第十八話 さっくり4次職
「さて、これで良いかな?」
「は、速……」
明らかにステータスの差で済ませられるレベルじゃ無かったんだけど。スキルは使ってないだろうし……ええ?
「大丈夫ですか!?」
状況を飲み込もうとしている間にコトネさんが走って来た。そうか回復……いや。
「これ斬ってもらった方が早いですかね?」
「む?あー、探索者だとそうかもしれないな」
「じゃあ……コトネさん、団長さんの方に……」
「え、あ、はい」
「じゃあ今日はありがとうございました……戻って来ますけど」
「ああ、久しぶりに斬りがいがあった」
「なにそっ」
騎士団長が剣を一閃。俺の首はすっぱりと体と別れ、次の瞬間には視界が暗転した。また次の瞬間には五体満足で教会に立っていた。とりあえず戻……いや条件満たせてるか確認した方が良いか。
「ああ、可能になってるわ。じゃあ早速……」
Name:コウ
Level:90
Main job:刀王
Sub job:蛮将
HP(体力):10000
MP(魔力):1270
SP(技力):1780(1958)
STR(筋力):1540(2680)
VIT(耐久力):780(+2640)
AGI(敏捷):2270(3655)
DEX(器用):1810(2208)
INT(知力):100
LUC(幸運):150
スキル
ジョブ:【抜刀】【朧流し】【居合】【刺突】【滝割り】【極刀】【ディケイブースト】【レストリジェクト】
【ウーンドリターン】【フラジャイルクイック】
汎用:【鑑定Lv.8】【採集Lv.8】【魔力操作Lv.1】【魔力感知】【罠感知】
Exスキル
【貫牙剣】【空走場】
魔法
『反剋』
武器:黒刀【銕鴉】
所持金:52111337G
称号:[Exモンスター討伐者][熟練探索者][邂逅者][大罪契約者(色欲)][第3王女に目をつけられています][春イベントシナリオクリア][迷宮踏破者][天使(堕)所有者][日誌回収3/5][宝真珠入手5/5][夏イベントシナリオクリア][未踏の宝No.5]
ジョブを変えただけで、ここまで上がるか……正確な補正値は把握していないが、『刀王』の補正値は『侍』の倍以上あるのでは無いだろうか。レベルが高いから上がり幅も大きいとは言え、100以上上がるのは結構なもんだ。まあこれで晴れて4次職になれたわけだ。後は気が遠くなるというレベル上げぐらいだ……やりごたえがあるのは良いけど、同時にだるいな。
とりあえず確認は出来たので、訓練場に戻らないと。騎士団長達をいつまでも待たせる訳にもいかないしな。
訓練場の方へと向かうと、誰かが打ち合っている音が聞こえた。何だろうかと急いで向かうと、騎士団長とクローナが戦っていた。
事情が全く分からないので、とりあえず観戦しているショウ達の方へと向かう。
「どういう状況?」
「あ、戻ってきた。4次職はなれた?」
「ああ、問題無くな……それで?」
「いや、ジョブ変えるだけだけどコウがいつ戻るか分からないから試しにって、団長さんがね」
「そういえば戦闘を見た事おらんと、姉上がごねただけじゃの。まあお陰で中々見れないものが見れておるがの」
「まあ、凄いな……あれ」
戦っている2人の方に目を向けると、凄まじい速度で打ち合っている。クローナは大剣なので攻撃する回数は騎士団長よりも少ないが、的確に対処している。打ち合いの速度は俺の時よりは速いので、やはり加減はしていた様だ。傍から見る分には動きが見えるから、終わるまで参考にさせてもらおう。
「そういえば、最後コウの動きが滅茶苦茶遅くなってたけどどうしたの?」
「え、騎士団長がくそ速かったと思うんだけど……?」
「いえ、コウさんが遅かったですね……」
「僕でも見える様になってました」
「マジか……」
俺の動きが遅く……遅く?どういう事なんだか。
「騎士団長の気迫に呑まれてたせいじゃないかい?」
「そうですね、あの時の団長さんは中々凄い気配がしてましたから……」
「ああ、そういう……」
原理は知らないが、モモとアポロさんがそういうならそういうものなんだろう。ウリエルも同意する様にコクコクと頷いている。
スキルじゃなかったのか……どうすれば対処出来るのやら。胆力でもつければ良いのかな。
全く現実的では無い対処法を考えていると、戦っている2人の方で轟音が鳴った。騎士団長は仰向けに倒れており、クローナは膝をついている。どうやら決着がついた様だ。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
傷らしい傷は両者とも無かったが、HPは減っている様でコトネさんに回復魔法をかけてもらっている。
その後は時間を押していた様で、副官さんに騎士団長は引っ張られていった……まあお礼は言えたから良いか。とりあえず屋敷に戻り解散。シャーロットもメイドさんに連れられていったし。
それは何気無い一言から始まった……いや特に大した事件が起こった訳では無い。大事になった訳でも無く、些か記憶に残る出来事が起きただけである。
4次職である『刀王』になってから数日、レベル上げに勤しむも、レベルを1上げるにも先が長すぎて怠くなってきた。談話室でクルトとチェスをするぐらいには。丁度依頼の装備を作り終わり、気分転換がしたかったんだとか。いつの間にかコトネさんやウリエルもいる。
ゲームの中で別のゲームとはどうなのかと思われるかもしれないが、まあゲームなのでモチベが下がった時にする必要は無いし、そもそもいつかはレベルが上がる。なので特にやる事もなくそうして遊んでいる訳である。
やるべき事は悪魔の捜索とかあるが……俺1人が1日フィールドをウロウロしてもどうにもならないだろう。日々の積み重ねとかそういう感じでは無い。それで見つかったら、大人数で動いているイプシロンさんやシャーロットの立つ瀬がないだろうし。
そうしてわちゃわちゃと交代しながらチェスで遊んでいると、談話室にアポロさんが入ってきた。大概フィールドでモンスターを倒しており、止める時は真っ直ぐ部屋に戻ってログアウトしている。なので特に何も無い時に入ってくるのはとても珍しい……どうしたのだろうか。
「あ、コウさん……模擬戦でもしませんか?」
「や、藪から棒……どうしました?」
アポロさんは入って俺を視認するなりそう言った。他のみんなもいきなりの事に目を向いている……チェスをしているのはクルトとコトネさんだが、今なら駒を移動させてもバレなさそうだな。
「先日コウさんも『刀王』になったじゃないですか」
「そうですね……あ、それで。いや、それでも結構差があるんだけど……」
「確かに私から頼むのは少し変ですが……」
確かアポロさんは対モンスターより対人の方が好みだとか何とか。俺に頼むのはエクストラスキルも含めての事だろう。PKは大体相手が複数になるから1対1にはならないだろうし、それにアポロさんをわざわざ襲う馬鹿なPKはいないだろう。
アポロさん本人は格下というか、勝つ可能性の方が高い俺に勝って優越感を得たりする様な人じゃ無いのは分かっている。ならば暇な今断る理由は無い……が。
「やるとしても場所は何処でやります?流石に庭は無理だろうし」
「そうですね……フィールドだと万が一モンスターが寄ってくると困りますし……」
戦闘するに相応しい場所は無くは無い。しかし、この後すぐ戦えるという訳は無く、それに使えるとも限らない。伝手はあるが……昨日(昨日じゃないけど)の今日だしな。理由も理由だし。
「話は、聞かせてもらったのじゃー!!」
「うわ」
都合良く伝手が来た。窓の縁に立っている……はしたないんじゃ?というか1人か……抜け出してきたパターンか。そういや最近無かったな、頑張ってるのか。




