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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第八章 天は高く、奔走せよ
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第六話 いつものやつ


「へえ、あんたがアスモデウスの契約者ね」


「コウだ、よろしく……」


 モモとの言い争いが終わった後、ベルフェゴールはやっとこちらへと目を向けた。いや正確には2回目のはずなのだが、覚えると言っていたのにもう忘れていたみたいだ。まあ今度はもう少し覚える気はあるみたいだが……期待しない方が良いか。


「まあ私が優先するのは、1にマスター、2に私、3に睡眠だから。良くてもその次だけど」



「ソウデスカ……」


 3の次なら結構良いんじゃないかと一瞬思ったが、睡眠の次だからな……本当に期待しないでおこう。そもそもショウの役に立てば、それで良いんだし。怠惰キャラなんてそういうものだろう。他のみんなも自己紹介をしていくが、果たしていつまで覚えているやら。顔ぐらいは、覚えてくれるとスムーズに済むけど。


「それで、ガブリエルはクローナね……へえ、天使ってそうなるのね」


「初めての事例なので、天使がどうなのかはわかりませんけどね」


 クローナに関しては、変化に余程驚いたのか、粗方事情を聞くぐらいには興味を示した様だった。

 これで一通りの顔合わせは終わった訳だが……もしかしたらそろそろ来るか、あ、来たわ。玄関の方で、来客を知らせるベルが鳴った。


「あ、見てきます」


「よろしく」


 コトネさんが1番に立ったので、来客を迎えに行ってもらう事になった。このタイミングの来客なら、そうそう予想外になる事もあるまい。そしてコトネさんが連れてきたのは予想通りシャーロットとメイドさん、それに可能性はあったのでそこまで予想外という程でも無いイプシロンさんだった。


「イプシロンさん……何故一緒に?」


「おい、妾は無視か」


「だっていつも来てるし……」


「ぬぅ、ありがたみが薄れておるか……」


「随分親しそうだね……?一緒に来たというか、ベルゼバブがまた察知してね、もしやと思って来たら、たまたま王女殿下と鉢合わせただけだよ」


「別々に入る理由も無いからの」


「そういう事ですか」


 何だ、丁度偶々同じタイミングだっただけか。それならまあ、するのはショウだけど、説明の手間も省けるか。

 メイドさんはいつの間にやらお茶の準備をし始めており、席を空けるなどして状況を整理する。


「……で、誰?」


「この国の第3王女、シャーロット・アルカディア・セフィロシアスじゃ。よろしくのう」


「へぇ……!生き残りがいたんだ……知ってたの?」


「いや知ったのは最近さね。まさかこっちもいるとは思ってなかったからねぇ」


「確かに、全員殺されたもんだと思ってたからね」


「末端も末端じゃったらしいがの」


「まあその方が生き残る確率高そうじゃない?」


 シャーロットの名前を聞いて、初めて分かりやすく興味を示した。やはりそこまで驚く事なのか。ちょくちょく発言が物騒だが、そこはまあ置いておこう。過去の話はフレーバーにしかならないし、よく聞かないと後々詰むとかそういう事は無いだろう。


「話疲れた……ねえ、マスター、膝枕して?」


「……う、うん……イイヨ」


「やったぁ!」


「甘やかし過ぎじゃありませんか?」


「ま、まあ減るもんじゃ無いし……」


 嬉しそうに、ショウの膝の上に頭を乗せ横になるベルフェゴール。絵面だけなら、馬鹿ップルだが、その実情はどうなんだろうな。シャーロットもイプシロンさんも若干引いている。


「……まあ今の所全員一癖あるからの」


「ベルゼバブよりは大分マシだろうから……」


 莫大な食費よりかは……マシか?物理的に消費するか、精神的に消費するかの違いだな。ベルフェゴールの方は、横になりはしたが、まだ話を聞く気はあるみたいだ。


「気を取り直して、一応ここに住むからには、王国の法になるべく順守してもらいたいのじゃが」


「別にそんな人間に目をつけられる様な事をするつもりは無いけど。それにマスターに迷惑がかかるじゃない」


「まあ、それなら良いんじゃがの」


 良かった、良い方に傾く方の懐き方だ。相手の為に全てを薙ぎ払うタイプだと困る所だったが、怠惰キャラなお陰もあるか?まあ仮定はどうであれ、責任はショウに任せられるから安心だな。ショウが頼まなきゃ何もしないだろうし。


「それで、そっちは?」


「ああ、僕はイプシロン。肩書きは多少あるけど……まあ名乗るならベルゼバブの契約者だよ」


「え、あれの?可哀想」


「うぐっ」


 ノータイム憐れみ。またか、またなのか。クローナに続き2回目、マモンは会ってないし、モモも多分思ってはいたのだろう。まあ実害というか、負担はダントツでかかってるしな。後残っているのは傲慢、嫉妬、憤怒か。色欲のモモがモモだし、今の所基本全員大人しいから余程癖が無い限りやっぱりベルゼバブがやばいのか。最近はモモもクローナと一緒にクエストに近い何かをこなしている様で、自分の生活費は普通に稼いでいる。それにこの前の宝もあるか。

 イプシロンさんは、不意打ちの憐れみにダメージを受けている。いつも冷静なだけにキャラが……まあベルフェゴールの印象には残っただろう。


「それにしても、良くここに色々と集まるの」


「そう言われてもな……というか、俺に言わないでくれ」


「お主が起点じゃろうに」


「む、うーん……」


 そう言われるとそうかもしれないが、全部偶然だし。特殊な体験はしたいし、しているけど、こうも連続すると色々と不安になる。贅沢な悩みだな。

 顔合わせは終わったので、イプシロンさんは帰っていったが、シャーロットは残った。


「……王女様は帰らないので?」


「悪魔の件で仕事として来ておるからの、堂々と長々と居れるのじゃ。今日はサボれるぞー!」


「それで良いのか……メイドさん?」


「さあ、私は……まあ後々、いえ何でも」


 ああ、サボった代償は来る様になってるのね。まあそりゃそうか、王族だもんな。それに関しては俺が知る所では無いので、放置しておこう。

 ベルフェゴールは話が終わったと分かると、すぐに寝始めた。結論としてはショウに任せておけば制御は楽そうだし、大丈夫かな。


「その状態だと、大変そうですね……」


「頑張るよ……はは」


 そういえば終始ショウは微妙な顔だったな。レアな光景だった……録画……いやそこまでするレベルじゃないか。


「とりあえず監督は頼むぞ。イプシロンが契約しておるベルゼバブは、飲食店で騒ぎを起こした事があるからの」


「あ、まさかあの事件……そうだったんだ」


「そうじゃぞ、あれは大変じゃった……」


「何それ聞きたい」


 何か面白そうな話題が出て来たぞ。ショウも心当たりがある様だ。イプシロンさんも失敗する事が、いやそりゃあるか。とにかく面白そうなので聞いておくか。

 住人も1人増え、大所帯になって来た。本当に屋敷で良かったな。


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