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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第八章 天は高く、奔走せよ
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第七話 実質デートじゃないの、これ


 ベルフェゴールが加わってから数日経ったが、意外と馴染んで……というよりかは問題を起こしていないという方が正しいか。良い意味で怠惰なので基本ショウにくっついて寝ているだけだし。大罪とは何ぞや。

 ショウについていけない時は、割り当てられた部屋……では無く、ショウの部屋で寝ている。そうなっていると聞いた時は入れ込んでいるなと驚いたものだ。まあそんな感じで俺達と接触する機会も無いので面倒事が起こるはずも無く、平和そのものだった。1回厨房の冷蔵庫で飲み物を漁っていた所に鉢合わせたけど、特に何事も無く終わったし。動物園のナマケモノだと思えば対処も楽だ。

 ちゃんと仲間という事が分かっているなら、無理に関わる必要も無し。知り合いのモモもクローナも何も言わないので、これで良いはずだ。

 そして肝心の能力だが、ショウによると範囲デバフらしい。七大罪の悪魔なだけあってその効果は付与士系統を大きく上回るらしく、対象を単体に絞れば攻撃力の低いショウでも簡単にモンスターを倒せる様になった様だ。まあモンスターのレベルが上がる程その効果は低くなるらしいから、ショウ本人が目立つ事は無さそうだけど。それでもデバフは確定でかかるそうで、色々と悪用出来るような……デバフがかかった状態なら何か出来るスキルとかあっただろうか。それはショウの調べる事かな。まあ普通に強い能力だ。そういえばベルゼバブの能力は知らないが、暴食に見合うだけの能力なのだろう。

 そんな感じで、ベルフェゴールが加わってからの近況はこの様なものだった。今日はまだログインしたばかり、特にやる事も決まっていない。屋敷の中には珍しくコトネさんしかいない様だ。


「あ、コウさん……お暇ですか?」


「暇というか……まあ暇か」


「で、では……タルさん覚えていますか?」


「タル……あ、テイマーの」


「はい、その方が主導で運営している動物園……モンスター園があるんですが、見に行ってみませんか?」


「なるほど」


 今日は明確にやる事も無いので、断る理由が無い。話を聞けば、レアモンスターもいるらしいので、参考には十分なる。誘ってくれるという事は2人で行く利点が……まあ無くても良いか。興味自体は十分にあるから、折角だから行こう。


「じゃあ行きます?」


「はい!ありがとうございます!」


 件のモンスター園とやらは、ツヴァイアット近くの村にある様で、馬車に乗りさっさと向かう。近くのフィールドの気候が安定しているのもあってか、テイマー関連の施設も多い事に起因しているとか。その中の土地が余っているだけの村に目をつけ、タルさんを始めとしたテイマーが、作ったそうだ。その実情はタルさんのテイムモンスターが増えすぎたのと、環境を再現するレベルの大規模建築を行う検証によるものらしい。タルさんはテイムしたモンスターが窮屈にならないレベルであれば良かったそうだが、思ったより派手な物になり、少し困ったらしい。まあ検証という事で負担した金額は半分以下だったのと、入園料が入る様になったお陰でホクホクの様だが。安全にモンスターを観れるという事でNPCも訪れるらしい……という、今までの説明は全て道中コトネさんから聞いた事だ。以前会った時に聞いたとか何とか。話を聞いていたおかげで体感としてはすぐに着いた。


「まんま動物園だな……」


「この見た目大丈夫なんでしょうか……?」


 着いた目的地、その入り口は完全に動物園の様な感じだった。というか何処ぞの有名な動物園の入り口にそっくりなんだけど……コトネさんの言う通り大丈夫なのだろうか。プレイヤーメイドだから、そこの判定も緩いのだろうか。まあ似ているだけだし……奥の方には無機質な世界観に合っていない建物も見える。それも何やら見覚えが……いやいや。


「じゃあ入ってみましょうか」


「入園券……ここもリアルだな」


 入り口で入園料を支払い、入園券をもらう。流石に券売機なんて物は無く、今時珍しい人が直接応対するものだった。もちろん相手はNPCだった……当たり前か。入園料は5000G。動物園の入園料ならぼったくりもいいところだが、生憎ここはゲーム、5000Gぐらいなら端金だ。NPCはもう少し安くなるみたいだけど、関係無いから省略。中に入ると人の数は多く、大体はプレイヤーっぽいから、料金を気にする人はいないか。入ってみるだけの価値はあるそうだし。中に入ってみると、思っていたよりも動物園そのもので、柵の中でモンスターが思い思いに動いている。明らかに肉食の凶暴そうなモンスターも檻では無く柵なのは、テイムモンスターだからだろうか。こちらとしては見やすくて有難いが、若干逃げないか不安になるな。


「けど大人しいですね」


「まあテイムモンスターなのは間違いないから……」


「パーティとして連れていく数に制限はあっても、テイム自体には制限が無いですからね」


「きちんと世話をしないと酷い事になるらしいから、数を増やすのは得ばかりじゃないけど……仕様を最大限活用するとこうなるんだな……」


 軽く見て回っても、見た事あるモンスターはフィールドボス以外は全ていたし、見た事の無い、恐らくレアモンスターなのだろうモンスターもいた。殆ど害の無い小動物系モンスターとの触れ合いコーナーもあった。本当に動物園だな。プレイヤーメイドでここまで作り上げたのは中々に凄い。

 触れ合いコーナーでは、主に女性プレイヤーが小動物を愛でており、空気が全然違う。中にはゴツい男プレイヤーが……いや趣味は自由か。何気無しに隣を見てみれば、目を輝かせてコーナーの方を見ているコトネさんが。


「……あそこ行きます?」


「あっ、いえ、その……はい」


「じゃあそうしますか」


 誘惑を打ち払うかの様に首を横に振るコトネさんだったが、全く打ち払えなかった様で行く事になった。誘ったのはコトネさんなので、好きな所を回るのが1番良い。

 コトネさんを見送り、俺は近くにあった売店の方へ……いや流石にあの場に混ざる度胸は無い。そうして売店を覗いてみると、触れ合いコーナーのモンスター用餌や、モンスターをデフォルメしたストラップなどがあった。餌はともかく、ストラップは……大丈夫なのか(2回目)?そもそもこれ何処で使うんだ……あ、アクセサリー扱いだこれ!しかも効果ついてる……あ、そこは微妙なのね、良かった良かった。ここでそれなりに特徴のある効果とかついてると凄いが、そこまでおかしい事は起きないか。大丈夫かどうかについては、運営が把握していない訳は無いし、問題があったら何とかしているか。

 コトネさんは30分程で戻ってきた。


「楽しめた?」


「あ、はい、お待たせしました……!」


「いやいや」


 気を取り直して、今度は規模の大きい無機質な建物の方へ。


「わあ……!」


「もしやとは思ったけど、本当に水族館か……!」


 何の施設かと思っていたら、何と水族館。どうやって作ったんだと思ったが、魔法を使いどうたらこうたらと入り口の辺りに長々と書いてあった。このゲーム、本当に自由度高いなー。ガラスは普通の物らしく、よく見れば縁の方に魔法による紋様みたいなものが光っている。これで水圧やらから保護しているという事が。ファンタジー装備で水族館を回るという何とも言えない感じの中、通路に従って展示されているモンスターを見ていく。


「こんにちはー」


「わっ!?」


「きゃっ……タルさん!?」


「お久しぶりですー」


 いきなり後ろに現れたのはここの園長と言うべきタルさん……何故ここに。水族館だから薄暗いせいで割り増しで驚いた。


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