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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第九章 記念の祭り、各々らしく
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第十六話 割と早い再会


 王都祭イベントから数日後、俺はノインケル南西の村にいた。4次職以降のレベル上げに効率の良いクエストが見つかったとかで、行ってみることにしたのだ。

 実際には発見されてから1ヶ月ぐらい経っている。効率に良いと分かれば、プレイヤーは押しかけるもので、これまではやたら混んでいたのだ。しかも人数が多過ぎると大体パーティ人数上限ぐらいに分割されていたのが、敵の数は変わらずに強制的に団体進行にされる為とても効率が悪かった。

 そういう訳で、1ヶ月経ってから試した訳だ。結果は無事パーティ人数程度に割り振られ、結構な経験値を稼ぐ事に成功した。

 大量のモンスターの討伐が目的だったので、状況的には乱戦だった。更には固いのが売りのモンスターだったためか、【貫牙剣(アウラ)】が大活躍だった。もちろん倒す勢いも調整したから怪しまれてはいない……はず。モンスター自体はフィールドにいるから倒し慣れているプレイヤーなのかな……ぐらいで済んだはずだ。こちらとしては楽々狩れた訳で、随分と美味しいクエストだった。


「さて、どうするかな……」


 報酬も受け取ったのでノインケルに戻って来た訳だが、大してする事が無い。美味いレベル上げクエストの余韻が残っているから、効率が悪くは無いはずの通常のレベル上げに行く気もしない。今は予備も含めて素材には困っていない上に、頼まれる様な事もない。

 普段ならそういう時はフィールドでも散策するのだが、先程クエストで2時間ぶっ通しで戦闘だったので普通に疲れている。

 今日はもうこのまま屋敷に帰ってログアウトでも良いかなと考えていると、急に横から伸びて来た手に捕まり、路地に引き込まれた。


「おっ、ちょっ、何だ!?」


「いやあ偶然偶然、久しぶり〜!」


 俺を引き込んだ人物はプレイヤー、見覚えのある装備に見覚えのある顔、見覚えのあるプレイヤーネーム……!


「ホマス……!」


「いやだな、今はチャナだよ。合わせてくれると助かるな」


 随分と早い再会だった。まさか向こうからやってきてくれるとは。2時間ぶっ通しの戦闘の疲れも何処かへと消えていった。


「ここで会ったが100年目……!」


「ノー、ノー!ちょっとその刀をしまって……ほら、ここでキルしたらPKになっちゃうよ!?」


「カリファが大丈夫って言ってたし、後で仕様も調べたけど問題無かったぞ」


「うーん、きちんと調べていて偉い……!こりゃやばいね……でも、実はキルする程じゃないでしょ?」


「……お前に言われると若干イラっとするけどな」


 別に騙された挙句に景品を全て持っていた事に腹が立っていた訳では無い。怪盗的なロールプレイが出来る様になっている事からして、正体を明かした上であの場で仕留められなかったこちらが悪い。PKと同じく、質が悪い様ならきちんと運営が動くのだ。PK行為自体は許容されているゲームでPKそのものを詰る馬鹿はいないはず。復讐するのもアリな訳だし。

 腹が立ったというか、何かあった時に崖から突き落としたくなるぐらいにはイラッとしているのは、景品を返された事だ。流石に素直には受け取れない上に、現物が残っているとチラホラホマスの顔がチラつくのだ。カリファもそうみたいだし、サツキさんも……いやあの人は後で覗いたら元は取れたとホクホク顔だった。あの人被害者側だっけ。

 まあみみっちいといえばそうかもしれない。仕様の範囲で良い様にされた訳だし。なのでこの場で一方的にキルするというのも……というか、これをホマスに指摘されたのもイラッとくる。


「やっぱりキルしようかな……」


「え!?今のは刀を納める流れじゃなかった!?ほら、まあいいか……的な!」


「いやもう、己の心に従ってみみっちくいこうかと……」


「自分でみみっちいって言うのかい!?」


「……はあ、それで何だよ」


 演技だろうが何だろうが、ホマスが少し焦った様に多少溜飲も下がったので、抜いた刀を納める。わざわざ接触してきたという事は、用事がある……こいつの場合普通に話に来たという可能性もあるから面倒だな。


「ふう、良かった。本当に戦闘になると困るからね……まあ用件としてはちょっと協力して欲しいことがあるんだけど」


「断る」


「いや早くない!?」


「いや、お前に協力って何か盗むとかだろ」


「んぐっ、んー……そんな事無いって言ったら?」


「ええ……その信用あるの?」


「……無いね」


 まさかレベル上げしたいから付き合ってという事もあるまい。そもそもホマスの実力ならレベルの高いモンスターはともかく、そこそこのモンスターは倒せるはず。それならレベル上げにも素材集めにも困らないだろう。従ってホマスに協力する様な事というのは大体ジョブに合った犯罪プレイだ。流石にそれをするには色々と覚悟が必要になる。


「まあちゃんと説明するとね、そういう系のギルドがあって僕はそこに所属している訳なんだけど、そのギルドは国公認なんだ。だから今僕がそこから受けてる依頼も国公認なんだよ」


「そんな突拍子も無い……証拠……疑い出したらキリないな」


「そうなんだよねー……ギルドの証明書ったって所属してなきゃ分からないし、クエスト画面もね、色々偽装出来るジョブだから」


「え、クエスト画面変えられるのか?」


「いや流石に無理だよ?」


 そこまでは無理か。しかしてそれを確かめるなら実際に『盗王』になってみる他ない。そこら辺はなー、証明しようがなー……国公認なら確かめてみるか。この前来たのがあの日だから……今の時間帯なら……いるか?


「ちょっと離れるわ」


「え、あ、うん」


 ホマスから少し離れて、コトネさんに連絡を取る。確か屋敷にいたはずなので、今シャーロットがいないかと聞くと、丁度お茶を出したところだそうだ。良し良し、予測は当たった様だ。


『それで、どうしました?』


「悪いんだけど、シャーロットにホマスがギルドから受けた依頼に協力しても大丈夫か聞いてくれない?」


『え、はい…………わ、妾に言える訳無かろうが……だそうです』


「あー、成る程ありがとう」


『いえいえ……後で聞いても大丈夫ですか?』


「まあ言いふらしたりしなければ大丈夫じゃないか?後で話すよ」


『はい、楽しみにしてます』


「それじゃ」


 通話を切り、ホマスの所へと戻る。シャーロットは公言しなかったが、もしそのギルドが反社会的なやつならそんな言い方はしない。仮にそうであって、王族も頼む事がある場合は……回答しないか、惚けるだろう。

 まあ大体あの言い方は大丈夫と受け取って構わないだろう……何かあれば何とかしてもら……えるかな。


「えっと、誰と連絡して……まさかカリファに場所をチクって無いよね!?」


「してないしてない。そもそもフレンドじゃないし。クエストだけど、協力するよ……内容によるけど」


「え、ありがたいけど……どういう風の吹き回し?」


「じゃあ俺は帰ろうかな……」


「ウソウソ!わーい、ありがとーう!」


 協力する前提で話を聞くのも良いはずだ。表立って言えなくとも合法(?)なら問題無し。どんなクエストなのかにも興味自体はあるのだ。


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