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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第八章 天は高く、奔走せよ
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第十話 再会


「あれ、モモとクローナは?」


「さあ、僕がログインした時にはもういなかったけど……」


「……いつログインしたんだ?」


「8時」


「早っ……」


「そうかな?」


 今日は学校が休みなので、朝からログインしようと思えば出来る。しかし、そんなに早くから始めて大丈夫なのかと心配になるな。

 モモとクローナに関しては、そのショウが見ていないという事はどれだけ早く屋敷を出たのだろうか。8時ならどちらかは大体屋敷の中……というか寝ていたりするものだけど。

 1回間違えて寝ている時に部屋に入ってしまった事があるんだよなあ。いや間違えたというより、クローナから部屋から物を取って欲しいと頼まれて部屋に入ったら、モモが寝てたんだよ……床で。一瞬倒れてるかと思ってやばかった。何であんな状況になっていたんだか……そしてクローナはそれを忘れていたのか。不思議だった。


「それにしてもあの2人も大分自由に動く様になったよね」


「まあ定位置から動かないよりは良いけどな……見た目も多少目立つ程度だからバレないし」


「たまに2人のものかと思う噂を聞くけど、大した事じゃ無いからね……意外と大丈夫みたい」


「へえ、まあバレていないなら別に良いか。ベルゼバブは……外に出すといけないタイプだな」


「アレはね……多少不味い事があったから……」


「……すっかり慣れたなお前」


「あはは、まあ毎日だから……」


 ショウと俺が目を向ける先には、ショウの膝の上で寝ているベルフェゴールの姿が。すっかりこの光景が日常になっている。姿を探せば大体ショウに引っ付いて寝ているからな……怠惰と呼ぶに相応しい感じだ。ショウが助っ人に呼ばれた時は部屋(ショウの)で寝ているから殆ど見かけない。起きている状態で遭遇するのは結構なレアだという事が判明した……いや割とどうでも良いな。

 気を取り直して、最近の事について雑談を交えながら情報交換をしていると、誰かが屋敷に入ってきた音が聞こえた。


「誰かな」


「さあ、あー……もしかして」


「おやマスター、ここにいたのかい」


「ああ、2人ともおかえり」


 近づいてくる足音からして2人かなと思ったら当たりだった。コトネさんはもっと大人しいし、そも作業場にいる。アポロさんに至っては音が殆どしない……暗殺者か何かかな?


「何処行ってたんだ?」


「それは……マスターは今お暇でしょうか?」


「え?ああ、暇といえば暇だけど」


「出来ればついてきてもらいたいのですが……」


「いやまあ、良いけど」


 何かいつもより神妙だな。具体的な事を言わないのが気になるが、もしかして世界観関係?それならついていくしかないな。


「じゃあショウも……」


「あーうん、そうしたいけど……」


「マスタ〜……うーん」


 動こうとしたショウを引っ張り、元の位置へと戻そうとするベルフェゴール。こうなると下手に動こうとすると面倒な事になるんだろうなあ。ショウの場合無理矢理起こして〜とはしないだろうし、しょうがないか。


「……まあ後は念の為コトネがいてくれれば良いさ」


「あれ、何か危険があるのか?」


「多分無いはずですが……」


「多分かあ」


 100パーセントを保証してほしい訳ではないけど、多分とつけるなら一応警戒しないと駄目か。

 作業場にいるコトネさんを呼んで事情を説明する。特に急ぎの用事があったりキリが悪かったりはしない様で、すぐに来てくれる事になった。

 メンバーは揃ったので、2人に従って向かったのは砂漠フィールドと山脈の境界辺りの場所だった。大体フィールドの境界は大したモンスターや素材が無いからプレイヤーどころかNPCもいる事は殆ど無い。


「……大分奥に行くな?」


「僻地であればある程人に見られる心配も、目が届く心配もいらないからねぇ」


「万が一を考えないといけませんから……」


「そろそろ話してくれても良いんじゃないか?」


「人を呼ぶだけさ。悪いけど、とりあえず着いてからさ」


 モモがそう言うならしょうがない。大人しくついていき、到着したのは特に変哲も無い、見晴らしが良いと言えば良いぐらいの場所だった。


「じゃあお願いします」


「ああ、『エルモライト』」


「んん?」


 クローナに頼まれ、モモが昼という事を差し引いても微妙に地味な照明弾の様な魔法を放つ。魔法名も普通のものとは違和感があったし、何なんだか。


「どういう事だ?」


「まあ、もうちょっと……あ、来た」


「通じましたね」


 2人が向いている方向を見てみると、空に小さな影が見えた。その影はこちらに近づいているのか、時間を追う毎に大きくなっている。余程の速度なのか、瞬く間にどの様な形なのか判別出来るレベルに……あれ、何か見覚えが。


「人……でしょうか?」


「いやあれは……えぇ?」


 心当たりは1人、その飛んできた人物は真っ直ぐこちらに……いやクローナの方向に、多少減速はすれども結構な勢いのまま突っ込んでいった。


「お姉様ーーーー!!」


「ぐふっっっ!?ぐう……」


「あっちゃあ……」


「鳩尾……」


「だ、大丈夫じゃない……ですよね?」


 いくらクローナでもあれは……例えるなら普通の人にトラックが突っ込むレベルだ。うん、普通に死ぬな。諸にぶつかったクローナはそのまま土埃を立てながら少し離れた木へとぶつかった。色々心配なので駆け寄ると血のエフェクトを口から垂らしているクローナと、見覚えのあるテンション1人。


「とりあえずコトネさん……」


「あ、はい!」


 クローナのHPが結構減っている様で、コトネさんに急いで回復を頼む。モモが一応と言った意味はあったな……予想してたのかな?

 そして問題のもう1人、天使の正体はウリエルだ。装備が焦げたり熱のダメージを受けたりしたが、ガブリエルに追い詰められた俺とモモを助けたと言えなくもない天使だ。以前とは印象が全く違う……まあ演技なのだろう、事情は何となく察する事が出来る。

 色々聞きたい事はあるのだが、まずは頭をクローナに擦り付けるのを止めた方が良いのではないでしょうか。追加でダメージ入っているみたいなんですが。


「はあ……ほら離れな」


「あ、もうちょっと……あれ?」


「ふぐぅ……」


「わっ、ごめんなさい……!!」


 ウリエルは自分がした事を理解したのか、顔を青くしてオロオロしている。近づこうとしているが、自分では回復出来ないのか手を無闇に動かしており、変な踊りみたいになっている。うーん、完全にキャラが違う。お姉様という事なら実では無いにしても妹みたいなものか。

 クローナはコトネさんの回復魔法のお陰で大分持ち直した様で、処置は粗方終わった様だ。身体能力のお陰で結構タフなはずだしな。

 いきなり印象的な事故が起こったが、とりあえずは落ち着いた。俺は何にもしてないけど……まあしょうがないよな。というかモモはウリエルのオロオロ状態を止めないのだろうか。まあこれで話が聞けるのかな?


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