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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第九章 記念の祭り、各々らしく
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第八話 アドリブならもう少し……


「何でここに……」


「やあ、参加してたんだねぇ。こっちとしてはありがたい。何しろ大した奴が来なくてねぇ……トップの連中誰も来ないんだよ」


 まさかこんな所にカリファがいるとは。口ぶりからして結構な数のプレイヤーを倒している様だが……PKが何故ここにというのは野暮な話か。協力者が必須だが、屋敷がある地区まで侵入するのは可能なんだ、大広場に紛れて参加するぐらいならやってみせるだろう。

 後ろに隠れて様子を伺っているサツキさんは……見逃されたという風体でも無いし、まさかのペア?運が悪い。

 それにしても、プレイヤーが結構来たという事は道は間違ってなかったのか……それは良かった。


「ひぇ、大物PKが何でここに……というか、何でそんな親そうに話してるの……」


「親しくない……見逃したりは?」


「する訳ないだろう?ほら、さっさと刀を抜きな。抜かずに始めるならそれでも良いけど」


「め、面倒くせぇ……」


 こっちはPvPをしに来た覚えは無いっての。アポロさん無理矢理にでも参加させた方が良かったか……?まあ今からじゃ無理な話か。

 チャナは気後れしているというか、プレイヤー相手の実力知らないしな。サツキさんは生産職だから参戦しないだろう……頑張れと書かれた旗を振っているのはなんなんだ。意外と余裕あるな?


「あー、チャナ」


「え、な、何?」


「俺が出来る限り足止めするから先に行ってくれる?」


「あ、戦闘しなくて良いの!?やるやる、それなら任せてよ!」


「あ、そっちかーい……」


 一転してテンションが高くなった。まあそりゃ直接戦闘向きじゃないジョブでカリファと戦いたくは無いわな。

 まあとにかく、賞品の方はそっちに任せるとして……相手はカリファだ。あれからレベルは格段に上がっている……流石にそろそろ1人ぐらい格上だった相手に勝ちたい。いやまあ、負けた相手で同格になった相手もいないんだけど。


「さあ、作戦会議は終わったかい?」


「じゃあやるしかないか……」


「そっちはよろしく……じゃあね!」


「ゲホッゲホッ、やるなら言えよ……!」


 チャナが取り出した球体を叩きつけると、その球は破裂し、白煙が辺りを覆い尽くした。いきなりだったので変に煙を吸い込んでしまった。

 チャナは出した白煙に乗じて目的地の方に。そして、俺の方に向かってくる影は……まあカリファ以外にいないだろうな。


「そうらぁ!」


「【抜刀】……重っ!」


 カリファが振り下ろした大剣を思わず刀で受ける。下策だった、力の押し合いで勝てる相手じゃないし、そも刀で受けるものじゃない。今ので耐久値がゴリッと減った。予備があるとしても取り出す余裕があるかどうか。


「良いね良いね、成長してるじゃないか……!」


「そりゃ当たり前だ……!」


「やっとやりごたえがありそうな……ほら、サツキ!さっさと追いな!」


「え!?私生産職なんだけど……」


「手持ちでどうにかしな!」


「えぇ……冷やかしで参加しただけなのに……もう!」


 カリファに半ば脅され、サツキさんは煙をかき分けながら先へと進んで行った。悲しい感じだ。というか、この煙いつまで残るのやら。


「さて、続きをやろうか!【ディケイブースト】!」


「【朧流し】っ……!」


 威力の増したカリファの大剣をいなし、その勢いのまま刀を振るう。しかし、身体を少し逸らすだけで簡単に避けられてしまう。レベルじゃない経験値の差は厄介だ。


「エクストラスキルは使わないのかい?」


「1度見せたんだ、対策ぐらいしてるだろ……そんな簡単に使えねーよ」


「そりゃ残念……あ?今戦ってるとこ……」


 何かあった様で、カリファがウィンドウを呼び出して誰かと話している。今なら隙だらけだが……これで勝っても嬉しくないし、何より普通に対処されそうだ。

 それにしても何があったのか、邪魔をされたカリファは少し不機嫌そうになっている。中断してまで話す事とは……それにチャナ達が向かった先で大規模な白煙が上がった。恐らくチャナだろうけど……そこまでする程の事があったのか?当の本人から連絡は無い。


「あー、コウ。悪いけど中止だ。あっちに向かうよ。ちょっとばかし面倒な事になってるみたいだ」


「悪くは無いけど……?」


 どうやら会話していた相手はサツキさんの様だ。向こうで何やらあったのは確かで……カリファがわざわざ戦闘を止めてまでの事だ。罠でも何でもないだろう。これで演技だったら……見抜ける目を持っている訳でも無いし、間抜けで良いや。


「何があったんだ?」


「それが要領を得ない上に、途中で咳き込んでね……」


「あー……」


 サツキさんにそこまで求めるのは無理か。このゲームの煙はさっきみたいに下手に吸い込むと咳き込む。酷い状態にはならなくても邪魔にはなる様だ。

 2人で先へと走る。目的地はどうやら廃村の中の教会の様だ。朽ちてはいるが、モンスターに襲われたりといった事では無さそうで、普通に移住したのだろうか。まあ結構な年月が経っていそうだから分からないけど。

 当の教会は窓や隙間から煙が大量に噴き出しているので分かりやすかった。入り口の所ではサツキさんが手を振っている。チャナの姿は無い。まあ中だろうが……賞品を手に入れているなら良し、そうで無いなら何なのだろうか。


「何があったんだい?というか、防げて無いじゃないか」


「いや無理だって……事情は中に入った方が分かる……待機してるし」


「待機?」


 よく分からないが、未だ煙が充満する教会の中へ。深く吸うと咳き込むから呼吸するにも気をつける。


「いや、何も見えねぇ」


「ほらー、出てきなー。今なら取って食うだけにしてやるよ」


 食うんかい。中にいるはずのチャナはカリファが物騒な呼びかけをしても黙ったまま姿を現さない。大分不自然になって来たのだが……煙どうにか出来りゃ良いんだけどな。


「いたっ!」


「ちょ、ちょっと!登場シーンなんだから!敵も味方も登場シーンと変身シーンはお邪魔しないお約束でしょ!?」


「最近は増えて来たけど」


「お約束!」


 教会の奥からボンヤリと現れた影に対してカリファが攻撃を仕掛ける。その影は余裕の動きで避けたが、焦った様に捲し立てた。まあそういうのは邪魔出来るならしたいよな……基本見守るけど。あ、ボス戦以外。

 それにしても、影の正体はチャナのはずだ。今の動きはチャナのステータスというには結構素早かった様な。


「もう、隙間だらけのくせにここ思ったより換気悪いんだよね……失敗した。これ逃げる時用なんだけどな……えい!」


 瞬間、強い風が教会の中に吹き、煙幕が外へと流されていく。あっという間に立ち込めていた煙は消え、視界が良くなった事で視認出来たチャナの格好は先程までと様変わりしていた。具体的にはどっかで見た様な、怪盗とでも言うような格好に。


「気を取り直して、改めて自己紹介!『盗王』ホマス!この賞品は全て貰っていく!」


「な、ナンダッテー」


「……リアクション悪くない?コウ私の事知らないはずだよね?」


「驚いてるけど、色々台無しだし」


「それはそうだけど……」


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