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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第九章 記念の祭り、各々らしく
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第三話 祭りの前振り


「色々と追求せねばならぬ事はあるが……進展があったのはまあ、良い事じゃ、うん。そう言う事にしておこうかの、うん」


「そうしてくれると助かるなあ」


「思い返せばやってる事はグレーだからね……」


「いや、普通に黒なのじゃが……まあ良いか。探索者のする事に一々目くじらを立てていたら敵わん。民に被害が出てなければ探索者同士のアレコレには基本的に関知しないからの」


 翌日、嗅ぎつけたのかシャーロットが家に来た。結局あの誘拐事件以降はいきなり来ることはあっても、脱走はしたりはせず、メイドさん同伴で来る様になった。まあその内戻るだろうし、2度あったら色々陳腐なので大丈夫だろうけど。

 昨日のカリファとレヴィアタンの件だが、当然報告はいっていたらしい。問題は、イプシロンさんの手引きとはいえ、PKがこの地区に入り込めたという事で……些か頭が痛いそうだ。

 イプシロンさんはあの後、国の方からお小言と呼ぶには少し真面目な警告を貰ったそうで、大変そうなクエストをいくつか受ける羽目になったとか。実際不法侵入だし、出来ると証明してしまったから大変だ。

 普通に考えるなら大騒ぎものだ。罪に問われてもおかしくないだろうが、その程度で済んだのは探索者というのとイプシロンさん信用のなせる技だろうか。あの人が本気でカリファの様な人物を引き入れる事は無いだろうから、杞憂なのはこの部屋にいる全員が分かっているけども。


「沙汰が出たのじゃから、これ以上は話題にしないでおこうかの。何より5体目が見つかった事を喜ぶべきじゃからな」


「その方が良いよなあ……そういえばメイドさんは調子は大丈夫なんです?」


「はい、以前より良いと言っても差し支えない程に。鍛錬は欠かしていませんでしたが、やはり相応の実戦が無いと鈍りますね」


「……妾は何とも言えぬのう」


「あれで鈍ってたのか……」


 量産型とか何とかの天使とはいえ、相当な数を相手にしていたはず。1体でもまあまあ動き良かったと思うんだけどな?NPCとは言え、流石にヤバすぎる様な。


「そ、そういえばもうすぐお祭りがあると聞きましたけど、どうなんでしょうか!?」


「王都祭の事じゃの。もちろん準備は進めておるぞ。今年は探索者がおるからの。単純に人が増えたから、やれる事も増えた訳じゃ。探索者用の催しも発案されたから、楽しみにしておると良い」


 コトネさんが若干無理矢理話題を変えたが、シャーロットは特に気にするでもなく乗ってくれた。

 このゲームのサービスが開始されたのが約半年前、もちろんそれ以前の設定はあるのだから、祭り自体は今年が初めてでは無い。プレイヤー用に色々変更はあるらしいが、そこは気にする必要は無い。

 王都祭という名前だが、主な場所がそうだというだけで、他の町でも色々やるらしい。大きめの催しは全て王都で行われるそうだが。


「探索者用の催しか……どんなものなんだ?」


「それはまだ秘密なのじゃ。妾も一肌脱いでおるからな、いや調整に苦労した。各領主とタイミングやら順番やらで多少揉めたからの」


「タイミング?」


「話しすぎでは?」


「……はっ!?今のはナシじゃ!」


「ナシって……」


 各領主……まあ国全体でやるのだから不自然では無いが、わざわざ言うという事は何かあるという事で。よく分からんが、楽しみだ。


「……本当にナイショじゃぞ?」


「流石にそれだけじゃ予想しようが無いって、なあ?」


「そうですね、当日までのお楽しみですね」


「ううむ、ならば、大丈夫かのう?」


「いざとなれば、真実をお話しすれば良いですからね」


「……ナタリー、最後まで主君に忠誠を誓ったりはしないかの?」


「1番大切なのは自分の命ですね」


「おのれ……!」


 まあ軽口だろうな。若干あり得そうだが、そうならメイドさんはあんな怪我を負ってはいまい。従者なのに気安いのは今更だし。


「まあ、聞きたい事は聞けた。そろそろお暇するかの」


「お、今日は早いな。いつもは用件が終わってもしばらくいるのに」


「割と祭りの準備が忙しくての。流石にサボるのは不味いのじゃ」


 そう言ってシャーロットは、さっさと帰っていった。とりあえずは、祭りの告知を待つとして、気が長くなるレベル上げでもする事にしよう。






 シャーロットが来たのは良いタイミングだったのか、運営から告知が来たのはよく知っての事だった。

 平日なので確認したのは学校での事だったが、いつもの様に昼休みの時だったので時間が取れてありがたい。


「今回は招待状みたいな感じだな」


「国がプレイヤーに宛てた感じだね。フレンドの話だとどうやったのか、プレイヤー全員に同じ内容の手紙が送られてたみたいだし」


「へえ、そうなのか。ログインしたら確認してみるか」


 告知によると開催は1週間後、その間に申請すれば主に生産職は出店を開ける様だ。短い期間だが、店を開きたいプレイヤーの動きは素早いだろうし問題無いだろう。プレイヤーメイドがどの様になるのか楽しみだ。

 招待状には祭りで行われる催しの概要も書いてあり、中々のものだと察する事が出来る。


「歌のコンテストや……確かに色々ありますね」


「……武闘会は無さそうですね」


「あれはあれで1つのイベントだったからね……何日かかかるから1つの祭りに組み込むには厳しいんじゃない?それに鋼輝によると規模の大きい催しかあるんだって?」


「シャーロットが漏らしただけだし、何があるかは分からないけどな」


「国全体で何かやるというだけで、具体的な事は何も言ってませんでしたからね」


「ふーん、まあ国全体なのは分かってる事だし、それだと考察しようが無いね。まあ季節イベと違って人によるイベントだからそこまで考える必要も無いか」


「祭りだからな」


「放置すると村が滅んだり町が消滅したりはしないですかね」


「基本的に楽しむだけで良さそうですからね」


「そうそう」


 もしかしたら何かしらの陰謀で大事になるかもしれないが……その可能性は今の所は低いし、普通に祭りを楽しめば良いだろう。


「対人イベントだと嬉しいのですが……」


「まあ当日になれば分かるかもしれないから……」


「そうですよね」


「周年イベントねー、ログボがあるやつだと豪華なアイテムが貰えたりするけどね」


「まあこの場合は無いだろうけどな」


 池田はこの中で唯一プレイしていないが、大体の話にはついていける。本人も気にしていないからこちらも気兼ねなく話が出来る。

 西田さんは対人イベントが無いことに残念がっているが、まあ武闘会の2回目が来るのを待ってもらうぐらいしかない。もしあったとしたら……ルールにもよるけど、敵無しだろうなあ。


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