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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第九章 記念の祭り、各々らしく
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第一話 慌ただしい来客


「っとぉ!?」


「ほら、今度はこっちですよ」


「いやこれ……おわっ」


「あー、残念ですね」


「いや無理ゲー……」


 随分と感じが悪い攻撃をしてくるものだ。カシエルとは全然違った使い方をしてくる……当たり前か。カシエルは大分力任せだったが、クローナは水を細分化して翻弄する様に扱っている。

 今俺とクローナが行っているのは模擬戦だ。まあ模擬戦と言っても半分遊びみたいなものなのでスキル無し、俺は模造刀だ。真剣だとしても、クローナに当てる前に転ばされるので意味が全く無い。

 他方向から紐のようになった水でこちらを狙ってくるのだが、大概1本は対処出来ずに当たってしまう。動きが見えはするんだけどなあ……単純に視界が足りない。

 折角4次職になったのに、これでは先が思いやられる。剣を当てれば消えるレベルにしてくれているので、不可能では無いはずだ。実際に試しと挑戦したアポロさんは2回目でクローナに辿り着いたし。若干俺の方が水の本数が多い気がするのは気のせいだろう。これでは今まで負けた相手に勝てるのはいつになるやら。


「かつてのお姉様の姿……また見られるなんて」


「意地が悪いのは変わってないけどねぇ」


「何か言いましたか?」


「聞こえているだろうに」


「ハハハ」


「アハハ」


「おい……それでどうだ?」


「そうですね。やはり出力は低いので……武器を持つに越した事は無いですね。神器に頼らない攻撃手段もあって損は無いでしょうし」


 そう言ってクローナは、右手に持った武装を振るう。クルトが丹精込めて作った武器だし、そのまま継続して使っていってほしい。

 そもプレイヤーは使えないものだし、下手をすると箪笥の肥やしになってしまう。それに、神器は目立つから他のプレイヤーに対して良いカモフラージュになる。

 ウリエルに関しては……剣の形のまま使ってもらえば、多少特殊な武器で済ませられる。今更だけど。コトネさんのレベル上げを手伝っている様だが、問題は起きていないから杞憂だな。


「はあ、休憩にするか……疲れた」


「そうですね、それなりに時間も経ちましたし……では談話室ですか。お茶でも淹れましょう」


「私も手伝います!」


 クローナは殆ど動いていないから肉体的疲労はあんまり無いか。いやそれは俺もだけど。リアリティが凄いとはいえ、その辺の実装は良し悪しの判断がつきづらい。違和感は無視出来るから別に良いけど。

 クローナと、ついて行ったウリエルを見送りながら俺も立ち上がり談話室へと向かう。モモは既に向かった様だ。

 中に入ると、ショウとコトネさんがいくつかポーションを並べて話していた。


「何やってんだ?」


「あ、模擬戦終わったのかい?」


「休憩休憩」


「そうなんだ。いや、コトネさんからちょっと相談受けてね」


「どれが1番需要があるか分からなかったので……」


「ああ、それならショウが適任か」


 鑑定してみると、バフ系のポーションの様で、微妙に効果も強化率も違う。内容からして使うのは近接職だけど……俺はそこまで厳密に気にしないからなあ。その細かな差が勝敗を分ける勝負はあんまりしたくない。


「ぶっちゃけ誤差じゃね?」


「まあそれはね。でもやっぱり需要がある方が良いじゃない」


「それはな」


「……ふうん?どれどれ……」


 モモが興味を持った様で、テーブルの上の1本を手に取り、ジロジロと眺める。モモならショウとは違った目線で役に立つ事を言ってくれそうだ……多分。


「ど、どうでしょうか?」


「……まあ、これなら……あぁ?」


「どうした?」


「何か問題でも……?」


 ポーションを見ていたモモがいきなり顔を顰めた。何かポーションにでも問題があったのかと思ったが、どうやらそうでは無いようだ。


「いやポーションじゃなくて……同類だよ」


「え、同類……悪魔か?」


 モモが言う事が本当なら一大事だ。誰なのかは後にして、どうしようかと考えているとドアのむこうから足音とクローナと誰かが話している声が聞こえた。

 近づいてくる足音は真っ直ぐこちらに来て、そのまま勢いよくドアが……開かず、ぶつかる音がした。


「痛い……なんで開かないのよ!」


「ああ、そんなガチャガチャしたら壊れますよ。そもそもそのドアは外開きでは無く内開きです……」


「えっ、わ、分かってたわよ!た、耐久性を確かめてだだけ!」


 耐久性って、そんなアホな。ドアの向こうから聞こえてくる声の主は姿も見えないのに随分と残念な感じが伝わってくる。モモは誰かは分かっている様で、何故かげんなりしている。

 そもそもドアの開き方間違えるって。更に止まれずぶつかるとはどれだけ勢いよく開けようとしたのか。

 声の主はやっとドアを開け入ってきた。髪はピンク色のツインテールで、服装は少しおめかしした一般人っぽい様相だが、質の良さを隠しきれていない。お忍びの貴族の令嬢みたいな感じだ。まあ今のやりとりで残念さが際立っているので拭えないけど。

 入ってきた少女は、部屋の中を見回した後、モモをロックオンした。


「あ、やっぱりいたわねアスモデウス!ここで会ったが100年目よ!」


「はあ……全く変わらないねぇ、レヴィアタン。そも数百年会ってないけど」


「細かい事は良いのよ!」


 対抗心でも燃やしているのだろうか、モモへの反応は苛烈だ。ただ相手のモモが全く意に介していないから残念さは未だに拭えないけど。

 というか、ここに来たという事は契約者もいるのだろうか、一体誰なんだか。何やら嫌な予感がするが……その内分かるだろう。多分1人で突っ走って来たのだろうし。

 レヴィアタンと呼ばれた少女はその後もギャアギャアとモモに当たっているが、当の本人はどこ吹く風だ。


「みなさん、お茶です」


「ああ、ありがとう」


「ありがとうございます……あれは大丈夫なんですよね?」


「はい、大した事にはならないかと。大分昔の事ですが、いつもの事ですので」


「残念な感じだな……」


「まあ作られたのが最後なので、末っ子というか、姪というか……」


「ああ、何年経っても子ども扱いされるやつ」


「それはどうしようもないね……」


 騒がしいが、触らぬ神に祟り無しという事でモモに放り投げておこう……と思ったら、レヴィアタンの関心はクローナ達の方へと移った。


「そうだ!何でガブリエルとウリエルがここにいるのよ!まさか私の命を!?」


「いえ、興味は全くありませんが」


「そうですね、そのつもりならこうしていませんし」


「そ、そうなの?それなら良いけど……というかガブリエル見た目が変わって……あれ、そもそも何か神経質そうな奴に神器奪われてなかったっけ?」


「カシエルなら死にましたよ。神器なら取り戻しました」


「えっ、そうなの!?どうなってるの!?」


「んーーー!!!うるさいっ!!寝させろ!!」


「ぎゃっ!?」


 ショウの膝の上で寝ていたベルフェゴールがついにキレた。先程から寝苦しそうにはしていたが……初めて聞いた大声がこんな事とは。

 ベルフェゴールのデバフを受けたレヴィアタンは動けないのか、床から起き上がれずにいる。能力は対抗出来ない感じなのか?


「あんたならどうにかなるだろう?」


「ふぐぅ……そんな事したら、ここ壊れちゃうじゃない。他人の家よ……?」


「変な所で真っ当だな」


「こういう子です」


 ついに子扱い。大分カオスになって来たが、どうしようか。ベルフェゴールはショウが宥めているけど、怒りはまだ冷めやらずといった感じだ。

 そう思っていると、来客を知らせるベルが鳴った。丁度良いと玄関の方に向かい、ドアを開けると……そこにいたのはイプシロンさんとカリファだった。


「うわっ」


「久しぶりぃ」


 何故ここに、まさか……うわぁ。


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