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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第九章 記念の祭り、各々らしく
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第十七話 アングラクエスト

毎日更新に移ります。


「じゃあ改めてよろしくね」


「ああ、まあ暇なのは暇だし……それで、クエストの内容は?」


「そうだね……とりあえず移動しようか。ここじゃなんだし」


 路地に入ったとはいえ、表通りには人通りが普通にある。ホマスのクエストは表立って言える事では無いので、移動するのは最もだろう。変に聞かれて俺までお縄になるのはごめんだし。


「じゃあ、そのギルドとやらか?」


「いや僕の拠点……今借りてるだけの場所だけど。割と近くだよ」


「そうか」


 ホマスに連れられ、日の差し込まない暗く細い道を歩いていく。何やら秘密基地にでも辿り着きそうな雰囲気ではあるが、実際そうなんだろうな。これでただの宿っぽい所に案内されても……それはそれでそれっぽいか。まあ確実に誰かに聞かれそうではあるが。


「さあ、ここだよ!」


「おお、それっぽい……」


 着いた場所はレンガ調の建物、そこの半地下になっている部屋だった。中に入ると事務所の様になっており、探偵というよりは何か企む輩にうってつけの雰囲気だ。これは良い……ロマンがある。


「ふふん、毎度場所の剪定にはこだわっているからね……!」


「……じゃあ、お前が現れそうな町のこんな場所を見張れば見つけられるのか」


「あっ……ま、まあこういうとこ色々な町にいっぱいあるし!そんな無粋な事しないよね!?」


「……俺や仲間が対象じゃなければ?」


「……うーん、どうだろうね……」


 そこは言質が欲しかったな……ロールプレイをしてある相手にそれを欲しがるのもある意味無粋か。基本的に面白いを行動原理にして動くプレイヤーなんだし。こちらに損が出るなら悪質にならない程度に反撃すれば良い。

 部屋の奥の方には、紙やら写真やらが貼られ、いかにも計画を立てている様な壁があった。これが今回のクエストに関係するのだろうか。


「まあ貰った資料をそれっぽくしたんだけど……普通に読んだ方が分かりやすいんだよね。ギルドの方が下調べした状態で僕にクエスト来たし」


「意味無ぇ……ああ、これがクエスト画面?」


「そう、まだ見せてなかったからね」


 表示されている内容を読む。どうやら目標は貴族の様ではあるが、対象になるだけあって色々とあくどい事をしているらしい。クエストになったのは、欲張って手を広げすぎた為にお上の逆鱗に触れたとか……お上ってまあ、王族とかそれに近い人達だろうなあ。程々にやってりゃ良いのに……いややってたらコンテンツとして成り立たないか。

 そしてその貴族は近く動きがあるだろうという事なら気づいたらしく、怪しい賊を雇い更にはやばいブツまで入手したとか。


「こんなテンプレートな展開用意してるんだなあ……このやばいブツがお前の目的?」


「そうそう。文字通りかはともかく、爆弾みたいな物らしくて、下手に追い詰めて使われたら困るってさ」


「そりゃ困るわな……というか、これ俺必要か?切った張ったならまだしも、コソコソ忍び込んで……なんて真似は出来ないけど」


「まあコウにそこは期待してないよ……ぶっちゃけ言うと、やってほしいのは囮だね」


「あー、賊?」


「そう」


 人の目が多すぎれば掻い潜るも何もありはしないか。透明になれるなら大丈夫かもしれないが、そんなスキルや装備があってたまるか。数秒なら可能性はあれどクールタイムはクソ長いはずだし、数秒では意味がない。

 敵の目を逸らす為に引きつける役は必要という訳か。


「それで、あと何人いるんだ?流石に集団相手に1人は……」


「ああ、もう2人いるよ、NPCだけど。助っ人を頼むのは僕の裁量に任されてるから……プレイヤーで、丁度良かったのコウしか見つけられなかったし」


「は?


 大丈夫という雰囲気で返答したホマスは、アイテムが入った木箱に手を突っ込み、ゴソゴソと何かを探している。一度ひっくり返した方が早いんじゃないかと思うが、それよりも何も。


「いやいや……NPC2人って実質1人だろ。やはり罠か……!」


「え、ちょっ……だって調査情報だと大した感じじゃなかったらしいし!30人ぐらいいるみたいだけど大丈夫でしょ!?刀チャキチャキするのやめて、ここ借りてるんだから下手に傷つけると賠償しなくちゃいけないから……!」


「リアルな事情……いや30人?4次職になったとはいえ……」


 余程雑魚じゃないと、多勢に無勢すぎないだろうか。一昔前の無双ゲームじゃないんだから、ステータスに余程の差がないと剣も矢も刺さるんだぞ。NPC2人って足枷にしかならないと思うのだが……放置しても問題無いような強さのNPCがそうそういてたまるか。


「この前戦った感じからして、コウならあの30人ぐらい大丈夫だと思うけどね、それにNPCもしぶとい人達だし……じゃあ少し覗いてみる?」


「近づいても大丈夫なのか?」


「まあ王都の高級地じゃないから人通りもあるし、目立つ外観だから多少チラ見するぐらいは普通……なはず」


 という訳で、目標の屋敷を偵察しに行く事にした。町の中心部にあるだけあって、王都の高級地で見かけるものと遜色ない規模であった。ただ……何というか、趣味が悪い?

 各所の装飾はゴテゴテとして何を表しているのかよく分からない。庭にも太ったおっさんの像が大量に……ご先祖とかか?置く場所間違っている気がする。

 そして、チラホラ明らかに柄の悪そうなNPCが庭や窓に見える。うーん、明らか。これで全員善人だったらギャグに近い。


「どうだった?」


「趣味悪かった」


「まああれはね……良く見て現代アートの類だよね。それで人の方は?」


「まあまあ……大した装備もしてないし、陽動自体は出来るかな」


「そうでしょ、そもそも僕が盗み出すまで保てば良いから」


 そもそもこのクエストは馬鹿な事をしようとしている貴族の力を削ぐ為のものだ。実際の大捕物は騎士団がするらしいので、全員ぶちのめして貴族を捕まえる……なんて事はしなくて良い。よくよく考えたらそこまで大した事は無いような……怪しまれない様に程々に賊をのしていけば良い。


「じゃあ目標も目的も共有したところで……素顔で行く訳にもいかないでしょ?装備だけど……一応外套とか用意しておいてね。無かったら貸すよ?」


「白じゃん……顔は?」


「決行前にNPCから貰ってね。クエスト専用アイテムだから」


「なるほど」


 確かに素顔がバレると不味いか……あれ、表向きには俺達は貴族の屋敷に忍び込んだ、もしくは殴り込んだ賊じゃないだろうか……深く考えない様にしよう。外套は露店であまり動きが邪魔にならないものを買えば良い。


「決行は明日の夜中だけど……」


「大丈夫大丈夫、何時間もかかんないだろ?」


「そりゃもちろん。似た様なクエストはいくつかこなしてきたし」


 やる事はシンプル、若干犯罪扱いにならないかが未だに心配だが……面白そうなのは確かなので、最悪シャーロットに泣きつこう。

 少女に泣きつく……絵面が……しかもとんでもない貸し作られそうだ。ええい、やると決めたからには腹を括ろう。とりあえず外套買わないと。


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