人は仮面とフードを下ろし、顔を露わにする。先程から話していた方の女性はウェーブのかかったピンクの髪、無口な方は黒、いや紺のおかっぱだった。


「どうぞ、よろしくです」


「ああ、どうも……」


 横のおかっぱの女性もコクコクと頷く。話す事は無い感じかな。まあそこまで話す事は無いだろうし、最低限のコミュニケーションが取れれば大丈夫だ。


「じゃあ自己紹介も終わったところで……」


「いや名前とか……そも俺何と言ってないけど」


「あなたの事はホマスから聞いてますよ。それに基本的に私達と会うのはこれっきりでしょうし……これからもホマスさんと組むつもりだったりします?」


「いや無いけど」


「即答……」


「それなら互いに知る必要は無いですねぇ。まあでも不便なので……アルファとベータでお願いします」


 おかっぱ……仮称ベータもコクコクと頷く。まあこれから数時間程度の付き合いしかないのだから、そこまで知る必要もないのも確かだ。裏の世界の住人とかそんな感じのキャラか。


「ではでは、これをどうぞ」


「ああ、仮面……鑑定できない?」


 仮称アルファが差し出してきたのは先程まで2人がつけていた物と同じ仮面だった。何気なしにどんな物かを鑑定してみたら、不可という結果が返ってきた……まーじで?


「あ、レベル8でしょ?無理無理。10無いと名称すら見れないからね」


「アリなのかそれ……そんな代物なら色々と効果があるんじゃ?」


「そうですよ。それをつけた人物の情報が鑑定不能になりますし、気配隠蔽の補助効果もあります」


「うわ、スゴイ」


「まあ今日みたいな役割の時や、新人さん用ですね、数少ないので。ホマスさんも最初はつけてましたね」


「最初からこんな事してたのか……」


「いやまあ方針はやる前から決めていたからね」


 ロールプレイは筋金入りか……レベルが低い状態で、どう怪しげなギルドに接触したのかは知らないけれども。

 とにかく、身バレ対策はバッチリって事か。


「後は……何かあったっけ?」


「特に無いと思いますよ、ね」


 アルファに聞かれ、頷き返すベータ。渡される物は仮面だけらしいし、俺達が囮になっている間に、ホマスが盗み出すだけだ。不備とかあったら困るけど……俺が推し量れる事じゃ無い。


「じゃあ行こうか!さっくり行ってさっくり帰ってこよう」


「……そういやホマスが盗み出せなかったらどうなるんだ?」


「ノインケルが滅びかけるぐらいで済むと思いますよ?」


「思ったよりの規模……!」






 拠点を出て、目標の屋敷の方へ。もちろんホマスは別行動なので、途中で分かれた。こちらも外套を羽織り、仮面を付ける。


「お似合いですよ?」


「いや仮面に似合うもな……門はどうする?斬ろうと思えば斬れるけど」


「それは凄いですね……でももう少し派手にいきます。もうホマスさんも入り込んでいるでしょうし」


 そう言うなり、ベータの方が門から距離を取る。まるで助走をつける様な……そんなに派手に行くの?


「あ、メインの切った張ったは予定通りお願いしますね。ベータもご予想の通りの身体能力はしてますが……得意では無いので」


「ああまあ……そういう依頼だしな」


 ベータが門へと走り出し、そのまま飛び蹴りを繰り出した。予想より遥かに速いスピードで繰り出された蹴りは門をひしゃげるどころか、吹き飛ばし、屋敷の前の庭に立っている像を破壊した。


「て、敵襲だー!」


 屋敷の外を警戒していた賊が異変に気付き声を上げる。途端に屋敷の中が騒がしくなり、どんどんと人が出てきた。


「さて、やるか」


「はい、よろしくです」


 こちらへと向かってきた1人を鞘から抜いていない刀で殴り倒す。その男は気絶したのかすぐに倒れた……思っていたより弱い。もう少し弱めでも大丈夫か、NPCもピンキリだな。

 後ろから別の男が剣を振り下ろしてきたが、その速度は遅く簡単に避けられた。もうなんか面倒だったので、思い切り殴ってみると2メートル程飛んで動かなくなった。


「弱すぎね……?」


「そうですね?ここの貴族ならもう少しまともなのを雇えるはずなんですけど……過大評価でしたかね?」


 迫ってきた男を投げ飛ばしたアルファも困惑している様だ。事前情報だと、対処は出来るとしてももう少し出来る賊なんじゃなかったっけか。

 少し離れた所では、ベータが伸びている男の足を掴んで振り回し、囲んでいる男は男達にぶつけている。そんな雑な攻撃で……と思ったが、普通に当たっている。何だこれ。


「あ、でももう少しまともな奴が来ましたよ」


「おお、本当だ」


 アルファが指差した先には、丁度屋敷から出てきた大柄な男が。大剣を持ち、いかにも見た目……やはりあからさまに賊なのはどうにかならなかったのだろうか。


「お前らが侵入者か……死ね!」


「おっと」


 流石にボスキャラだけあって、そこそこ速い。けどなあ……クエストの推奨レベル間違っている様な。

 大男が振り回す大剣を避ける。力はある様だが、何分隙だらけだ。


「それっ」


「ぐっ!?お、おぉぉ……!」


「うわ、マジか……」


 脛を蹴れば大ダメージ、剣を振り回すのを止め、悶絶し始めた。ちょっとちょっと、本当に困るんだけど?

 流石の弱さに困惑していると、突如屋敷の一室が爆発し、煙が上がった。


「あ、ホマスさんからの連絡です。逃げますよ!」


「え、あれが!?」


「信号弾とか撃つのは不味いですからね!」


 信号弾じゃなくとも、声……物……まああれで良いのか。ただの破壊跡で済むんだし。惨状からして色々と不安は残るのだが、すぐに去るしかない。

 アルファに着いて行き、屋敷の裏へと回る。屋敷の門の方は何やら騒がしくなっており、よく聞くと騎士団だと思われる。こんなに早くに来るのか……まあタイミング見計らっていたんだろうな。俺達もあのままいたら一緒に捕まるのだろうが、こうして逃げれば追いかけてくる事もない。とりあえず山場は過ぎたかな。


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