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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第八章 天は高く、奔走せよ
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第十一話 顕現


「もう大丈夫です、ありがとう」


「はい」


 持ち直した後もコトネさんが回復し続けてくれたお陰で、クローナは調子を取り戻した様だ。お疲れ様という意味でコトネさんにポーションを渡すと、お礼を言って飲み始めた。このぐらいしかできないからな。

 ウリエルもモモと同じで溜まりに溜まった感情とかがあるんだろうし、妹なら甘えたくなるのも仕方無い……と思う。1人っ子だし、色々立場が違うから分からないけど。

 クローナは先程までの弱った姿とは違い、しっかりと立ってウリエルの方へと向いた。


「ふう……改めて久しぶりですね、ウリエル」


「……さっきはごめんなさい、お姉様」


「いえ良いんですよ、これまで苦労をかけましたね」


「うう、お姉様……!」


 クローナが柔らかい笑みを浮かべ、ウリエルの頭を撫でている。ウリエルも今度はクローナを優しく抱きしめている。その姿はさながら姉と妹……母と娘……飼い主とペッ……いやいや。

 とりあえず、初対面のイメージは完全に崩れたな。まあ別に良いんだけれども。


「感動の再会……ですよね?」


「そうだと思うけど」


 これはいつまで待てば良いのだろうか。結構話しかけづらいが、話しかけないといつまでもやってそうな気がする。仲の良さを見せつけられるのは特に構わないが、下手に伸びると昼飯の時間になる。この状況で中断は色々と面倒だ。


「ええっと、そろそろいいか?」


「そうですね。1度こうして会えたのですから、機会はあるでしょう」


「あ……オホン、はい、説明は必要ですからね」


 クローナが撫でるのを止めたのでウリエルが一瞬とても残念そうな顔をしたが、今の状況を思い出したのか咳払いをして切り替えた。


「えっと、貴方達は……貴方はあの時モモと一緒にいた探索者ですね。契約者になったのですか」


「ああ、コウだ。よろしく」


「それで、そちらは……」


「あ、コトネと言います」


「ウリエルです。先程はありがとうございました」


「いえいえ、私が来たのはモモさんに呼ばれただけなので……」


「モモ……ああ、アスモデウス姉様の。流石ですね」


「まあ、あんたの事だからやらかすと思っただけさ」


「うう……」


 先程の事を思い出したのか、ウリエルは身を縮こまらせる。一時はどうなるかとも思ったけど、大分友好的だな。


「さて、マスター」


「マスター?……ああ、成る程」


 クローナが俺をマスターと呼んだ事に対してウリエルが一瞬怪訝な顔をする。しかしすぐに納得のいった様な顔でモモの方をチラと見た。そりゃ今まで会う機会が無かったとはいえ、関係性やらは俺より知っているはず。どういう事なのかはすぐに思い当たったのだろうな。理解が早くてとても助かる。変に勘違いをされたら大変だ。


「それで、何だ?」


「はい、ウリエルから詳しい状況を聞こうかと。あちらの事を分かるのはウリエルだけですし、それに会えたと言ってもあまり時間はかけられないので」


「時間をかけられないのはまあ……誰か来る可能性もあるのか?」


「そうですね。私の立ち位置は白に近いとは言え、グレーと言えるものですし」


「そうなのか……」


 まあ悪魔であるモモや対立したクローナとこれだけ親しければしょうがないか。思っていたより貴重な時間な様で、紙を取り出してメモを取る姿勢をとる。自動記録機能とかあれば良いんだけどなー……いやそれよりも録音機かな。


「そういえば愚問かと思うけど、ウリエルは結局どの立場なんだ?」


「ああ、私は何があろうとお姉様達の味方ですよ。お姉様達が人間の味方……まあ厳密には違うのでしょうけど、そちらにいるならそれは全く構いませんし……そもそも私が今まで天使側にいたのは、その方がお姉様達の役に立つと思っていたからです」


「成る程」


「……変わって無いね、あんたは」


「それはもちろんですとも!」


 ムフーとでも言いそうな感じにウリエルが胸を張る。服がゆったりめのせいで気づかなかったが、まあまあ豊かな……いやいや。とりあえずウリエルはモモとクローナ第一主義の認識で良いな。天使側に未練は全くもって無い様だ。


「それに、あの時あれが起こったのは人間の欲のせいですが、だからと言って今のアレ達は過激が過ぎます……1度歪んだものは治らないという事ですかね?」


「まあ……遅かれ早かれだろうさ」


「今となっては、今の人間には関係の無い事ですからね」


 ああ、たまに出る知ってる前提の会話だ。まあテンプレートというか、薄々何があったかは察せるし、どうせその内詳細は語られるだろうし。

 先に聞いておきたかった疑問は聞けたし、後はクローナ達に任せるか。事情を聞くといっても、勝手が分かっている2人の方がスムーズだろう。

 モモが魔法で土の椅子を作り出しだ。全員そこに座って話を聞く。


「では早速ですが……アルカディアはどうなっていますか?」


「ミカエルの封印措置によって、今も沈黙状態ですね。流石に中枢ではあるので消されてはいないでしょうが、何分私では近づけなく……」


「チッ……まあ予想通りなだけマシかねぇ」


「まああちらも全てを掌握出来ているなら、こんなに時間はかかっていないでしょうし」


「あ、あの、遮る様で悪いのですけど、割と明け透けに話していますが大丈夫なんですか?」


「はい、私達は聞いているだけなので。実際に話しているのはウリエルですから……多分」


「多分かよ」


「まあこんなグレーゾーンを確かめる様な事になるなんて思わなかったからねぇ……」


 モモ達も分からないってか。盲点というか、割と緩いというか。まあプレイヤーに少しぐらい情報開示しないと状況が分からないしな。ウリエルが天使側に残ったというのはそういう為でもあるか。

 しかしまあ、情報量が凄いような。ウリエルが1つ質問に答えただけなのに聞きたい事が山程でる。ショウも無理矢理連れて来れば良かったかな。


「それで侵入は?」


「近づくのも無理かと。下手をすると場所を言うだけでも……」


「何ともなりませんね……」


「あれ、そんなものを探せって言ったのか?」


 確か立ち去る時にアルカディアを探せとか意味深な事を言っていた様な……モモ達でも無理なものをプレイヤーに……いやプレイヤーだからこそか?


「あ、それは……とりあえず何かしら言っておこうと思って……それっぽい感じに」


「えー……」


 確かにそれっぽいけども。そこまで考えていなかったのね、というかプレイヤーもほぼ無理な感じか。何か新しい要素が必要なのだろう。


「やっぱりルシファーですか」


「あー、あの人何でも出来そうですよね」


「実際、これまで1度会えない時点でそうだろうさ。後は……他の連中は?特にガブリエル」


「カシエルと呼んであげましょうね、お姉様。まあ誰も変わりませんし、ラミエルはミカエルがどうにかならない限り無理でしょうね。そういえば1度マモンと戦闘になったとか?死んでませんよね?」


「ああ、大丈夫だよ。まあその2人は放っておこう。犬も食わないし」


「そうですね」


 とりあえず要約すると、現状を変えるには悪魔全員揃える、特にルシファーを見つける事が必須。天使側はこれ以上味方にするのは無理って事かな。方向性がはっきりしているだけありがたい。

 その後は2人はいくつかウリエル質問していた。しかし芳しく無い様で、期待していたほどの情報は得られなかった様だ。

 メモは一通りとったし、イプシロンさん達への報告には十分かな。


「……まあ現状把握できただけでもマシかね……」


「すみません……」


「いえ、ウリエルも大分綱渡りをしてもらっています。ありがとう」


「いえいえ、お姉様達の為であれば、このぐらい!」


「では気づかれない様に」


「何とか理由をつければ、この程度は「どうにでもなると?」、っ!?」


 何かフラグ臭いと思ったらマジか。少し離れた空中に1人の男が立っていた。服装はガブリエルと同じ、作り物みたいに思えてくるレベルの見事な金髪に陽の光が反射している。背中には翼を2対生やしている。顔はもちろんイケメン……ただまあ、性根が悪そうなのが隠せていないけど。


「随分と舐められたものだな、ウリエル」


「ミカエル……!」


 わあ、ラスボス(暫定)来ちゃった。どうすれば良いの、これ。


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