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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第一章 少年は舞台へ、歯車は揃いゆく
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第二十話 お詫び多くない?


「知らない天井だ」


 目を覚ますと目に映ったのは硬そうな石でできた天井。起きて左を見ると同じ様な材質の壁、右を見ると鉄格子。はい、牢屋ですね。これでもかというぐらい立派な牢屋です。

 普通のデスペナなら近くの教会にリスポンするが、PKなど犯罪を犯していた場合、NPCに捕まったり倒されたりすると、牢屋にリスポンするらしい。いや、オラなんもしてないっぺよー、いったいオラが何をしたっぺだかー!……キャラ崩壊してもつまらないので止めよう。えっと……ああこの中宿屋と同じ扱いなのね、外部のブラウザ見れるじゃん。Wiki、Wikiっと……載ってるかな、載ってたわ。あー、NPC自身の判定によっては冤罪でも牢屋にリスポンしたりするのね。そこをリアルにする必要はあったのか……というか編集者検証したっぽいぞ、どうやったんだ?わざとそういう状況作ったのか?よくやる気が起きるよな、一歩間違うととても面倒なことになるのに。まあ知識欲が強いのだろう、そういう人達のおかげでこうして恩恵にあずかれているわけだし。

 さて、どうしよう。見張り的な人はいないし牢屋だからかフレンドのの通信機能も使えない。もちろん武器も出せないしログアウトはできるが、したところでなあ……八方塞がり!寝る!……と思ったら足音が聞こえて来た。


「コウさん!大丈夫ですか!?」


 コトネさん!?何故ここに。どうやって入って……侵入?いや違うか。


「ちょ、お主走るの速い……元気そうじゃの、流石は探索者か。今開けるでな、ほら」


 コトネさんに続き、のじゃロリ王女……シャーロット王女と牢屋番らしき男がやってくる。シャーロットは男に指示して俺が入っている牢屋の鍵を開けさせる。


「いや助かった……えっとコトネさんはなんでここに?」


「あの時姉様と一緒に来ていたみたいでの、お主がまた現れるとしたらここの牢屋と聞いたのでな、急いでやって来たというわけじゃ。恩人をいつまでも牢屋に入れておくわけにはいかんからの」


 そうなのか、てか姉様?あれ王女なのか……なんで武装してるんだ?まあそういうキャラもたまにいるからそういうものか、次は話を聞いてくれるとありがたいが……いやほんと。相当レベルが高いのか見えはすれども体が全然動かなかったからなあ。出られた今ここにいる意味は無いので上の階へと階段を登る。コトネさんによるとあそこは王城の牢屋だった様だ。

 話があると応接室の様な所へ王女様直々に案内され、扉を開けると騎士の様な女性が土下座していた。うん、俺キルした王女様だよね?なんで土下座?いや、する理由は分かるけど王女様とかが気軽に土下座とかしちゃ駄目じゃね?


「姉上一体何をやっておるんじゃ、この者が困っておろうが……そういえば名前を聞いてなかったの?」


「ああ、コウだ、よろしく……えっと」


「ほら姉上、顔を上げんか、話が進まんぞ……立たせたままですまんのそっちに座ってくれ」


 コトネさんと共に示された方の椅子へと腰掛け、土下座王女様も顔を上げた。こうして見てみるとよく似てるな、確かに姉妹の様だ。シャーロットの方は第三王女と言っていたから間に1人いるのか。騎士とのじゃと来ると間は何なのだろうか?王女達も向かいに座り、話が始まる。


「まず私はセフィロシアス王国第一王女オリビア・セフィロシアスだ。見ての通りこの国を守る騎士として王国騎士団団長も任されている」


 だんちょう。そう言われれば一撃で斬り伏せられてしまったが、相当強いのが分かるので団長というのも納得だろう。第一王女でも騎士団長になれるのか……そういえばこの大陸はこの国1つみたいだから他国とのアレコレは無いから割と自由なのかな。


「その……この度はよく確認せず妹の恩人にあるまじき事をしてしまい誠に申し訳ない。言い訳がましいが妹はよく脱走するが連絡が途絶えたことは無く、今回連絡が途絶え方々を駆け回りとても思考に余裕が無く……」


 まあ、妹の消息が分からなくなり焦るのはよく理解できるのでしょうがないし、そもそもデスペナで多少ステータスが下がっているぐらいなのでほぼ実害無いし……そこののじゃロリ、テヘッという顔をするんじゃ無い、原因お前だろ。


「も、もし貴殿が探索者でなかったら恩人を殺すという王族の顔に泥を塗るところだった。謝って済む話では無く、私からも出来うる限りお詫びも用意している。そ、それでも気が済まないと言うので有れば……くっ、その手で私の首を切っても構わない……!」


 嫌だよ、そんなくっ殺。なぜそんな結論になるんだ。本当に結果的に大した実害無いからね?


「姉上そこまですると逆に嫌がらせだぞ?コウもドン引きしておるじゃないか……姉様は剣の才はピカイチだがその、おつむが弱くてな、よく直情的な行動をしてしまうんじゃ」


 妹におつむが弱いって言われてるぞ、この姉。それで良いのか……なんとなく感じていたがやっぱり脳筋だったのか。ん、誰か来た?


「失礼するぞ。ふむ、そちらが私の娘を助けてくれた探索者達か?」


 ……娘、と言うことは王様かあ。王様来ちゃったよ……VRだと画面越しじゃなくリアルにコミュニケーションする必要があるからなー、流石に色々VRゲームをやって来た俺でも王様と話したことは無いなー。流石王様まだ40代ぐらいなのに威厳というかオーラがすごい。というか王族みんなノリ軽くない?


「セフィロシアス王国国王アルバート・セフィロシアスだ。まずは娘のシャーロットを助けてもらったこと感謝の言葉もない」


「い、いえいえ助けたのは偶然のようなもので……」


「それでも結果として愛娘の命を助けてもらったことには変わりない。それにオリビアが粗相、粗相というレベルでは無いが迷惑をかけてしまったようだしな」


 騎士団長、めっちゃしゅんとしてる。漫画とかなら米粒ぐらいまで小さくなってそうなレベルだ。


「というわけで相応の報酬、お詫びを用意したのでぜひ受け取ってほしい」


 そう言うと金貨の山2つと丸められた紙が運ばれてくる。金貨多くない1000万G以上ある気がするんだけど。俺の懐まだ暖かいのよ?あと、その紙はなんでしょうか?なんか嫌な予感がするのだけど。


「まずシャーロットを助けてくれた礼として1人5000万G、オリビアの粗相の詫びとしてオリビアの名義になっている高級地にある空き家の権利書を譲るそうだ」


……ナンデスッテ?


「いやいや貰いすぎですって!助けたといっても悪党を少し倒しただけですし」


「そ、それに私はコウさんと一緒にいただけで何もしてませんよ?」


 いやコトネさんが女の子を保護してくれたから俺は逃げたチンピラを追いかけられたし、気絶した奴縛ったり衛兵呼んでくれたりと割と色々してるからね?王様も同じことを思っていたのか似たようなことを述べる。俺がこれを受け取るならコトネさんも受け取る権利があると思うぞ。というか金に関しては諦めるとして家って何ですか?


「それは私が説明しよう。元々はとある豪商のものだったが引っ越しや維持費の関係で売りに出ていたのだ。ちょうどその時たまたま魔物の討伐の関係で父……陛下から褒賞の一部として賜ったものだが……私はほぼ騎士団本部にいるので定期的な清掃はしても使う機会が無かったというか……」


 ああ、持て余してたのね。けど使ってないとはいえ、一応国王から貰ったものを特に何の身分の無い俺達に譲渡して良いのか?……なるほど、早とちりで俺をキルした失態を国王が下賜した家を没収→俺達に詫びとして譲渡するってことか。そこら辺の収支は分からんが多分受け取っておかないと騎士団長の方が面倒臭いことになるんだろうなあ。


「コトネさん、大人しく受け取っておこうか」


「えっ、私もですか!?それはコウさんが受け取るべきかと」


「ふむ、理解が早くて助かる……確かに直接娘を助けてくれたのはコウ殿だが、コトネ殿も立派に娘を助ける一助となったのは確かだ。そもそもあの家は1人では持て余すだろうし、探索者はクランという集団を作ったり、拠点も必要だろう?そもそも2人の連名で権利書を作ってしまったからな」


 あ、もう手続きは済んでるのね。逃げ道はそもそも無かった訳だ。特に逃げるつもりも無かったので、やったことに対して分不相応な気がするが貰えるものは貰っておこう。なんかこうサクサク進んでいくな。


「2人とも、一応私の私財を出したことになっているが、そもそもアレは使ってなかった物で詫びになったとは思っていない。貸し1つ、いや貸し10ぐらいの気持ちで何か有れば頼ってくれると助かる。私の出来うる限り貴殿らの力になると誓おう」


 そ、それはありがたいけど10は多いからね?……あまり頼るのはやめておこうかな、過剰な結果を返して来そうだ。報酬も受け取り、国王と騎士団長はチンピラが言っていた取引などまだ仕事があるので帰っていった。帰りは第三王女様直々に案内して貰ったが、公務とかないの?今度遊びに行くのじゃー、と言っていたが持て成し方とか知らんのだけど……拠点になるみたいだし、一応少し整えるかな。


「つ、疲れましたね……」


「確かにそうですね……今日はもう終わりにしましょうか」


「そうですね……例の家は明日にしますか?」


「じゃあそんな感じで……お疲れ様でした」


 誘拐されそうになってた少女を助けたら大金と家を手に入れました。どうしてこうなった。



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